「令和版“笑うセールスマン”」映画 ふしぎ駄菓子屋 銭天堂 泣き虫オヤジさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0令和版“笑うセールスマン”

2024年12月18日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

楽しい

知的

天海祐希が変なオバサン、いやお婆さん役。良く受けたなあと思いつつ、どんな作品なんだ? という興味もそそられて観賞。

【物語】
小学生の雄太はいつもテストの点数が悪く、母親から塾通いを命じられてしまう。いやいや塾に通い始めた雄太、塾帰りに黒猫を目にし、何となく後を付けて行くと、見たことの無い駄菓子屋「銭天堂」という店に辿り着く。中を覗くと、どれも見たことの無い菓子ばかりが並んでおり、興奮を隠せずにいるところに、店主の婆さん紅子(天海祐希)が不意に現れる。

紅子は「あんたの望みは何なんだい?」と雄太に尋ねる。 雄太が「テストで良い点を取りたい」と答えると、紅子は「これを食べれば叶えられる」とある菓子を指し出す。但し、注意書きを必ず良く読むようにと言う。半信半疑で買って帰った雄太だが、その菓子を食べて勉強をすると、テストに出る単語が浮き出て見えるのだった。

小学校の教師の等々力小太郎(大橋和也)は新たに赴任した学校で生徒たちから「不思議な駄菓子屋銭天堂」のうわさを聞く。店主が薦める駄菓子を買って食べると願いがかなうと言うのだ。最初は信じなかったが、銭天堂の駄菓子を買ったとおぼしき人々変化を目の当たりにする。

また、小太郎がひそかに思いを寄せる雑誌編集者・相田陽子(伊原六花)にも異変が現れる。どうやら銭天堂、さらには紅子を敵視するよどみ(上白石萌音)が営む駄菓子屋「たたりめ堂」にも行ったらしいことが分る。 小太郎は陽子や駄菓子屋のせいでおかしくなりそうな人を救おうとする。

【感想】
なかなか面白かった。
言って見れば、(年配の人なら知っている)“笑うセールスマン”の女版です。
紅子は喪黒福造ほどダークではないことと、喪黒が売る相手は大人だったのに対し、舞台が駄菓子屋だけに紅子の客は子供から大人まで幅が広いところが違う。

それでも主題は全く一緒と言っていい。望みが安易に叶えられると、大体の人間はろくなことにならない。 「人間調子良く行っているときほど奢らず、謙虚に自分を見つめ努力することを忘るべからず」という戒めってところか。本当に心の綺麗な人間は甘い誘いにも惑わされないということも描かれている。

天海祐希は謎の婆さんを醸しながらも、理想の上司にも挙げられる彼女だけに、人生の先輩的雰囲気も出した味のある婆さんだった。紅子の天敵とも言えるよどみ、最初「これ誰だ?」と思いながら観ていたが、上白石萌音だった。超邪悪な役どころに対して、悪女のイメージの全く無い彼女は“怖い女”になり切っていないのだが、本作はそこまでダークな作品ではないので、逆にいい塩梅の邪悪さになっていて良かったと思う。

同日公開の本作と“はたらく細胞”、観客動員では4倍以上の大差を付けられているが、俺はこちらの方が数倍面白かった。

泣き虫オヤジ