「設定の甘さをごまかしきれない」六人の嘘つきな大学生 Scottさんの映画レビュー(感想・評価)
設定の甘さをごまかしきれない
浜辺美波が演じる嶌衣織は洞察力に優れてる設定なんだよね。
それを解らせるエピソードが「右手に腕時計をはめてるから左利きだ!」なんだよね。ぐったり。その程度の洞察力がすごいって……。
でも作中で出てくる謎とその解き方は全部このレベルなの。
「最終面接は6人のグループディスカッションで。内容いかんでは全員採用です」って言われて皆で仲良く頑張ってたのに、一週間前に「状況の変化により採用枠一人になりました。グループディスカッションでは誰が内定に最もふさわしいかを議論してもらいます」になるの。
そんな企業やめときな。入社したってある日バッサリ首切られて終わるよ。と思うんだけど何故か学生たちは諦めない。
それで最終面接始まって、15分毎に誰がふさわしいか投票していこうってルールを作るのね。そして状況がどうなろうと、これを頑なに守るの。
参加者の過去の悪事がどんどん暴露されていったり、そんなことをした犯人は誰だと推理したりとかあって、状況的に「投票どころじゃねえ、こっち優先だ」ってなるんだけど、投票時間がきたら投票すんの。なんで?
『就活のときって、なんかちょっと、おかしくなったりすんじゃん』ってことなんだと思うけど、そこまでおかしくなるの?
まあそれで、みんなの悪事を暴露した犯人は誰だ? ってことで、赤楚くんが「俺が犯人だ」って自白すんの。まあ、物語の作り的に嘘だよね。赤楚くんは事態を悪化させないために自分が犯人になって幕を引いたと。
しかし8年後、赤楚くんは亡くなってしまい、妹が動いたことがキッカケで再調査が始まるのだ。
都合よく登場人物を殺すなよ。生きてたら、この話が成立しないのは分かるけど、話を成立させるためだけに、色々とやりすぎなんだよ、浅倉秋成。
そしてファイルを開けようとするとパスワードがかかっていて、ヒントは『犯人の好きなもの』なの。意味ないね。ここでパスワードをかける必然性がない。
手紙に書かれていた『犯人、嶌衣織さんへ』は『犯人と嶌衣織さんへ』という意味だ! ってやるんだけど、はじめから、そう書いとけよ。普通はそう書くだろ。
しかし真相は暴かれ、犯人は動機を語るのであった。
なんだよ、その動機。これ Why done it ? ものですとか言い始めたら怒るぞ。
テーマっぽい「人事はバカばかり」なんだけど、人事はバカだよっていうか、人が人を適切に選ぶってまず不可能だから、結果としてバカに見えることやっちゃうよ、これは誰が人事をやっても。もしテーマを描きたいんなら、そこ突っ込まないと。
なんかこう、作った設定を成立させるために無理を重ねた感じがすんだよね。
それでも、そこを感じさせないストーリー展開やキャラクターの魅力があれば良いんだけど、そういうのないの。
それでその設定も「時計を右手にはめてるから左利き!」ぐらいのレベルだからね。
なかなかこれで面白くするのは難しかったな。
浜辺美波は良く出たなと思ったけど《屍人荘の殺人》もやってたし、いいのか。