「私は一体何を見させられているのか。」六人の嘘つきな大学生 イナヅマゴローさんの映画レビュー(感想・評価)
私は一体何を見させられているのか。
原作未読なので、映画化によせて改変されているのか、原作に忠実なのかわかりませんが、私にとっては史上最低点をつけることになりました。
酷評前に、まずよかった点。
都内大学生の就職試験ということで自身の当時を思い出し、懐かしさと新卒で入ってくる若者の気持ちに思いを寄せられたことは、明日からの糧になりそうです。
また、浜辺美波のキャリアウーマン姿が新鮮でした。ワーキングウーマン的な気合の入ったメイクをする浜辺さんを初めて見た気がします。当然と言えば当然ですが、あ、映えるな、という印象で、いつもより大人びた浜辺さんが美しかったです。
さて、悪い点。
まず、学生同士が、誰が内定を得るべきか投票で決めるという設定が、は???です。
時代によって、学生側の売り手市場、買い手市場はあるかと思いますが。基本的に学生側が入りたい会社を選び、受験する、企業側が受験生の中から雇用するべき人物を判別するというのが就職活動じゃないんでしょうか?もちろん基本能力が優秀とか優秀じゃないという基準もあるでしょうが、それ以外にも企業風土にあっているとか一緒に働きたいと思う人柄等、企業の欲しい人材はそれぞれで、それは企業内部の人間でないと判断できません。それをなんで学生が決める??企業側になんの意図やメリットがある?わけがわかりません。
また、あのような就職試験を課すような企業に本気で入りたい学生がいるのでしょうか?給料がいい、オフィスがきれいとか言ってましたが、企業としてディベートがあのような方向性になった時になぜ止めない??あの中で語られたことが事実であれば、見ていた人事の社員が止めて、個別に事情を聞く展開になるのがまともな会社の振る舞いかと思います。
また、そもそもなぜ採用人数を学生に公表する必要がある??前日に「1人しか採用できなくなった」などと言われたら、経営状態が急に悪化したのかな?とおもう学生もいるはず。そもそも一人しか採用しないという時点でかなり将来性が怪しい(少人数の会社がダメというわけではなく、もし大きく発展する未来を描くのであれば、人材確保は欠かせないし、伸びざかりの会社は優秀な人材を多く欲しがる、必要としているもの)という意味です。会社の将来性に不安を感じる要素をわざわざ公表する会社に他人を蹴落としてまでいきたい理由は何??
そんな前提となる設定がメチャクチャなので、学生たちがあそこで真剣に言い争う意味がわからない。正直ずっと、これは何を見させられているのだろうか?と思いながら見ておりました。
百歩譲ってなんらかの犯人探しをする展開でも良いのですが、就職試験の中でする話ではないでしょう。お前らは何をしているんだと見ていた人事に帰らされるだけ。それも、受けている企業は、給料はいいかもしれないが、全く常識はずれの体質。
要するに、お話が成立してないとしか思えないのです。
劇中、何回か「あの当時は特殊な試験をやった時代」みたいなことを言ってはいましたが、いいんですよ別に、特殊でも。理にかなってさえいれば。でも、そうじゃない。就職試験って優秀な学生を判別するためのものでしょ?あの展開から学生の何を見抜きたいの???
他にも気になる点は多々ありました。が、細かいことよりもまず、そもそものお話の入り口がわけわからなかったのがとにかく私にはダメでした。
この物語の最大のミステリーは犯人が誰かではなく、なぜこの会社はこのような就職試験を学生に課したのか?ではないかと思います。そこに触れないのは厳しい。
最後に。私は人事部で働いた経験はありませんが、大手に勤めるたいていのサラリーマンはご存知かと。
ラストで「人事部が無能」みたいなことを叫んでいましたが、そもそも採用者を決定する権限は、人事部にはありません。