「ツッコミどころ満載のディスカッションスリラーだけど深く考えると楽しめません」六人の嘘つきな大学生 Dr.Hawkさんの映画レビュー(感想・評価)
ツッコミどころ満載のディスカッションスリラーだけど深く考えると楽しめません
2024.11.22 イオンシネマ久御山
2024年の日本映画(113分、G)
就活の最終面接を舞台に繰り広げられる精神ぶっ壊し系ディスカッションバトル
原作は浅倉秋成の同名小説
物語の舞台は、都内某所にある企業スプラリンクスの面接会場
人事部の鴻上(木村了)は、最終面接に残った6人に対して、「最後の面接はディスカッション方式で行い、内容によっては6人全員の合格もあり得る」と説明した
選考に参加するのは、リーダー的な資質を自認している九賀蒼太(佐野勇斗)、生真面目で嘘がつけない波多野祥吾(赤楚衛二)、公認会計士の資格を持つ森久保公彦(倉悠貴)、体育会系のノリの袴田高(西垣匠)、語学堪能な矢代つばさ(山下美月)、そして洞察力の高さを自認する嶌衣織(浜辺美波)の6人
彼らはディスカッションの内容を高めるために定期的に会うようになり、期間の1ヶ月を有意義に過ごした
そして、いざ本番直前に打ち上げと称して飲み会が始まり、酒の飲めない九賀は戸惑いながらも参加することになった
だが、その会が終わった頃、スプラインクスより1通のメールが届いた
それは「1人だけ採用」という内容の変更で、当日彼らは「投票制」によって「合格にふさわしい一人」を選ぶことになったのである
物語は、最初は辿々しく始まったものが、ある封筒の発見によって事態は急展開を迎える
衣織がその封筒に気付き、九賀がそれを手にすると、中には「全員の名前が書かれた封筒」が入っていた
空けるかどうかの議論になるものの、これは会社からのメッセージだと確信した九賀は自分用の封筒を開ける
だが、そこには別のメンバーの過去の悪事が写真付きで暴露されていたのである
映画は、その暴露を辿っていく中で「ふさわしい人物選定投票」が行われるのだが、後輩部員をいじめて自殺に追い込んだとか、恋人に中絶をさせたとか、キャバ嬢だったみたいなものまであった
犯罪から犯罪のようなもの、犯罪ですらないものまで混じる中で、彼らは犯人探しを始めていく
会社が設置したカメラを再生すると、最初に部屋に入ったのは森久保で、彼が封筒を置いたこともわかる
だが、森久保は前日に自宅に届き、会社から持ってくるように言われたと弁明する
それでも森久保犯人説は有力なまま、今度は「写真が撮られたのは同じ日」と言うことがわかる
そこで6人は自分のスケジュールを確認すると、その日に予定がなかったのは波多野だけだったことが判明する
スケジュールが空いているだけで犯人扱いされるのも理不尽な話で、波多野は抵抗するものの、とある真実が発覚し、それを認めざるを得なくなってしまうのである
と、ツッコミどころ満載になっている作品で、おそらく原作だとフォローしているんだろうなあと言う設定の粗を許容できるかどうかに掛かっている内容だった
誰もが思う「このディスカッションを会社が止めないのはなぜか」と言うものがあって、その様子を眺めているのに全く反応を示さない
それゆえに会社が仕組んだものかと言うふうに6人は思い込むのだが、実際にはある人物が仕掛けたものであり、会社としてはサプライズなものだったと思う
なので、高みの見物で「面白いことしやがる」と眺めている感じになっているので、「ここまでしてこの会社に入りたいのか?」と言う疑念が残ってしまう
渦中ではそう言った冷静な判断が見られないのはわからないでもないが、頭が悪い人たちが6人集まったと言うものではないので、単にパニクって気付きませんでしただったら全員不採用で良いと思う
むしろ、会社はなぜ止めないのかと言うシークエンスを話す15分があって、そこで議論をするとか、時間になるまで外側からドアは開けられないとか、何が起こっても90分が終わるまで会社は関与しないと言う注意書き(説明)があってから始まってもよかったように思えた
また、あの企業に入らないとダメと言う背景がある人物はおらず、むしろその逆の動機がある人物が一人と言う設定なので、それでも喰らいつくだけの理由があっても良かったように思えた
原作未読なので改編度合いは知らないのだが、私はてっきり「衣織は実は社員」と思っていて、さらに犯人ではないかと考えていた
その方が辻褄が合うことが多く、誘導していく流れとか、封筒を見つけるのを洞察力にするとかが自然に思える
また、「嘘」と言う字の中に「七」と言う漢字があって、わざわざ「六」にしているプロモーションなども見てきたので、てっきり「7人目の嘘つきな大学生」が登場するのだと思っていた
自分の妄想では波多野の妹・芳恵(中田青渚)が7人目の嘘つきな大学生で、そして、その「嘘」は「兄が封筒を処分したこと」だと思っていた
そこに描かれている暴露は「面接官の社員と応募学生の密会写真」みたいな見出しで、衣織が社員で面接担当官だったことが暴露される、と言うもの
その真実を知った波多野は絶望して自殺し、そして彼の死後に妹がそれを見つけて接触する
その中で、7人目の嘘つきな大学生が生き残った彼らに真実を暴露するのだと考えていた
随分と遠回りな妄想を鑑賞しながらしてしまったのだが、それくらい腑に落ちないところが多くて、どうやってまとめるのかなとか余計なことを考えてしまった
のめり込める人はのめり込めると思うのだが、就職活動をしたことがある人ならあり得ないと感じると思うので、就活がどんなものか知らない世代向けなのかなと思った
しれっと二人ほど起業しているところを見ると、才能あるなら社畜になるなと言うメッセージが込められているのかもしれません
いずれにせよ、勢いで見せる系の映画なのだが、あまり深く考えて見てはいけない映画なのだと思う
設定が面白く感じられて、浜辺美波の美しさをスクリーンで堪能できればOKと言う層向けの映画なので、ダメな人にはダメな映画なのかもしれません
大学ヒエラルキーが忠実なのかはわかりませんが、そのあたりは東京の大学に行った人もしくは現役生なら、こんな奴いそうとかで盛り上がれるのかもしれません