劇場公開日 2024年9月13日

「②」スオミの話をしよう イナヅマゴローさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5

2024年9月16日
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鑑賞方法:映画館

三谷幸喜氏の「最高傑作」という触れ込みを目にした。何を「傑作」とするのかという問題はあるが、「有無を言わさず面白かった」「ハマった、何度も見たくなる」というのが傑作だと定義するなら、最高傑作ということはないだろうと思う。しかし、氏の「集大成」といいわれればまさにその通り。今まで以上に三谷幸喜氏らしいと思ってしまう作品であった。

三谷幸喜氏といえば、

そもそも舞台の人
そもそもチャールズ・チャンプリンやアガサ・クリスティが好きと公言する「クラシック」な人。
そもそも面白いというよりは可笑しいというべき笑いに精通している人。

なのだと考えているため、それが全部出ている作品である。

本作を「古い」「今風じゃない」というレビューを見かけたがまさにその通り。が、そもそも三谷氏は「クラシック」なのである。ナントカ交響楽団のコンサートに、YOASOBIとかAdoとまでは言わないが、ゆず、aikoあたりのライブをみにいくつもりで行ってしまえば、そりゃ、どうにもこうにもやるせなくなるのは当然である。人は歳を重ねると原点に戻る傾向があるようだから、本作は今までよりもよりクラシックな作品にみえたため、尚更である。

ドラマなんかだと三谷氏の脚本を実際に撮る演出家が「今の感覚で解釈して表現する」ので、そういったクラシックな面が薄まっているだけではないだろうか。本来の三谷氏らしい作風とはこの「スオミ」なのではないか。

笑いについてもおそらく基本的に「照れ屋」さんなのでしょう。まっすぐな笑いを好まないようなので、本人の発言もふくめ、「何を言い出すかわからない。こうくるかなという定番をあえて外してちょっとズラしてくる」ので、ズレが大きいとスベるし、小さいと物足りないしで、ハズしてしまうことも往々にしているように見受けられる。

番宣で出演していたバラエティで、「本作は撮影前にたくさん稽古した」というお話だったので、稽古を重ねたことで、舞台色がより強くなっているのではなかろうか。

個人的に残念だったのは、「どうしてスオミはいなくなってしまったのか?というミステリー部分にハマれなかった」し、「スオミって一体何者なんだ?という興味もさほども持てなかった」こと。そのため、話の展開にワクワク感を持てなかったです。一方、宮澤エマがちょろちょろ出てくる構成は好きです。

本作は、

①面白かった。好き。
②面白くはなかったが三谷さんらしくてとりあえず納得はした。
③つまらん。金と時間返してほしい。

という3つの感想にパキッと分かれると思うが、私は②です。面白くはなかったが、三谷映画(というか舞台)を見たなという感じはします。

余談ですが、ちなみに私、ケネス・ブラナーがポワロを演じたアガサ・クリスティのシリーズ、「オリエント急行」「ナイル殺人事件」まで見て、もういいかなと思って3作目は脱落しました。本作はそんな感じに近いです。

追記
ぽかぽかで「エンケンさん演じる『とと山』はもともと高倉健のイメージだったが、やってみたら違った」という話をしていたが、あのキャラを高倉健でやるの、みてみたかったなと思ってしまった。

イナヅマゴロー