侍タイムスリッパーのレビュー・感想・評価
全909件中、341~360件目を表示
時代劇だけでなく時代への想いをつなぐドラマ
なんか映画観て、久しぶりにとても気分がよかったです。映画館での観客の拍手を聞いたのも含めて。幕末の会津藩士の侍が京都の太秦撮影所にタイムスリップするお話しです。とにかく、観客が観たいと思うものをしっかりと盛り込んだ脚本が素晴らしいです。侍が現代とのギャップに戸惑いながら、周囲の協力で立派な斬られ役になるコミカルな展開は、ある程度予定調和的ながらも人情劇のツボをおさえた心地よい展開です。撮影所の事情や殺陣師など、時代劇製作の裏方を描きながら、時代劇への想いから時代への想いをつなぐ展開が非常に上手くスッと心に入ってきます。最後の真剣を使った殺陣のシーンも、普通の時代劇よりもドキドキしました。伝説の斬られ役福本清三さんを偲ぶエンドロールのメッセージも好感が持てます。これだけ観客の心をつかむ作品が自主上映だったと言うのもビックリです。監督の時代劇への熱い想いだけでなく、観客に喜んでもらいたいと言う気持ちが強く伝わってきました。役者では、TVの時代劇が多い山口馬木也は、殺陣もうまく、映画を地で行くような当たり役でした。沙倉ゆうのは、気持ちがまっすぐな助監督役を好演、とてもチャーミングな女優さんだけど、実際に本作でも助監督をされていて素晴らしい。
映画が丸ごとマジックのよう
なるほど。なるほど、と思う。傑作ではないけれど、忘れていた何かを思い出す。そして『カメラを止めるな』を時折思い出したりして、この自主映画にあって、商業映画にないものを考える。同じ脚本で、別の監督、別の俳優でやったのではこの良さは出ない。そのくらい隙のない傑作とかではないが、その隙の部分にある思い入れと熱量に良さがある、というか、応援せざる得ない気持ちになる。
それから監督が娯楽映画好きなのだろうと思うが、『蒲田行進曲』『男はつらいよ』的なシーンがあるが、『カメラを止めるな』も同じく、なぜもこう大袈裟な、というかくどい芝居のオンパレードなのかとも思うが結構それが観客に受けているのもよくわかる。そしてそれら娯楽映画の伝統芸のようなものが商業映画になくて、自主映画の監督によって再現されているのもいろいろ考えたくなった。とにかく、映画が映画会社の企画だけでなく、作り手のアイデアのものが上映されてよかったと思う。
作品としては、タイトルそのままだけど、武士がタイムスリップして味わうギャップギャグのところはかなり粗い。ツッコミどころも多い。そして武士が撮影所敷地内にしかいないのはもったいないとも思う。ただこれのいいところは中盤からの、タイムスリップしていたもうひとりがいて、それが時代劇で有名な俳優になっていたという設定だろう。そこからもその設定には無理が、、と思うところも多々出てくるが、もうふたりの俳優が熱く、たぶん監督役なども大袈裟に熱いのであまり気にもならないというか、もう応援モードに入って特殊な満足感が襲う。そんな不思議なマジックを見ているような気になる。
気持ちのいい映画
出ている俳優はほとんど僕の知らない人ばかり。知っているのは紅萬子さんぐらい。悪人がひとりも出てこないので観た後の気持ちがいい。同時に雷に打たれた二人が時間をずらして同じ場所にタイムスリップをする、というのは新しい。おにぎりを食べるシーンは泣きそうになった。そして最後の真剣(という設定)での斬り合いのシーンは特に良かった。本当に真剣での斬り合いのような緊張感がある。終わり方も意外で面白い。
これを機会に「ちょんまげぷりん」も!
主演の山口馬木也さんは、個人的な本年度主演男優賞の筆頭に躍り出たっ!!
観ながらいちいち感じていたのは映画にまつわる「音」って難しいんだなぁということ(笑)
拙い部分があるのは何とも可愛らしく感じつつも、ここぞというところの笑わせどころは外してなかった。「落ちた、すべった」のくだりは恥ずかしくなるくらいベタだったけども(笑)
何より「時代劇」の終わりと「侍の時代」の終わりがこんなにも重なって意味をなしてくるのかと感心した。
チャンバラ・殺陣は見応え十分、「ここを見せたいんだ!」という気概がビシビシ伝わってきた。
あと、丸い顔をお侍がやってくる終わり方がGood(笑)
これを機会に中村義洋監督『ちょんまげぷりん』ももっと評価されても良いと思う!
ハートフル時代劇として推したい!
戦国自衛隊みたいなものも含めると、時代劇というカテゴリーは意外と懐の深いジャンルですよね? 広義では「首」「もしも徳川家康が総理大臣になったら」「清須会議」「大河への道」「さや侍」「七人の侍」・・・史実に基づいたもの、パロディー、タイムスリップ設定、現代人が掘り下げる戦国時代、と手法を変えても日本人のDNAに時代劇を好む素地は根付いています。
今回のこの映画、導入部から本筋に入るまでのアバンが非常に短くてシンプル、それでいて観客を迷子にさせることなくこれから始まる物語に期待を持たせながら想像力を掻き立てる脚本が非常に良くできていると思います。高坂新左衛門(山口馬木也)も、本当に普段から侍の生活をしているのではないかと思わせるほど徹底して「台本の中の人」を演じていて、徐々に現代の生活に染まってくる。
と、ここで同じく落雷で違う時代にタイムスリップした風見恭一郎(冨家ノリマサ)と再会して共演を勧められるけど、追加台本の中の会津藩の悲惨な窮状を知ると落雷前の真剣勝負の場面に戻って同胞の仇を打つかどうかで苦悩するところが本当に侍らしくて、本作唯一の泣けるシーンでしたね。
日本のコメディで笑える嬉しさ
とにかく可愛い作品。
カルチャーギャップコメディとして、ズレを笑いにする分量、バランスがすごく好感が持てる。真剣になればなるほど笑いが起きるまさに映画的な笑いの取り方。殺陣の練習シーンとか最高。1幕目キャラクターととれる笑いで観客の心をつかみきって時系列飛ばすことで、いちいちやってたらキリない文化の差に順応させる構成も上手い。
そしてなにより、主演の魅力。所作、台詞からくる彼の謙虚さに強制的に感情移入させられた。
テーマや、メッセージも、時代劇の意義、あり方から、暴力のエンタメ化の是非と思ってたより深くささった。
日常パートの新喜劇感や、効果音のダサさも普通なら減点ポイントだがなぜか憎めないのがすごい。
三谷幸喜や堤幸彦や君塚良一にぜひ観て勉強してもらいたい一作。アニメやアイドル映画で邦画のクオリティが瀕死寸前な近年だが、この映画がある限り最悪な未来がくる日は『今日ではない』
噂に違わぬ傑作!
ようやく観れた。
笑い中心かと思ったが、新左衛門の会津藩士への吐露あたりからジワってきて、ラストは釘付け、引き込まれ、息を呑み、手に汗を握り、、そして涙…噂に違わぬ傑作!
話がよく出来ている…つまり脚本が素晴らしい。
そして、主演の山口馬木也氏、圧巻の演技!
ほとんど知らなかったのだが、適役、本物の侍に見えた。
140年後の日本に来た侍、生活に馴染むのが早すぎと少し思ったが、でもそんなもんかもしれない。
ただ、会津訛り侍言葉はなかなか取れない、、そんなもんさ、リアルである。
音楽も良かった、ただ少しボリュームが大きすぎたかな。
ラストのラストで笑い!これも良かった。
カナダのみならず、米国、欧州でも受けると確信。
カメ止めに続いた!!アイデア勝負のインディ作品
おすすめ
チャンバラ万歳!
監督の情熱が太秦を動かした!
カメ止め的位置付けという文字を見かけて、それならばと一切の事前情報を入れずに鑑賞してきた。
低予算のインディーズ作品と考えれば異例の秀逸な作品。
まず脚本が素晴らしい。時代劇を愛する強い想いに、幕末を生きた勤王と佐幕の志士2人の魂を打つような深い想いを重ね合わせたところが見事である。
幕末も時代劇も現代の若者にとっては歴史教科書の1頁以上の意味をもたないかもしれない。
しかし、時代劇という形で「幕末の志」を後世に残す事に高坂と山形、2人の侍は命を賭ける価値を見いだす。
それはまさしく「時代劇の魂」を残したい!という想いと重なり、長年太秦を支えてきた人々の心を捉えたのだ。
監督は当初、敬愛する伝説の斬られ役福本清三氏(ラストサムライではトムクルーズとも共演。だから決め台詞がNot todayなんだろうと思います。)に主演をお願い出来ないか?と考え脚本を送っていた。福本さんは実はすでに肺癌闘病中だったが脚本が面白い!と考え、時代劇関係者、太秦関係者各方面に話をしてくれた。「なんとかならへんかな?安田(監督)さんに使わせたってええんちゃう?」と。
主演、山口馬木也もそんな縁で脚本に触れた1人。福本氏亡きあと安田監督は膨大な人数のオーディションを行っていたそうだが、そんな事はまったく知らない山口は「この役を是非演らせて欲しい」と監督に声をかける。そして見事に主演を射止めてしまったわけだ。
監督の方もまさか山口ほどの実力者が自ら立候補してくれるなど考えもしていなかったであろう。
冨家ノリマサ、ランタン(峰蘭太郎)、福田善晴、紅萬子、井上肇という実力派超ベテラン勢が脇を固めてくれる。(知らない役者さんばかり、と思われた方、もし平成時代にTVドラマをよくご覧になっていたなら絶対見かけてます。特に時代劇では。ハンバーグステーキ食べる時に付け合わせのブロッコリーを意識していなかっただけ)
殺陣は東映剣会(つるぎかい)トップクラスの清家一斗。「父(清家三彦氏)をこの作品で超える!」という情熱で参加。
カツラ、メイク、衣装、照明も時代劇を知り尽くした最高のスタッフが力を貸してくれた。
いくら撮影所の使用許可が降りても、彼らの愛情溢れる全面的なバックアップがなかったら、監督1人でこのクオリティを生み出す事は不可能だっただろう。(着物の選び方ひとつだってそう)
作風の印象は、テルマエロマエからコミカル・コメディの部分を大きく削り、じんわり涙ぐむような温かさのシーンを比較的多めに盛り込んだ感じ。(コミカルなシーンも多いんだけど、笑わせる事自体が主眼ではない)
会津藩の悲劇を知った高坂の慟哭には胸を抉られる。
設定が細かいなー、と思ったのはスマホが登場しない事。ガラケー主流だった1990年代後半くらいの設定なんですね。地上波でまだ新作時代劇放送やってるわけですから。
という事は、里見浩太朗、、、じゃなかった風見恭一郎が斬られ役の下積みからスタートした時期は1960年代ってわけですよ!ほら、時代の感覚ぴったりでしょ?納得したでしょ(笑)
田村ツトムくんの心配無用ノ介は、萬屋錦之介でも高橋英樹でも松平健でもなくて、蒲田行進曲の「銀ちゃ〜ん」かと思いましたwww
あと驚いたのが、本作でも本当に助監督との二足の草鞋を履いた沙倉ゆうのちゃんが45歳という事ですね。見えないわー。銀幕の中では30歳でもイケると思ったわー。お見事。
本作を観て改めて感じたのは、実力があっても主役の話が回ってくるのは幸運な一握りだけなのだな、という事。
そして
若い頃から主役を張る一部の役者さん達は、演技のアーティスト(表現者)なのかもしれない。
それに対して、脇を固める実力派は演技の「職人」なのかもしれない。
(冨家さんなんて、ほんと里見さんぽく見えました)
そんな「職人」さん達が熱い想いを込めた本作。
コツコツ真面目にやっていれば、見る人は見ていてくれる。
関係者全員に共通するそんな想いが、現実となったのでしょう。
応援したくなる一作でした。
良い作品を世に生み出してくれてありがとう!
これぞ映画。観るべし!
文句なしに楽しめる映画。映画の良し悪しは制作費と関係ない、ということがよく分かります。お子様も楽しめますが時代背景を理解できたほうがいいので小学5〜6年生以上かな。
ストーリーにはカタルシスがあり主人公・敵役の悲哀もよく描かれているところに、抜群のタイミングでオヤジギャグ演出が入り観客をクスっとさせてくれます。この作品の笑いは言語や文化を超えた映画のプロトコルに則っているため海外で上映されても同様に笑い転げてもらえると思います。北野作品が思い浮かびました。なお、お話は「タイトルである程度想像つくよなw」と舐めて掛かって観ていると「うわーそう来たか」という嬉しい展開に私は「すいません!舐めてました」と心のなかでごめんなさいでした。エンディングも爆笑。本当によく出来た脚本・演出だと思います。
やっと本日観ることが出来ました。口コミで評判が伝わり上映館が尻上がりに増えているようですのでますます多くの方々に観てもらいたいですね。
なお、劇中で助監督を演じるヒロイン沙倉ゆうのさんは本作品の助監督でもあります。劇中劇というか劇外劇というかw。エンドロールで気づいて後で確認しました。他にもいろいろ仕掛けがあって何度でも見返して楽しめそうです。
疲れも吹っ飛ぶ‼︎アツい作品‼︎
まず、全国拡大上映ありがとうございます‼︎
おかげで観に行くことができました‼︎
今週の先週の土日祝日はいろいろ忙しくて映画は家でも映画館でも観れず、疲れも溜まってましたが、この作品は笑いと感動と熱量でそんなことは吹っ飛ばしてくれる‼︎
ラスト30分が話題になっていますが、前半のコメディ部分もめちゃくちゃ面白くて笑えて最高‼︎
特に初めて時代劇を観るシーンと、師匠との稽古中斬られ役なのに、斬っちゃうシーン‼︎
映画館のみんなも笑っていました‼︎
ラストもあの侍が出てきてからさらに面白くなった‼︎
ラストバトルはずっと観入ってしまう‼︎
今までの2人の話があってのあの戦いは胸がアツくなります‼︎
制作側の熱量もすごく伝わってくる‼︎
良い作品を観ましたー‼︎
あと時代劇ってこんな風に作られているのかと初めて知りました‼︎
侍と時代劇
時代劇への深い愛と、過ぎ去った時代への愛も
◉時代の思いの強さ
どんな時代でもそこに無数の人生はある訳だが、ペリー来航から安政の大獄、禁門の変、戊辰戦争まで、幕末から明治維新の30年ぐらいは、特に特に、多くの人の喜怒哀楽が、目まぐるしく時代の狭間に押し込められ、消えてしまった時代だったと思っています。
故に時空を飛ばされても、彼らは溢れる心根によって、何処に辿り着いてしまう。そして強い信念があるから、その場所で必死に生きてしまう。その展開にいつの間にか引き込まれた感じでした。
◉出来るはず
高坂新左衛門(山口馬木也)が、ぶっつけ本番で時代劇を演じる。しかし武士であるから、回りとの落差に振り回されるハラハラではなく、出来て当たり前がどこまでバレないで通じるかのハラハラ。それを愉しんでいるうちに、すっかり新左衛門へのエールが生まれていた。上手いし、ズルいし、気持ち良い。
◉助監督のビンタ、心地良し
背筋の伸びた殺陣師の立ち姿も、心配無用介の不適な笑い顔もスタイリッシュ。今夜は呑みに行くぜ! の掛け声が出てくると、もうレトロな安心感が一杯で。
生硬な主人公を心配する優子助監督(沙倉ゆうのゆうの)が、気丈であるのに柔らかさを感じさせてくれて、素晴らしかった。真剣勝負の撮影はどちらも死なずに終わり、助監督が高坂新左衛門をビンタした! これは何となく予測出来たのです。あるいは控え目な彼女が、激情を抑えられなくなる瞬間を見るのが、私の願望だったのかも知れないです。
◉タイムスリップは尽きない
敵役の山形彦九郎(庄野﨑謙)と現代で出会ってしまうのは、幕末の時代熱の成せる業だったのでしょうけれど、こうした無理のない筋書きの捻りは本当に「劇」への没入感を高めてくれたと思います。
山形を演じる風見恭一郎(冨家ノリマサ)は、俺は多くは語りたくない…みたいな我慢ぶりが似合っていて、だから新左衛門が、それでも口にしてしまう喋りが引き立っていた。
ところで、「俺はこんな所で何をやっているんだ」と言う独白は、元々、タイムスリッパーたちが吐いたものだったのだ…と、改めて思わざるを得ない。
全909件中、341~360件目を表示