「オラたちとナナの特別な夏の終わりは…」映画クレヨンしんちゃん オラたちの恐竜日記 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
オラたちとナナの特別な夏の終わりは…
映画クレヨンしんちゃん31作目。
今回の題材は、ドラえもん映画ではお馴染み、クレヨンしんちゃん映画では初となる“恐竜”。
いよいよクレヨンしんちゃん映画でも恐竜を。製作が決まってからちょっと楽しみにしていた。
でも、日常系の『クレヨンしんちゃん』の世界で、どうやって恐竜を…?
恐竜を現代に蘇らせたテーマパーク“ディノズアイランド”が東京にオープン。主催者は稀代のエンターテイナー、バブル・オドロキー。
チケット入手も困難。しんのすけたちかすかべ防衛隊は、あいの計らいで行ける事に。
『ジュラシック・パーク』みたいに、恐竜を現代に復活。オドロキーはジョン・ハモンド…? って言うか、彼は何者…?
TVは日常系だが、映画はSFやファンタジーや何でもあり。
恐竜に大興奮のしんのすけたち。それぞれ推しの恐竜も。ディノズアイランドを満喫。
子供向けアニメで恐竜と言うと、恐竜との交流は必須。
しんのすけたちとディノズアイランドの恐竜たちではなく、それは小さな出会いだった…。
河原を散歩中のシロ。
そこで不思議な生き物と出会う。
すっかり仲良くなり、何度も会って遊び、エサも分け与える。
それに気付いたしんのすけたち。こっそり後を追い、不思議な生き物にびっくり!
…きょ、恐竜!?
そうだよ、絶対恐竜だよ! 恐竜の赤ちゃんだ!
何とシロが出会ったのは、恐竜の赤ちゃんだった…!
久々にシロが物語の軸に。
赤ちゃん恐竜との交流は『ドラえもん のび太の恐竜』を彷彿。
愛くるしい赤ちゃん恐竜。
“ナ~”と鳴く。バナナが好き。忠犬ハチ公のように賢い。
名前は“ナナ”に。
野原家で面倒見る事に。ひろしとみさえはイグアナと思ってる…?
ナナと過ごす夏休み。それらを日記に。
オラたちとナナの特別な夏。
恐竜、子供たち、夏、出会い…。鉄板のノスタルジー。
それにしても…。何故恐竜の赤ちゃんが…? そもそも何処から来た…?
しんのすけたちの前に現れた青年。ビリー。
ディノズアイランドで恐竜を研究しており、ナナの飼い主。
…いや、ナナの生みの親。研究中、偶然にもナナを生み出した。
大昔の恐竜の遺伝子から生まれ、ナナは正真正銘、現代に蘇った恐竜。スピノサウルスの赤ちゃん。
そんなナナは狙われているという。
ナナを手に入れようとしているのはオドロキー。
ビリーはオドロキーの息子だった…。
恐竜を現代に蘇らせる。そう宣言したオドロキーだったが、到底不可能。
ビリーの研究も幾度も失敗。
息子に落胆したオドロキーはロボットで恐竜を作る事に。
ディノズアイランドの秘密。恐竜はロボットだった…!
まあ、察しは付いてたけど。しんのすけがディノズアイランドで動かない恐竜を見つけた時に。
世界中の“バカども”の期待に応える為、嘘を付いてたオドロキー。そんな父と確執。
そして偶然ビリーが本物の恐竜を蘇らせ、名声を守る為にナナを手に入れようとしているのであった…。
ディノズアイランドでガイドをしていたアンジェラが追う。彼女もオドロキーの娘で、ビリーの姉。
ビリーは世界中を騙す父に反発するが、アンジェラは私たちがパパを支えてあげないと。が、ナナの捕獲に失敗したアンジェラをオドロキーは役立たずと。
そんな問題あり家族に、ひろしとみさえはいつもながら家族の在り方を問う。
シロとナナが居なくなる。二匹でディノズアイランドに向かったか…?
野原一家もビリーやアンジェラと共に追う。
ディノズアイランドのスタッフの不手際で恐竜が暴走。ロボットである事がバレ、手のひら返しのバカどもをぎゃふんと言わせようとオドロキーも暴走。東京中で恐竜大パニック!
野原家に引き取られたナナを見て、シロがやって来た時の事を思い出す。シロも捨て犬だった。
シロがナナに親切なのはそれ故。しんちゃん家族は優しい人たちだよ、と。
赤ちゃんとは言え、ナナは恐竜。しかも肉食恐竜。時々、凶暴に…。ある時、しんのすけが軽い怪我を。が、しんのすけは転んだと庇う。嘘だと分かりつつも信じるひろし。こういう所が野原家。
そんな野原家と出会って、またビリーとも行動する内、考えが変わるアンジェラ。私は私の人生を生きる。なりたかったのは、バスガイド!
『クレヨンしんちゃん』らしいハートフルさ、家族の絆、ユーモラスながらもメッセージはいつも通りそつなく。
でも、もっとノスタルジーや冒険や感動があると思ったが…、終盤になるにつれ『クレヨンしんちゃん』らしいドタバタ展開。
ディノズアイランドからの攻撃。あの“ダジャレ恐竜”は…。
そもそもロボット恐竜なのが、ちょっとアレレ…。さすがに『クレヨンしんちゃん』の世界で現代に蘇った本物の恐竜は難しいか…。
ただ一匹を除いては。しかし、そのラストが賛否両論。
ロボット・スピノの声に反応し、ナナが我を忘れて凶暴に。本来のスピノサウルスに。
しんのすけやシロの必死の呼び掛けで我を取り戻すが…。
その時、ビルが倒壊。しんのすけとシロを守ろうとして、ナナが…。
『クレヨンしんちゃん』で“死”が明確に描かれたのは『~アッパレ!戦国大合戦』以来。当時、監督・原恵一が描きたかった又兵衛の死をスポンサー側は猛反対したらしいが、原作者の臼井儀人が承諾。作品的にも必要性あったが、今回は…。
マスコット的なキュートなキャラ。しんのすけたちと別れ、生みの親のビリーと世界の何処かで穏やかに暮らすものと思っていた。
日常系の『クレヨンしんちゃん』の世界で恐竜は成り立たない。
恐竜は現代に生きる場所はない。
そんな二つの意味合いを何だか感じ、勿論基本は『クレヨンしんちゃん』らしい楽しさや笑いや感動もあって、ベストではないが安定。
しかし、これまでで最も悲しいクレヨンしんちゃん映画でもあった。