「思い出をかけぬけて」映画クレヨンしんちゃん オラたちの恐竜日記 ブレミンさんの映画レビュー(感想・評価)
思い出をかけぬけて
普段のしんちゃん映画とはまた違うテイストだなーと思っており、今更恐竜を擦るのか?という不安はありましたが、そこを跳ね返してくれる期待を込めての鑑賞。
楽しめないわけではないんですが、しんちゃん映画でやって欲しくなかった事を立て続けにやってしまっていてここ近年のしんちゃん映画の中でも一番下かなと思ってしまうくらいにはよろしくない作品でした。
恐竜の赤ん坊を連れ出したらおっことして、それにシロが出会うといったところから物語が始まりというお決まりのフォーマットからのスタートなんですが、そこからの色んなシーンの描き方がアンバランスだなと思うところが多かったです。
ディノズアイランドを描いたかと思いきや、しんちゃんの日常を描いて、かと思いきやシロとナナを描いたりと、一つのシーンに集中させてくれない散漫した作りになっていたところからヤバいなと思っていましたが、そのヤバさはここからずーっと続いていくのが今作の末恐ろしいところです。
しんちゃんではあまり感じることのないギャグが滑るというのを悲しいか、今作ではとても感じてしまいました。
終盤のダジャレ3連発は相当に酷いもので、特にモー娘。のLOVEマシーンは流石に今の小学生・幼稚園くらいの子供たちは分かんないと思いますし、実際ここだけみんなだんまりになっちゃってましたし、大人たちも突然ぶちこまれて困惑してしまっていたりと、制作側のエゴのみで入れられたようなシーンは相当に不快でした。
訳あって2回観たんですが、例年に比べて子供たちの笑い声が少なかったのも印象的で、ターゲット層である子供にウケないギャグは致命的すぎるだろ…とはなりました。
ナナがうまくいかないと怒りが溜まるという描写も唐突でしたし、しんちゃんを傷つける描写を1度ならまだしも2度3度と繰り返しやる必要性は全く感じられませんでした。
人と生き物の関わりを描くにしてはどうにも浅い気がしましたし、のび太とピー助というとんでもない成功例があったのも災いして、傷つけるというシーンに良さは生まれていなかったです。
あとTVシリーズでお馴染みのキャラクターを謎に総登場させていたのもよく分かんなかったです。
その辺の描き方が上手い作品もあるんですが、ただ登場させただけのような感じだったのがとてもノイズで、別に恐竜退治する必要なんてないのに無理くり突撃させに行ってますし、かといってそれで何か変わるってわけでもないので、ただただ無駄に登場させただけってのが嫌でも伝わってきてしまったのが残念でした。
でもギャグでヒットしたところは少ないですがあって、アピールしろよ!って風間くんが言ったところでしんちゃんが風間くんのアピールをするところだったり、人懐っこいセイウチのところだったりなところは好きでしたし、既存のネタの天丼もやっぱり面白いので元の強さでギリギリ戦えてたかなと思いました。
オリキャラに魅力が無かったのもアレだなと思いました。
どうにも展開を動かすための舞台装置くらいの活躍しかないので、歴代の映画オリキャラの中でもだいぶ薄い印象しか残らないなーとなりました。
しんちゃん映画、というか国民的アニメ作品では禁じ手でもあるキャラの死を軽く扱い感動に持っていこうとした点はかなり悪質でした。
直近で間接的とはいえ死を描いた作品はロボとーちゃんだったんですが、あちらはひろしとロボひろしが同じ世界に共存できないという選択肢があったからこそ選んだものであって、だからこそ生まれた感動は今でも覚えているんですが、今作のナナの死は果たして必要だったのかと思ってしまうくらい雑で唐突で、ビルに潰されたというわけでもなく、なんならしんちゃんとシロは助かってるし、ナナも謎に救出されてるのに力尽きたっていう描写が曖昧すぎて、死んだというのを悟らせないためなのか、それともこれで伝わるだろうくらいの投げっぱなしなのか、どちらにしろ不親切だし嫌な終わり方だなと思いました。
個人的にはしんちゃん映画って野原家とカスカベ防衛隊の配分が8:2or2:8くらいの割合で進んでいくのがベタですが全体的に見やすく、それが途中で合流していってという流れも観やすいなーと思っていたのですが、今作では野原家もカスカベ防衛隊も全員出てくるのでその点でとってもバランスが悪く、均等に出番を出そうとしたせいかテンポも悪くなるしの悪循環は観てられなかったです。
監督と脚本を確認してなかったのですが、監督は過去に1度しんちゃんに携わっていたんですが、脚本が全くしんちゃんに関わってきてなかったのが今作の面白くなかった大きな要因なんじゃないかなと思いました。
ドラマをメインで作ってる人になぜしんちゃんの、しかも年一の劇場版を託したのかの判断が全くわかりませんでした。もしやコネ…?
恐竜の作画はとっても良くて、ここはWIT STUDIOとかが手掛けたのかな?ってくらいにはクオリティが高かったです。
その作画の良さを活かしきれていたかは別として。
ガックリしながらも、2025年の特報で突如流れた「オラはにんきもの」にテンションが上がって、おそらく舞台はタイなんじゃない?というところにしんちゃんらしさが感じられてこういうのを待ってたんだよー!と本編よりもテンションが上がりました。
マイヘアの主題歌は優しい感じでどの映画にも合いそうだなーと思いました。ただ今作ではなかった…。
少し迷走してしまっているしんちゃん映画ですが、来年こそは逆転の一手を打ってくれる事を期待しています。
ぜひ来年は過去作のしんちゃんを担当した方や、しんちゃん愛の強い人をメインに据えてくれ〜。
鑑賞日 8/12
鑑賞時間 13:50〜15:55
座席 F-2