「悪人にも背景がある系の犯罪ドラマなので、警察嘲笑う系が好きだったらスルー推奨かも」スマホを落としただけなのに 最終章 ファイナル ハッキング ゲーム Dr.Hawkさんの映画レビュー(感想・評価)
悪人にも背景がある系の犯罪ドラマなので、警察嘲笑う系が好きだったらスルー推奨かも
2024.11.2 一部字幕 イオンシネマ久御山
2024年の日本映画(116分、 G)
原作は志駕晃の小説『スマホを落としただけなのに 戦慄するメガロポリス』
シリーズ3作目にして最終章
首脳会談を巡るハッキング犯罪を描いたスリラー映画
監督は中田秀夫
脚本は大石哲也
物語の舞台は、都内某所(霞ヶ関&千葉あたり)
前作にて、連続殺人鬼の浦野(成田凌)を取り逃した捜査一課の加賀谷(千葉雄大)は、内閣府のサイバーセキュリティーチームに転属になっていた
5年を経過しても、浦野への執念を拭えない加賀谷は、先輩の警部補・毒島(原田泰造)を訪ねては、浦野に繋がる何かを探していた
一方その頃、浦野は韓国の仁川に潜伏していた
彼もまた、麻美(北川景子)への執着を捨てることなく、フラッシュバックを繰り返していた
そんな彼の元に、韓国の反政府組織ムグンファが接近してきた
幹部のキム・ガンフン(大谷亮平)は「韓日首脳会談を阻止したい」と考えていて、浦野のハッキング技術に頼ろうと考えていた
浦野は「ある条件」を提示することで了承し、彼の世話役としてキムの秘書スミン(クォン・ウンビ)が付くことになった
物語は、浦野によるJアラートハッキングによって幕を開け、その手口から、加賀谷は浦野の犯行だと確信する
また、妻・美乃里(白石麻衣)の不可解な行動も見えるようになり、彼は全てを疑い始めてしまう
一方、浦野の方は剥製師のハクソン(佐野史郎)と会うことになり、そこで麻美を剥製にしたいという本音をぶちまける
映画は、前2作のスリラーっぽさからは逸脱して、思いっきり「犯罪者の悲哀ドラマ」になっていた
浦野も加賀谷もスミンも幼少期に親に愛されなかった過去を持ち、その無愛情で育った人間の未来の違いを描いていく
浦野は歪んだ愛情を持ってサイコパスになってしまうし、スミンも義父ヨンジュン(カン・ユンス)から逃げるために裏社会に入っていく
だが、加賀谷のように警察官になって、愛する人と結婚するという道もあって、親ガチャに失敗したとしても、全てが同じ道を行くわけではない
とはいうものの、加賀谷自身も「妻から子どもを愛せないのでは?」と疑われてしまうので、どんな人生を歩んでもその過去は追いかけてくる、というテイストで紡がれていた
この路線変更をどう受け取るかだが、邦画特有の「悪人にも背景がある」というジャンルに落ち着いてしまっているので、これまでの浦野が好きな人からすれば拍子抜けしてしまうかもしれない
あのぶっ飛んだ性格でどんなすごいことをするのかを楽しみにしている人にとっては、浦野らしからぬ最期だったようにも思う
剥製化してスミンに愛される意味はほとんどないので、悪人は愛を取り戻しても、奇妙な執着に晒されるだけだということを描きたかったのかもしれない
また、彼を神と崇める人はたくさんいて、それは彼自身を愛しているわけではないとも言える
そういった観点からすれば、清濁合わせ呑むと言った人生観は幻のようで、隷属以上の関係性に辿りつかなければ達成されないのかな、と感じた
いずれにせよ、韓国と日本を舞台にしているものの、そのほとんどは日本で撮影されていて、風景描写のためのロケがいくつかあるのかな、という感じになっていた
基本的には室内の戦いなので、異国感はほとんどないのだが、そのあたりを深く考える意味もないのだろう
アメリカを相手にするとリアリティがなく、中国やロシアだと首脳会談すら幻想なので、韓国というのはちょうど良い距離感なのかもしれない
韓国の人が観たらどう思うのかはわからないが、たぶん「不評なんだろうなあ」と思うし、プチ炎上する案件なのかな、と感じた