「優秀作品賞へ推し! 聴こえない母へ、産んでくれて育ててくれて ありがとう!!」ぼくが生きてる、ふたつの世界 The silk skyさんの映画レビュー(感想・評価)
優秀作品賞へ推し! 聴こえない母へ、産んでくれて育ててくれて ありがとう!!
耳の聞こえない両親から育った一人息子コ-ダ(聴者)が今思う、
音のする世界と、静寂の世界。
普通の両親の元へ生まれたかった。・・・この思い。
貧しいし、塾にも行ったけど進学にも失敗、人生の道が開けない、
親が耳の聞こえない聾唖者だから・・・・そう思う 主人公の大。
母さんと一緒に歩くの嫌だ!、学校に来ないで!、皆の前で母と話しもしたくない! ・・・多感な少年期 彼の心に芽生える葛藤が少しずつ心に歪みを生む。
今日は 聾唖の両親を持つ青年の話「ぼくが生きてる、ふたつの世界」の鑑賞です。
感想からまず述べると、全て実話でしょう。偽りな表現は感じられませんでした。
どうしてもこの様な作品にありがちな 不要な脚色をし見栄え的展開流れを組んでしまってる事が結構有るのですが、そういった点が無く、誰の心へも等身大で奥底へ感情が入ってきます。
貧しさや、介護、祖父の暴力、孤独、進学失敗、上京そして一人暮らし、チャンスと挫折・・・誰にでも起こりえる視点と展開です。
両親が障害者だからと言って特別な人生が待っている訳ではありません。
ですが、生まれてから 生きてきた今までに与えられた運命みたいな物はあったでしょう。それに自分が向き合って いつそれに気付く事が出来るかだと思うのです。
貧乏も、介護も、両親が障害者も、自分以外の人でも有るわけで。
だから 健常者と同じように悩み、それを生きていくのが人生でしょう。
そう思います。
二つの世界の中を渡り歩く彼。でも見ていて、厳密には彼は健常者であって障害者では無いなと思うのですよ。でも 聾唖の方々の悩みや苦労は 人より遙かに理解が出来る。手話で意思が通ずることは 健常者からすればそれは素晴らしいと思いますね。 結局その思い、長けた能力を何に使うかだと感じます。
コ-ダである彼の人生も表現の一つでもあると思いますが、やはり母子の関係性が一番の魅せ場だと感じますね。
結局の所、一般的な母親との関係を描く事で、耳が聞こえない母、父を持った彼から見えた世界が一番のネタなのでしょう。
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(その他 思った事)
・吉沢さんの高校生姿って無理有るかなと思ってたが違和感なく見れたと思う。
・手話にも場所によって違い、方言がある事が分かった。
・仕事は常に自分の出来るレベルより少し上のレベルが遣ってくる。
・両親が聾唖者だと、赤ちゃんへの育児は相当大変であったであろうと理解した。
周囲の人達の助けが無いと多分無理だと感じる。
・耳が聞こえない両親でも大きな愛が有って、育てて貰えたから良かったと思う。
健常者の両親であっても我が子への愛が無く、虐待され放置されてしまう子もいる。不幸か、幸福かは つまりの所、愛がある家族であったかどうかだと感じますね。
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何とか東京で仕事をやって暮らして行く息子。
父が病で倒れて急いで帰郷。
祖母の介護と、父の看病。
母の事が心配で 家へ帰ろうかと・・・母へ申し出る息子。
”大ちゃんは東京で、頑張って~”
東京へ戻る列車待ち、駅のホームで、 昔 上京する時の事を思い出す彼。
母と列車内で手話で話した 役者になる話・・・
笑う母の顔。やがて列車を降りた母が 一言息子へ言う・・・・
”列車の中で 手話で話してくれて ありがとう~ ”
母がホ-ム端へ歩いて行く 後ろ姿を見て、
その時、今までずっと自分に話しかけてくれていた 母の声が聴こえた!
自分は何も母の事を分かってはいなかったんだと、
心から聴こうと、話そうとしていなかったんだと。
今 それに気がついた・・・
その事に 彼は深く号泣する・・・ そして母への感謝。
この場面、 メッチャ泣けましたわ。
本当に良い場面表現だったと思います。
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原作:五十嵐大氏「ろうの両親から生まれたぼくが聴こえる世界と聴こえない世界を行き来して考えた30のこと」
脚本:港岳彦氏
監督:呉美保氏
-----MC
・五十嵐大(主人公コーダ)役:吉沢亮さん
・五十嵐明子(母)役:忍足亜希子さん
・五十嵐陽介(父)役:今井彰人さん
・鈴木康夫(祖父)役:でんでんさん
・鈴木広子(祖母)役:烏丸せつこさん
俳優陣は皆さんとても素晴らしく、本当の家族の様に思えました。
本物の赤ちゃんを使う事でリアリティがあり
特に百日祝い「お食い初め」の習わしが微笑ましかったです。
是非、ご家族揃って
劇場でご覧くださいませ!!