リリアンの揺りかご
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冒頭に、先行的な様式としての『イントレランス』における方法が紹介され、そのなかに出てくるのが「リリアンの揺りかご」であるという説明がなされていた。
神戸監督の自閉症のご子息について、相模原殺傷事件の加害者から誹謗されたことに対して反論し、加害者の本質が自己評価の低さであることを看破されたのは見事である。私は、映画『月』も、その加害者を想定した人物の承認欲求の強さや、犯行に到るまでの先輩からの影響、巻き込まれた同僚の葛藤を描いていて秀逸だと考えている。
本作で並行して描いた選挙立候補者による現代の在日朝鮮人へのヘイト・スピーチや、関東大震災における朝鮮人虐殺への誹謗行動に対する反対運動の取り上げ方は、やや説明不足で、ヘイト側が正しいように受け取られ易いと感じた。
神戸監督は、映像中の講演会での質疑応答で答えているように、朝鮮人差別事件をご子息の問題や相模原殺傷事件とつながりのある問題だと捉えているようだが、少し欲張り過ぎではないかと感じた。『福田村事件』ほどに余計な人物の挿話は必要ないけれども、震災が起こってから虐殺が起こるまでの時間差や実行者の背景を考慮したのと同じように、小池都政以前はどうだったのかという時代性も含めた差別行動を起こす背景の丁寧な描き方、慰霊碑の前で実際に行われた懸念された差別的儀式がどのような内容だったのかを提示することも必要だったのではないかと感じた。