「新しい言語への挑戦」サイレントナイト regencyさんの映画レビュー(感想・評価)
新しい言語への挑戦
『ペイチェック 消された記憶』以来、ジョン・ウーの約20年ぶりとなるアメリカ資本作。殺された息子の敵討ちというストーリー自体は『フェイス/オフ』と同じだが、大きな特徴は復讐を誓う主人公が声を失ってしまったという点。それに伴い主要人物の大半がセリフを喋らない手法がとられている。
「戦いのシーンだけでなく、音やパンチの衝撃、さらにはカーチェイスまで、すべてを観客に情報を伝えるための新しい“言語”として使った」と述懐するウーの挑戦だが、ガンファイトにカーチェイス、キリスト教、ダンス、二丁拳銃といった彼のモチーフはちゃんと抑えている。展開がいささか荒唐無稽なのもウーらしさとポジティブに解釈。ただ、ウー作品に欠かせないものだった“白い鳩”だけは登場しない…と思いきや、実は違う形で登場させている。
にしても主人公を演じたジョエル・キナマンはリメイク版『ロボコップ』では全身が機械となり、『サイレント・アワー』では聴覚障碍になったりと、身体に難を抱える役どころが多いのは何故か。
本作も、『狼 男たちの挽歌最終章』をセルフリメイクした次作『ザ・キラー ジョン・ウー 暗殺者の挽歌』もアメリカでは不振だったようだが、気落ちすることなく今後もジョン・ウーにはアクション映画の新たな見せ方を模索してほしい。
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