「あるものをエッラがスティーブに授けるところがとても感慨深い」リトル・エッラ Dr.Hawkさんの映画レビュー(感想・評価)
あるものをエッラがスティーブに授けるところがとても感慨深い
2024.4.11 字幕 アップリンク京都
2022年のスウェーデン&ノルウェー合作の映画(81分、G)
原作はピア・リンデンバウムの児童文学『Lill-Zlatan och morbror raring(2006年)』
仲良しの叔父さんの恋人出現に戸惑う少女を描いた青春映画
監督はクロスティアン・ロー
脚本はエラ・レムハーゲン&ヤンネ・ピエルト&サーラ・シェー
原題は『Lill-Zlatan och morbror raring』、英題は『Mini-Zlatan and Uncle Darling』で、ともに「小さなズラタンと愛しの叔父さん」と言う意味
ズラタンは、スウェーデンのサッカー選手ズラタン・イブラヒモヴィッチのこと
叔父のトミー(シーモン・J・ベリゲル)は、サッカー好きのエッラ(アグネス・コリアンデル)を「ミニ・ズラタン」と呼んでいる
物語の舞台は、スウェーデンのとある町
同世代と仲良くできないエッラは友達がおらず、叔父のトミーしか話し相手がいなかった
ある日、両親(テレース・リンドベリ&ビョーン・エーケングレン・アウグスツソン)が旅行に出るとのことで、祖母(インゲル・ニルセン)に預けられることになったエッラ
祖母宅には大きな三つ子(ミカエル・ハーデンボルト&パトリック・ハーデンボルト&ロビン・ハーデンボルト)がいたが、3人はいつも一緒で、エッラのことなど気にもかけない
そこでエッラは、祖母宅を抜け出して、トミーのところに行ってしまうのである
トミーはショーの準備で相手ができず、しかも彼の恋人スティーブ(ティボール・ルーカス)がオランダからやってきてしまう
エッラはトミーを奪われると思い、スティーブをどうやって追い出そうかと案を練る
近くに住んでいる同世代のオットー(ダニヤ・ゼイダニオグル)は、色んなアイデアを出し、彼が飼っているネズミを投入しようと言う話になった
物語は、エッラがあの手この手でスティーブに嫌がらせをする様子が描かれ、それによってトミーが心を痛めてしまう
さらにオットーから借りたネズミも行方不明になってしまい、やることなすこと裏目に出てしまうのである
映画は、トミーを独占したいエッラが暴走すると言うもので、少女期にある不安定さがその原因となっていた
彼女はサッカーに詳しく、大人と会話が普通にできるので、精神年齢は高めに見える
だが、中身が伴っておらず、すぐに感情に流されて、行動に結びつけてしまうのである
子ども向けの絵本が原作なので、多感な時期に起こしてしまう過ちについて描いていて、それを主演のアグネス・コリアンデルがうまく演じている
トミーとスティーブは同性愛者だが、この映画の中では誰もその関係に疑問を持たず、エッラも同性愛だからスティーブを嫌悪していると言うのではない
このあたりはLGBTQ+を受容する環境がすでに出来上がっている国ならではと言う感じがして、これが絵本の内容と言うところが現在の日本では考えられないことなのかもしれない
いずれにしろ、エッラの可愛さありきの映画ではあるものの、周囲のキャラも立っていて、分かりやすい物語に仕上がっていた
三つ子も出オチかと思えばちゃんと出番もあるし、オットーも最後には「友達」になっているので安心した
オットーは原作にはいないキャラなのだが、単にエッラが反省して終わるよりは、同世代の友人ができたと言うエンディングの方が良かったと思うので、この改変によってほっこりできるのは良かったと思った