「スクールカーストものの向こうに強烈な捻りが」Saltburn 清藤秀人さんの映画レビュー(感想・評価)
スクールカーストものの向こうに強烈な捻りが
オックスフォード大学で学ぶオリヴァーは、キャンパスの人気者である裕福な学生、フェリックスと友達になる。オリヴァーの不幸な身の上話にフェリックスが同情したのがきっかけだ。
見かけが全然イケてないオリヴァーと王子様みたいなフェリックスの交流に関する物語は、一見、かつて見たスクールカーストものかと思いきや、行手には強烈な捻りが仕掛けてあった。
前作『プロミシング・ヤング・ウーマン』('20年)と同じく、監督のエメラルド・フェネルはオリジナルの脚本を手に、世の中で上位にいるとされる人々に痛烈パンチを喰らわせる。ターゲットにされるのは男性優位の社会と、本作で言えばイギリスの上流階級だ。
かなり際どい場面にも果敢に挑戦し、果ては全裸も披露している策略家の主人公、オリヴァーを演じるバリー・コーガンに注目が集まっているが、美しくて脆いおぼっちゃまをまるで自然体のように演じるジェイコブ・エロルディなくして、この物語は成立しなかったのも事実。同じく、オリヴァーが一夏を過ごすソルトバーンにあるフェリックスの豪邸で暮らす家族たちの崩壊ぶりが凄い。イギリスの貴族って本当にこうなの?と疑ってしまうほどに。特に、出番は少ないがフェリックスの母親を演じるロザムンド・パイクのイっちゃってる感。これを見た後、即行で『ゴーン・ガール』('14年)を見直してしまった。
監督2作目にして、エメラルド・フェネルはストーリーテラーとしての質の高さと同時に、俳優たちから一層の魅力を引き出す達人であることを証明した。
コメントする