「良作」三日月とネコ kuroroさんの映画レビュー(感想・評価)
良作
最初はタイトルの影響もあり、動物映画的なイメージがあり、躊躇していたが『書くが、まま』の上村奈帆監督の初商業映画という1点だけに期待して観ることに。
地震直後に避難したネコ連れ同志の女2人とネコ好き男1人が出会い、意気投合し、3人はそれぞれの事情を抱えながら一緒に暮らし始める。
よくありがちな設定かもと思いながら見ていたがこの3人のキャラクターのありふれた生活ぶりがゆるくて心地良い。次第に3人は現代らしいジェンダーを超えた信頼関係が生まれるのだが……
途中から動物映画じゃないのは、分かってくるのだが、3人から広がっていく、人との繋がり、そして人間の機微がしっかりと描かれており物語の世界に酔いしれていく。
『書くが、まま』は動のエネルギー溢れる映画だったが、本作は静の抑えたエネルギーが溢れ落ちる大人の映画だった。
改めて上村監督は、気持ちをパトンのように繋いでいく、愛の伝統師のようだ。黄金の松竹映画のようでもあり、現代の繊細なリアルな映画でもある。等身大の揺れ動く中年女性を演じた安達祐実もなかなか良い。
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