「隙間に入るのが好きなネコは、人の心の隙間にもすっぽりと入ってしまうもの」三日月とネコ Dr.Hawkさんの映画レビュー(感想・評価)
隙間に入るのが好きなネコは、人の心の隙間にもすっぽりと入ってしまうもの
2024.5.28 TOHOシネマズ二条
2024年の日本映画(112分、G)
原作はウオズミアミの同名漫画(集英社)
震災を機にルームシェアを始めたネコ好き男女を描いたハートフルヒューマンドラマ
監督&脚本は上村奈帆
物語の舞台は、熊本県熊本市
書店員として働く灯(安達祐実)は、40歳になってもこれと言った出会いがなく、愛猫のまゆげ(にぼし)と暮らしていた
ある夜、地震が起こり、屋外に避難した灯は、そこで同じマンションの住人・鹿乃子(倉科カナ)と出会う
彼女はミカヅキ(Elphie)という白猫と一緒に住んでいて、今は精神科医として働いていた
不安が過ぎる中、停電の復旧を待っていた2人だったが、そこに猫好きの青年・仁(渡邊圭祐)がやってきた
場の雰囲気が明るくなったと同時にマンションの停電も復旧し、それぞれは自宅へと戻ることになった
だが、鹿乃子は「余震が怖いから、もう少し一緒に居ませんか?」と言って、2人を自分の部屋に誘った
物語は、そこで縁が結ばれた3人が共同生活を始めるというもので、それぞれの新しい人生が訪れた時にどうするか?というものを描いている
一歩間違えば「鎖」になりかねない関係で、家族ではないゆえに相手への配慮が枷になるような印象もある
40歳を越えて、1人で生きていくことを決めかけていた灯には、編集者の長浜(山中崇)が現れ、趣味も好みも全て理想的だった
恋愛に興味のないつぐみ(石川瑠華)に惚れ込んだ仁は、自信過剰に追いかけていくものの、恋愛関係にはならずに距離を置くことになる
明確には描かれないが、鹿乃子は同性愛の気があり、作家の網田(小林聡美)もそれに近い印象がある
とは言え、彼らの関係は心理的なつながりを重視しているので、性欲的に強く繋がりたいとは思っていないところがあって、この感覚が今風のように思えた
映画は、ネコがたくさん登場するが、最終的には人とのふれあいこそが人生を豊かにすると結ばれている
その隙間を埋めてくれる存在がネコであり、人間関係というものは持続的ではいられないゆえに、休息が必要となってくる
そう言った時にそばにいてくれる存在があれば心強く、悩みを吐露できる環境というものが大切なのかな、と感じた
いずれにせよ、ネコ好き御用達の映画ではあるが、そこまでネコありきの映画でもないところが面白い
ネコに傾倒しまくる人生だと難しいところがあって、かと言って癒しをおざなりにする人生も大変だと思う
本作におけるネコとの関係はバランスが保たれていると思うので、これぐらいの距離感を保てるのなら良いのではないだろうか