「個人的バイブル映画へ殿堂入り」ディア・ファミリー kkrさんの映画レビュー(感想・評価)
個人的バイブル映画へ殿堂入り
まず、番宣が反則級のクオリティだった。昨今の、言っちゃ悪いが観る気も起きない、くだらない番宣が溢れている中で、この映画は頭一つ抜きん出た番宣で、「これは観たい」と強く印象に残るものであった。
番宣がこれほどまでに煮詰まっていれば、内容も当然素晴らしく、期待値を大幅に上回っていた。人前で涙は流さない性分であるが、この映画は心の琴線に何度も触れてきて、堪らず涙した。
父の役に大泉洋が遺憾無くマッチしており、父の人柄、心根、信念が十分に伝わった。
自分の娘が心臓を患っているとわかったときに、あの父のように「お父さんが絶対助けてやる」と胸を張って言えるだろうか?あの状況であれば、大多数の人が「娘を助けたい気持ちは山々だけど、技術的な面、金銭的な面でそれは叶わない」と行動すら起こせず、延命は諦め、今生きている内にたくさん思い出を作ってもらおうと、親子共々死を受け入れるしかないだろう。
町工場の社長である父が、娘の命を救いたいという一心で行動を起こし、財を投げうち、勉強して、研究し続けた。金も名誉も必要なく、ただ娘の命、ひいては心臓の病に苦しむ人たちのために、幾度の挫折を経験しながらも直向きに頑張る父の姿に、強く何度も感動した。実話をベースに作られているからこそ、余計に共感を誘い、感動するのだろう。
成果主義かつ拝金主義な医療業界。その、仕方ないながらも凝り固まった思想に取り憑かれ、医師でありながらも、人の命を救うより自分の地位を優先する共同研究者の教授。その教授に逆らえない父と学生。そこに立ち向かって風穴を開けようとする勇敢な父と、そんな教授を説得した学生。その時の言葉は「ここで筒井さん(父)に手を差し伸べられないのなら、私は医者になった意味もありません。」この周辺のシーンが一番の感動ポイントだった。
結論を言ってしまえば、人工心臓は作れなく、また娘は助からなかったのだが、全くバッドエンドではない。人工心臓の製作で培った知識・経験が、今まで多かった医療事故が起きにくい、新しいバルーンカテーテルの開発に応用でき、人工心臓への挑戦は、結果として何一つ無駄になっていないのだ。新しいバルーンカテーテルにより、何十万人もの命が救われれ、娘と交わした約束を果たすことができた。病床の娘に父が、「また一人助かったぞ。」どれほど嬉しい報告であっただろうか。
長く書いてしまったが、この映画は私の中の大作であり、何度も見返したいと思えるものであった。ぜひ見て頂きたい映画である。