劇場公開日 2024年6月14日

「ピュアな原動力は凄まじい」ディア・ファミリー 菜野 灯さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0ピュアな原動力は凄まじい

2024年6月30日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

父母、3人娘の5人家族。時代は1970年代から始まる。次女が心臓疾患を伴って生まれてきて、余命10年と言われながらも20年余りを生きる。その過程で、人工心臓をつくろうとする父親。
その父親は町工場の社長で、もともとモノづくりの環境にあった。資金繰り、医学界との壁、とてつもない技術と試行錯誤が必要な人工心臓。やがて挫折はするが、その経験を活かして今度は血管を補助するチューブづくりを目指して、これが実用化される。愛娘は亡くなったが、その愛娘との約束、人を救うことは果たした。
きっかけはただひたすらに愛娘を救いたい一心でやってきたピュアな原動力に感動する。こうした映画をみると、やっぱり家族っていいなと。独り者の自分を鑑みてふと思う。自分の子どもができる、その子どものために頑張る。子どもをもつ親たちの原動力は少なからずそこにあるような気がする。それが無い自分は、何を原動力に求めるのか。ちょっと考えされられた。
大泉洋の存在感、声の張りは安定の演技。菅野美穂はしっかり夫をささえる良妻を演じ切ってる。何度も何度も挫折する中で諦めない、前向きな姿勢は生きる姿勢そのもの。あとは、光石研は相変わらず安定の存在感。医者とはいえども医学界の中では権威にさからえず、さらに時勢によっては態度を変えていく庶民感覚な人間を演じたらピカ一。
それと、1970年代の時代背景を映像にとらえていて、さすがは自主映画とは違う予算をかけた作り込み。あの当時は新幹線でタバコ吸ってたんだな(いまじゃそれだけで乗車したくなくなる)。それに、父親、母親の若かれし肌感から老いていく時代の流れもあって、メイクや美術の技術にも感心させられた。

菜野 灯