マリア 怒りの娘のレビュー・感想・評価
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ニカラグアの女性監督による歴史的な一歩
ニカラグアと聞いて、すぐさま地図上で南米のホンジュラスとコスタリカの間の国を指させる人はそういないだろう。だが冒頭、首都にある広大なゴミ捨て場の様子を目の当たりにするや、我々の意識は一瞬にして、この遠い遠い国と主人公マリアの感情へと引き寄せられる。廃品を漁る無数の子供たち、その姿を幻想的に照らし出す陽光、水辺をひっきりなしに行き交う馬車・・・そこに描かれる社会状況は極めて過酷ではあるものの、これが初長編というバウマイスター監督の映像力には圧倒されるばかりだ。物語は後半、母と離れ離れになったマリアの怒りと混乱に寄り添う。まだ11歳の少女の前に立ちはだかる現実のなんと非情なことか。そんな中で彼女がふと宇宙へ思いを馳せる場面が胸を打つ。そしてラストに口にするセリフも心を震わせる。取るに足らない小さな一作かもしれない。でも世界とそこで暮らす幼い少女の感情とを確かに繋ぐ、大切な窓ともいうべき作品だ。
ニカラグアの直球
前を向くマリアの強さ
南米ニカラグアを舞台に描かれる少女マリアの成長物語です。
貧困の度合いがハンパじゃないニカラグア、特にマリアの置かれた状況は本当にキツいと思いましたし、
日本はなんて恵まれた国なんだろうとも思いました。
マリアと母親の関係性と置かれた境遇の不遇さが強調して描かれ続け、
ある事柄をきっかけに、母娘が別れ別れになり、そこからマリアの物語になっていきます。
母親が言っていた「猫🐈は7回生まれ変わる」、「大人になるときに半分猫・半分人間が現れる」が重要なキーワードになっており
ラストはその状況にマリアが置かれます。
時折マリアが見る夢が、そのことを示唆していて、猫化した母親がラストに現れるのは母親の死を示唆していますし、
それがわかったマリアは、下を向かずに、まっすぐ見据えて歩き始める。そのラストはグッときました。
マリアは常々母親から「下を向くな、前を向け」と言われていたことも相まって。
ファンタジーでもありますが、それでいいんだと思います。
正直、気持ち的には苦しくなりながら、ずっと観ていました。
マリアが置かれる環境が変わるに連れて、マリア自身が少しずつ成長していく、強くなっていく、環境がそうさせていく、
やるせない切なさもあるけれど、最後はまっすぐな視線を正面に向けて歩きだすマリアに元気をもらいました。
今後もニカラグア発の映画が製作されていくことに期待しています。
ニカラグアという国の一面を見れて勉強になりました。
ありがとうございました。
ニカラグアってどこ?
ニカラグアの母子家庭
ニカラグアで底辺生活をしながら、母は娘のマリアに厳しく接する一方で、優位な男性から搾取されていた。
母がマリアを預けた施設では、閉じ込めて諦めさせようとする一方で、子ども同士の喧嘩には、上手く対処し、心を掴もうとしていた。マリアは、仲間との間に絆をつくりつつあったが、やはり母の許に戻りたくなり、抜け出して彷徨い、猫に変わり果てた母に再会する。母もまた挫折しただろうという想像なのだろうか。
いかがなものか
マリア 怒りの娘 初のニカラグア映画かな。思ってたよりもグッとくる...
マリア 怒りの娘
初のニカラグア映画かな。思ってたよりもグッとくる作品。
ニカラグアで貧しく生きる家庭の現実的な苦しさ辛さが描かれ、ニカラグアの内情を学びながら同時に強く逞しく生きる母と娘の姿に勇気も貰えた。
一見厳しく接してる様に見える母の姿もニカラグアで生きるにはまだまだ甘く、そして一見反抗的な姿が強く見える娘のマリアの姿でもあるが最後のシーンをはじめ母から受けた言葉をしっかり理解し実践する姿が垣間見えるのがこの作品の美しさであると感じた。
当初は関東ではユーロスペースのみでの上映で観るのを諦めていたが、好きな劇場のキノシネマ横浜で上映してくれる事になり観る事となりこの作品を観れた事を幸せに思う。
個人的な2024年洋画新作鑑賞ランキング
1 ネクスト・ゴール・ウィンズ 4.8
2 Firebird ファイアバード 4.8
3 コット、はじまりの夏 4.7
4 アイアンクロー 4.7
5 オッペンハイマー 4.7
6 クレオの夏休み(横浜フランス映画祭2024) 4.7
7 コンセント 同意(横浜フランス映画祭2024) 4.7
8 ARGYLLE/アーガイル 4.7
9 アリバイ・ドット・コム2 ウェディング・ミッション4.5
10 バティモン5 望まれざる者(横浜フランス映画祭2024) 4.5
11 デューン 砂の惑星 PART2 4.5
12 愛する時(横浜フランス映画祭2024) 4.5
13 ファイブ・ナイツ・アット・フレディーズ 4.5
14 アクアマン/失われた王国 4.5
15 ニューヨーク・オールド・アパートメント4.3
16 マリア 怒りの娘 4.0
17 異人たち 3.7
18 ミツバチと私 3.6
19 ブリックレイヤー 3.5
20 ネネスーパースター(原題) Neneh Superstar (横浜フランス映画祭2024) 3.4
21 オーメン:ザ・ファースト 3.4
22 RHEINGOLD ラインゴールド 3.3
23 12日の殺人 3.3
24 インフィニティ・プール 3.3
25 ゴーストバスターズ フローズン・サマー 3.2
26 プリシラ 3.2
27 コール・ジェーン -女性たちの秘密の電話- 3.2
28 コヴェナント/約束の救出 3.0
29 僕らの世界が交わるまで3.0
30 ブルックリンでオペラを 3.0
31 ストリートダンサー 3.0
32 カラーパープル 2.9
33 弟は僕のヒーロー 2.8
34 RED SHOES レッド・シューズ 2.8
35 画家ボナール ピエールとマルト(横浜フランス映画祭2024) 2.7
36 Vermines(横浜フランス映画祭2024) 2.6
37 関心領域 2.6
38 ジャンプ、ダーリン 2.5
39 エクスペンダブルズ ニューブラッド 2.3
40 けもの(仮題)La Bête(横浜フランス映画祭2024) 2.3
41 マダム・ウェブ 2.3
42 落下の解剖学 2.3
43 ダム・マネー ウォール街を狙え! 2.3
44 哀れなるものたち 2.3
45 ザ・エクスチェンジ 2.2
46 DOGMAN ドッグマン 2.2
47 パスト ライブス/再会 2.2
48 リトル・エッラ 2.2
49 パリ・ブレスト 夢をかなえたスイーツ 2.2
50 ボーはおそれている 2.2
51 ジャンヌ・デュ・バリー 国王最期の愛人 2.2
52 瞳をとじて 2.2
53 ゴースト・トロピック 2.2
54 葬送のカーネーション 2.2
55 Here ヒア 2.1
56 美しき仕事 4Kレストア版(横浜フランス映画祭2024) 2.0
57 ハンテッド 狩られる夜 2.0
58 サウンド・オブ・サイレンス 2.0
59 ゴッドランド GODLAND 2.0
60 キラー・ナマケモノ 1.9
61 ザ・タワー 1.9
62 ポーカー・フェイス/裏切りのカード 1.9
63 マンティコア 怪物 1.9
64 アバウト・ライフ 幸せの選択肢 1.8
65 サン・セバスチャンへ、ようこそ 1.8
66 デストラップ 狼狩り 1.6
67 No.10 1.5
68 VESPER/ヴェスパー 1.5
69 フィスト・オブ・ザ・コンドル 0.5
番外
ソウルフル・ワールド 5.0
QUEEN ROCK MONTREAL 5.0
あの夏のルカ 5.0
私ときどきレッサーパンダ 5.0
FLY! フライ! 5.0
犯罪都市 NO WAY OUT 4.5
DUNE デューン 砂の惑星 リバイバル 4.0
メメント リバイバル 2.0
π〈パイ〉 デジタルリマスター 2.0
貴公子 1.5
ピアノ・レッスン 4Kデジタルリマスター版 1.5
邦題が合ってない(笑)
これからもニカラグアで撮って欲しい
母を訪ねて…。
ゴミの山の上で
最貧国で逞しく生きる少女の話
ニカラグア映画。
貧しさ故に長編映画は僅か数点しか作られていないというニカラグア発の映画。自身も貧しい境遇からメキシコの大学に進んで映画制作を学んだ女性監督の渾身の作。
あるトラブルから母が出稼ぎに行かなくてはいけなくなり子供が施設に預けられる所から始まる。施設を抜け出して行方不明の母を探す単純なストーリー。しかし色々な問題を内包していてそう単純ではない。ニカラグアの現状や貧しさが余すところ無く描き出されている。 例えば施設を経営する夫婦は子供達に廃品回収業の手伝いをさせながら養っている。子供の親はいないか貧しく夫婦が養ってやらなければ子供は多分死ぬ。夫婦の子供達に対する目線や態度は温かく優しくて彼ら自身貧しくて地代を払えないのに完全にボランティアである。この国は助け合わねばやっていけない程貧しいということだ。しかし法的には子供達に不法就労をさせていることになり夫は警察に捕まる。様々な問題が描かれた映画であった。
いまだにこんな場所で暮らす人々がいる事にショック。分かってはいるつ...
貧困下で荒れた少女は大人になる
独裁政権や内戦の影響で貧困に喘ぐニカラグアが舞台の本作だが、まず冒頭で驚かされるのが、同国が医療面においても劣悪な環境であることと、ゴミ収集事業の民営化に反対する貧困層と政府の対立が深刻化していること。完璧とは断言できぬも、いずれの面でも整った環境下にある日本ではまず考えられない。
ゴミ収集で日銭を稼ぐ少女マリアは、自分が原因で母と交流のあったリサイクル施設にひとり預けられる。ここでもやはり児童を不法労働させている実態が浮き彫りとなるが、大人達も強制的に働かせているわけではないという点が、事を複雑にしている。
周囲と打ち解けず荒れるマリアは、わざと困らせようとしているわけではなく、一番好きな母に会えなくなった悲しみがそうさせる。少し前に観た『システム・クラッシャー』も虐待が原因でディスコミュニケーションとなり荒れ狂う少女が主人公だったが、社会の歪みは感受性の強い子供にダイレクトに悪影響を及ぼしてしまう。
劇中で印象深かったのは、犬、ゴリラ、鳥、馬といった動物になぞらえた伝承・寓話を引用している点。中でも「猫女」の伝承はラストへの伏線となっている。「猫女は大人になった日に現われる」――そのラストは観る者の解釈に委ねているが、冒頭から中盤まで荒れ狂っていた時とは大きく変わったマリアの表情が、『レオン』のナタリー・ポートマンを思わせた。
マリア役の子役は演技経験ほぼゼロだったらしいが、シリア難民として生きる少年の過酷な日々を綴った『存在のない子供たち』で実際の難民少年を起用して信憑性を高めたように、演技経験のない子供を上手く役者に出来る監督は信用できる。
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