「ひとつにはなれない魂の片割れ」ソウルメイト sankouさんの映画レビュー(感想・評価)
ひとつにはなれない魂の片割れ
ソウルメイトとは運命として惹かれ合う人のことで、恋愛感情をも超えて深く結びつく存在のこと。
また前世から深いつながりのある相手であり、魂の使命を教えてくれる相手でもある。
ツインソウルという言葉もよく耳にするが、どれだけ魂がつながっていたとしても、それぞれに違う意志を持った人間同士であるため、本当に分かり合うことは出来ないのだと思う。
そしてどれだけ深く結びついたとしても、ひとつになることは出来ない。
魂の片割れであるからこそ、失った時の喪失感は何ものよりも大きく、決して幸福な関係が約束されているとは限らない。
正直観ていてとても悲しい思いをする作品だった。
映画はミソが彼女をモデルにした精密な鉛筆画を前にする場面から始まる。
その鉛筆画は大きく評価され受賞を果たしたのだが、作者の存在が分からない。
モデルになったミソならば作者の存在が分かるのではないかと、展覧会の主催者側は彼女に問いかけるが、彼女は幼い時の関係なので今はどこにいるのか分からないと返す。
やがて物語はミソが鉛筆画の作者であるハウンと初めて出会った子供時代へと遡る。
お互いに性格も生まれ育った環境も違う二人だが、出会った日から意気投合しお互いに惹かれ合うようになる。
勝ち気で自由奔放なミソと、真面目で誠実なハウン。
共に絵を描くのが好きだという共通点もあり、進学して学校が変わっても二人はいつも一緒だ。
しかしハウンにジヌという恋人が出来た日から、二人の関係は微妙にすれ違っていく。
ジヌはどうやらミソにも恋心を抱いていたらしい。
やがてミソはジヌが身につけていた首飾りを譲ってもらい、ハウンの側を離れていく。
それでもお互いに別々の生活を営んでいても、二人の間には生きた時間が流れていることが分かる。
魂同士でつながってはいても、お互いに違う価値観を持った二人。
衝突して傷つき、関係が終わりそうになる場面もある。
それでもお互いの心を埋められるのは、親でも恋人でもないのだ。
しかし、一度離れ離れになってしまった時点で、二人は交じり合うことのない運命だったのだろう。
後半になってミソがハウンの居場所を知らないと答える本当の理由が分かる。
それはとても悲しい理由だった。
ハウンは太陽は影の存在があるからこそ輝くことが出来るとミソに話す。
たとえひとつにはなれなくても、お互いを照らし合うことは出来るはずだ。
そうして幸せな関係を築くソウルメイトもたくさんいるのだと思う。
ハウンが残した鉛筆画が、初めて二人をひとつにつなげる存在だったことが分かるクライマックスはとても切なかった。