「「知力で勝負」ではなかったのか?」マダム・ウェブ tomatoさんの映画レビュー(感想・評価)
「知力で勝負」ではなかったのか?
「マーベル初の本格ミステリー・サスペンス」というキャッチコピーの割には、ミステリーの要素はほとんどない。
せめて、3人の少女が命を狙われる理由ぐらいは「謎」にできたはずなのに、早々に説明してしまうのは、どうしたことだろう?
主人公の能力も、未来予知というよりは、時間を巻き戻して起きたことをやり直すというもので、どちらかというとタイムリープのイメージに近い。
ただ、クライマックスの花火工場のシーンでは、タイムリープではなく未来予知をしているように見え、そうした表現方法の一貫性のなさが気になるし、突如として「分身の術」みたいな能力を発動するのも、ご都合主義に感じられる。
そのクライマックスも、主人公にずば抜けた身体能力や戦闘能力がないので、アクションが地味になってしまうのは致し方ないとしても、もう少し、「知力を駆使した頭脳戦」みたいな見せ場は作れなかったものだろうか?
肝心のヴィランにしても、彼がどんな悪行を積み重ねて富を築いてきたのかが描かれず、ただ少女を追いかけ回しているだけなので、「巨悪」とか「極悪非道」とかといったイメージとはほど遠い「小物感」がつきまとう。
広告塔に押し潰されるという最期も、ヴィランにしては、あまりにも情け無いと言わざるを得ない。
そもそも、彼が少女を殺そうとしなければ、彼女達と主人公は知り合わなかったはずで、彼女達がスパイダーガールズ?になることもなかったのではないか?
あるいは、ヴィランの見たのが「正夢」だったとすれば、彼は、少なくとも少女達がスパイダーガールズになるまでは生きていられたはずで、彼女達を殺そうとしたことによって、かえって自分の死期を早めてしまったのではないか?
仮に、未来が変わったのではなく、すべてが運命づけられていたのだとしても、ヴィランの間抜けぶりばかりが気になって、気の毒にさえ思えてしまった。