「テリブルガール!」マダム・ウェブ うそつきかもめさんの映画レビュー(感想・評価)
テリブルガール!
最近、食傷気味だったヒーロー映画。もうマーベルに気持ちが動くこともないのかもしれないなんてあきらめの境地に陥っていたが、久しぶりに映画館に行ってみたいと思わせる映画だった。
それは、サスペンスミステリーなどという、およそヒーローとは似つかわしくないジャンルにくくって巧みな宣伝戦略を展開したことに大きく起因する。
ダコタ・ジョンソンのキャラクターもいい。
救急救命士という設定が、すでにヒーローで、事故によって得た予知能力でスパイダーマンの窮地を救うというオリジンストーリーが語られるらしい。
これは新しい。
そう予感して劇場まで足を運んだ次第。
感想は
テリブルガール
《この先は、いいこと書いていないので、見たくない人は飛ばしてください。⦆
日本語吹き替え版がひどい。せめて字幕スーパーで見ることをおすすめする。
主演の大島優子はいただけなかった。
フラットで意志のちからを感じさせない彼女の声は、ただでさえ弱いストーリーを、引っ張っていくには足りなかった。もしかしたらダコタ・ジョンソンの演技そのものがそうさせるのかもしれない。忠実にそれを日本語のセリフに置き換えたというのなら、主演に罪は無いのだろうけど。3人のガールズにはそれを感じなかったので、ガールズを担当したプロの声優たちにはすんなりと引き込む力があるのだと思う。
何しろひどいのが動機だ。
どうして少女たちはユナイト(結団)したのか?これがあまりにも弱すぎる。
見落としがちだが、このお話はスマホなど存在しない2000年代が舞台である。そののち力をつけた彼女たちが活躍する現在につながっているという建付けになっている。
そもそもそんな設定にする必要はあったのか?
動機についてだが、たまたま同じ場所に集まった少女たちはもちろん面識もなく、謎のクモ男に襲われるただの被害者だ。将来、力をつけた彼女たちはやがて自分を倒す存在になるという予知夢にさいなまれたクモ男が、いちどきに脅威を排除できるチャンスとばかり襲いかかってきた。
予知夢にさいなまれる?これは、未来予知能力ではないのか。ネタバレになるので結論は避けるが、予知能力が覚醒したマダムウェブが、予知夢にさいなまれるクモ男から少女たちを救うという展開は、トリッキー過ぎて理解に苦しむ。
イントロダクションで描かれるが、実はこの男はウェブの母親の仇だ。
神秘の蜘蛛を手に入れた母親から神秘ごと奪い、命も奪ってしまった男。
それにしてはつながらなさすぎる。クモ男が、のちのマダムウェブをみずから生み出してしまうことを予知する夢は見なかったのか。それは都合良すぎるんじゃない?
予知夢を放っておけば、彼女たちがユナイトすることもなく、のちにスパイダーガールズになる事すらなかった。
拉致同然のやり方で強引に少女たちを連れ去るウェブも、動機が弱すぎる。
安全な場所に少女たちを送り届けておしまいのはずだ。
それぞれがとってつけたように行き場がない偶然や、少女たちを郊外の森に置き去りにして、自宅に戻るウェブ。3人が集団で移動する様子など、いちいち疑問符がつく行動だ。
始めからウェブが少女たちを自宅でかくまっていればこんなややこしい状況は生まれていないのだ。
こんな蜘蛛糸のような弱いストーリーラインを、どうして組み立ててしまったのか。
あたかもスパイダーマンと繋がっていくかのような幻想を抱いていたが、『ヴェノム』同様に、スパイダーマンに由来するキャラクターをスパイダーマン抜きで語ろうとすること自体、どだいムリなことなのだ。
期待は裏切られた。