劇場公開日 2024年5月10日

「おっと今回は本気のリブートのよう」猿の惑星 キングダム クニオさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0おっと今回は本気のリブートのよう

2024年5月20日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

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知的

 あるアンケートにオリジナルの「猿の惑星」1968年 を鑑賞(スクリーンに限らずビデオでも配信でも)済の方の割合が僅か16%だとか。そりゃ半世紀以上前の作品ですからこんな結果も止むを得ないでしょう。けれど、このオリジナルがあってこその以降の続編群なんですから、せめてこの原点だけは押さえて頂きたいものです。あのラストの衝撃こそが人類への警鐘としてモニュメンタルな名作となったわけで。確か、フランスの作家ピエール・ブールの原作では人間と猿の逆転設定が斬新で示唆に富む名作で、映画のラストは脚本のロッド・サーリングの発案だったはず。冷戦の当時を反映し進化論的原作に、奢れる人類の要素を加味した斬新傑作だったのです。

 あれ程に大ヒットした以上、ハリウッドの宿命で続編制作がなされ、ネタ切れ気味もあり、延々と本作で10作目となった次第。当然に出来不出来の波は激しく、主題設定と種明かし済である以上アクションなりの付加価値をどこに据えるかが続編のポイントとなるのは当然。しかし、やはり原点を超える意味合いはついぞ見つけられず仕舞い。「ロード・オブ・ザ・リング」以降、全身センサーによるCG制作が可能となり、当初は特殊メイクを駆使したものが、精巧なVFXに引き継がれたからこその続編制作でもありました。だからこそ、ひときわ本作は猿も自然もCGとなれば、ほとんど「アバター」と同じ次元であり、滝も建造物も鷹さえもCGのコンピュータの中の産物だと思うと、何かしら損した気分にもなりましょう。

 続編と言っても設定は何とでもなり、前作から300年後と謳った本作は、だから従来の続編から断ち切ってのリニューアルの意図があり、それに相応しいプロットが用意された。前半は大衆的なチンパンジーに高圧的なゴリラと理知的なオランウータンとの関係性についてで、ちょいと井の中の蛙的狭い範疇で少々退屈でもある。が、後半は喋る人間の登場で隠された秘密が徐々に明らかにされ。テンションも上がっていきます。当然に本作自体の続編を意識しており、低知能の人間と喋る人間との整合性が語られましょう。

 21世紀も四半世紀近くになっても冷戦構図は変わらぬどころか危機のレベル。人間だって、とんでもない奴等の支配する悪行三昧政権ですら支持する低能者が現に存在し、海の向うでも呆れる犯罪者を再び担ごうとし、独裁国家は増える一方。もう一度愚かな人類が地球を自ら破壊するかもしれず、賢い人類存続のために希望を与えてくれるかも知れません。カギを握るのはチンパンジーのノアなんでしょうね。

 ただ、そうは言っても猿達は殆ど裸であり、装う意味を持ってないようで、なのに王冠を被り権威を見せつける齟齬。なにより股間は一切描かず、なのに人間が僅かな布で一部を覆う不思議。猿が英語を喋る意味すら違和感持つ人も多いでしょう。所詮無理を承知の上での映画ですから、せめてそんな仔細に気を取られることなく、深い考察で描き切って欲しいものです。

 それにしても56年前のタイトルのロゴをそのまんま、本国英語タイトルも、日本のロゴも当時のまんまって、凄いよね。

クニオ
琥珀糖さんのコメント
2024年5月25日

お邪魔します。
文明を持つ猿・・・その説得力はありません。
しかし1968年の猿たちが、髪をセットして
キチンとした正装に英語を話し、弁護士、検事、判事のいる
法廷でチャールストン・ヘストンを裁判にかけますね。
そちらの方が今作以上に違和感を感じます。
1968年にリアルタイムでみた人々は、
驚き新鮮な人類と猿の逆転劇を畏敬をもってみたのでしょうが、
今になって思えば、リアル感が全くなくて、ただ奇想天外さに
驚いただけの気がします。
リプートの3作品、新世紀、創世記、聖戦記の3作品は、
内容が深かったですね。

琥珀糖