「人間とエイプスは共存できるのか?」猿の惑星 キングダム bunmei21さんの映画レビュー(感想・評価)
人間とエイプスは共存できるのか?
1968年にチャールトン・ヘストン主演で公開された最初の『猿の惑星』のラストシーンの衝撃は、幼心にも鮮明に覚えているし、映画史に残るワンシーンとなった。あれから56年の年月が流れる中、シリーズ化もされて、原作をリブートした本シリーズ第4弾となる本作は、前作から300年が経った地球を舞台に描かれている。
人間の文明が栄華を誇った地球上も、今や廃墟となってジャングルと化した。そこには、人間との立場が逆転し、高度な知能と言葉を身に着けたエイプ(類人猿)達が支配をしていた。その中でも、凶暴で傍若無人なゴリラ一族は、地球の新たな支配者としてその頂点に君臨し、キングダムを築こうとしていた。
平和に暮らしていたノアが住むオラウータン一族の村にも、ゴリラ軍団が襲い掛かり、一族が拉致され、族長の父親も殺される。生き残ったノアは、ゴリラ軍団への復讐を誓い、孤軍奮闘していくストーリー。そこに、1人の人間の少女ノヴァが現れて、ノアと行動を共にする中で、その後の物語のキーパーソンとなって、派手なクライマックスのアクション・シーンへと結びついていく。
本作の素晴らしさは、その映像技術にあるだろう。エイブス達の一つ一つの動きや喜怒哀楽がしっかり伝わる表情、廃墟となった建物や都市の背景等、細部に渡るまで手抜きが無く、全編に渡ってCGやVFXを駆使した映像は、流石に一級品のハリウッド映画。低予算でアカデミー賞に輝いた『ゴジラ-1.0』とは、スケールがまた一段も二段も違う、多くの予算と人材をかけた映像に魅了された。
また、エイプのノアが人間少女ノヴァと、一緒に行動していく中で、この時代、人間は家畜以下で、野生動物の様に扱われていたが、その賢さや言葉を喋ることを知り驚く。これまでの常識が覆されたノアが、次第に本当の人間の姿や想いを知り、心が揺れ動いていく様は、ヒューマン・ドラマのようでもある。そして、エイプスと人間のそれぞれの立場から湧き出る葛藤や苦悩を描くことで、違う立場の者をどう理解し合うのか、という現代社会の課題に一石を投じているとも感じた。