「時代を2歩3歩先に進み過ぎた蹉跌の苦」風よ あらしよ 劇場版 カール@山口三さんの映画レビュー(感想・評価)
時代を2歩3歩先に進み過ぎた蹉跌の苦
元始、女性は実に太陽であった。
真正の人であった。
今女性は月である。
他に依って生き、他の光によって輝く病人のような蒼白い顔の月である。
私共は隠されて仕舞った我が太陽を今や取り戻さねばならぬ。
青鞜社創刊から関東大震災までの女性問題だけでなく、
社会問題にまで解放活動が展開され、
同時期にあった福田村事件ように、
二人は国家権力により粛清されて行く…
そんな時代への先駆けであったのか…
それにしてもリスキーなこの環境の中で、
野枝の甘い滑舌の悪い発声が緊張を壊し、
大杉栄の演技での吃音と奇妙に耳障りであったなぁ
しかし、その野枝が女性立場の弱さを大杉栄に諭す場面が幾度もあり、あの大杉栄がその度に実践家として強くなるところが辻潤との相違が、野枝が太陽であるのかも知れない頼もしさよ…
(^O^)
風よ あらしよ 劇場版
大正時代に結婚制度や社会道徳に真正面から異議を申し立てた女性解放運動家・伊藤野枝を描き、
2022年にNHK BS4K・8Kで放送された吉高由里子主演のドラマ「風よ あらしよ」を劇場版としてスクリーン上映。
原作は村山由佳による同名の評伝小説。
福岡の田舎の貧しい家で育った伊藤野枝は、家族を支えるための結婚を断り、単身上京する。
「元始、女性は太陽だった」と宣言し、男尊女卑の風潮が色濃い社会に異を唱えた平塚らいてうに感銘を受けた野枝は、
らいてうらによる女流文学集団・青鞜社に参加。
青鞜社は野枝が中心になり婦人解放を唱えていく。
第一の夫であるダダイスト・辻潤との別れ、
生涯をともにする無政府主義者・大杉栄との出会い、
そして関東大震災による混乱のなかで彼女を襲った悲劇など、
野枝の波乱に満ちた人生を描いていく。
野枝役を吉高、
平塚らいてう役を松下奈緒、
辻潤役を稲垣吾郎、
大杉栄役を永山瑛太がそれぞれ演じる。
演出は吉高主演のNHK朝の連続テレビ小説「花子とアン」も手がけた柳川強。
風よ あらしよ 劇場版
2023/日本
今年9月16日、私は静岡の沓谷にある、野枝と大杉の墓の前にいました。
言うまでもなく、野枝と大杉が惨殺されてから100年目の忌日…たくさんの方々が集まり口々に語っていたのは「100年で一区切りがついた訳ではない」という事でした。
私もそう思います。“伊藤野枝の生と死”を描くこの映画は、単なる歴史劇ではありません。まさに「今」を照射したものだと思うのです。