劇場公開日 2024年6月21日

「90歳の母と観賞」九十歳。何がめでたい 泣き虫オヤジさんの映画レビュー(感想・評価)

5.090歳の母と観賞

2024年6月24日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

笑える

幸せ

この作品はどうしても母に見せたかった。
草笛光子が母と同い年と知ったのは“老後の資金がありません!”の観賞後だった。この作品の彼女があまりにかくしゃくとして素敵だったので、「何歳なんだ?」と調べたら生年が母と同じと知った。そして、2~3か月?前に本作の予告編を観とき、最近はすっかり老いに関する愚痴が増えた母に見せて、草笛光子に元気をもらって欲しいと思ったからだ。

そして、本作だが「小説家・佐藤愛子のエッセイ“九十歳。何がめでたい”、“九十八歳。戦いやまず日は暮れず”を原作にしたコメディードラマ」となっているが、正確に言えば、それらのエッセイを書くに至った経緯と発表後の佐藤愛子の生き様を面白楽しく描いたコメディー。

期待通りに楽しめたし、期待以上に感動した。

【物語】
数々の文学賞を受賞してきた小説家、佐藤愛子(草笛光子)は、88歳で書き終えた小説を最後の作品と決めて断筆宣言。その後はゆっくり、ノンビリ過ごすと決めて気ままな日々を過ごしていた。しかし、人付き合いも減り、思っていたような楽しい暮らしにはならず、鬱々とした気持ちを抱えるようになっていた。

そんなとき、彼女のもとへ編集者の吉川(唐沢寿明)が訪ねてきて、エッセイの執筆を依頼する。愛子は「書かない」とあっさり断るが、諦めずにしつこく何度も訪ねて来る吉川に根負けする。

吉川に背中を押され、彼女が世の中に対して感じる怒りを率直に綴ったエッセイは人々の心をとらえるだけでなく、書くことで彼女自身が生きる張りを取り戻して行く。

【感想】
文学に疎い俺は、佐藤愛子なんて作家は名前さえ知らなかったし、予告編を観たときは“老後の資金がありません!”的な完全なフィクションだと思っていた。観賞直前に原作者の名前を知り、作品冒頭に主人公の住む家の表札に“佐藤愛子”の名前を見つけて初めて、「あ、これ実話ベースなんだ」と気付いた。

実話ベースなのだから当然だが、(コメディーの脚色はされてはいるものの)リアリティーに溢れている。 冒頭、生きる気力を無くしかけている愛子が言いまくる「・・・が痛い」「・・・したくない」「もう嫌だ」、・・・
老いの愚痴の数々は「あれ、さっき母から聞いた気が・・・」。母の隣で思わず笑わずにはいられなかった。逆に、「90まで生きれば皆そうなのか」と愚痴にうんざりしている自分にちょっとだけ反省(笑)

期待通りの溌溂とした草笛光子を堪能し、唐沢寿明の怪演に笑い、そして最後は泣けて来た。2つの意味で痛く感動してしまったのだ。
1つは佐藤愛子のカッコ良さ。昨年100を迎えて未だ健在らしいが、98で“九十八歳。戦いやまず日は暮れず”を出版したとこからすれば、今もそのカッコ良さは続いているのだろう。エンドロールで映される彼女の写真(きっと90歳時のものだろう)の素敵さったらなかった。

もう1つは草笛光子のカッコ良さ。邦画では90歳の主演は初ではないのか?
90歳にして、この元気、この品、この凛々しさ。
ステキ過ぎる!

この2人のカッコ良さに感動し、良く分からないのだが最後は説明のつかない涙が溢れて来た。
死ぬまで、何か自分に課すこと、目標・目的を持って行き続けることの大切さを教えられた。「いいじいさんなんてつまらない、面白いじいさんになれ」という愛子の言葉は胸に響いた。あんなカッコイイ90歳になれるとは思えないけれど、自分も幾つになっても生き生きと生きられる、目標を何か見つけたい。

母も少しでも、この2人から元気をもらってくれてたらいいなと思っている。

泣き虫オヤジ
Mさんのコメント
2024年7月2日

親孝行な息子さんで、お母さんは幸せですね。
私も映画館で、お孫さんと思われる若い方がおばあちゃんを連れて来られているのを見ていて、いいなあ、と思っていました。
親孝行、おばあちゃん孝行ができる映画でしたね。

M