「同じくジェシー・アイゼンバーグの監督作品、『リアル・ペイン 心の旅』と併せて鑑賞するとより味わいが深くなるかも、な一作」僕らの世界が交わるまで yuiさんの映画レビュー(感想・評価)
同じくジェシー・アイゼンバーグの監督作品、『リアル・ペイン 心の旅』と併せて鑑賞するとより味わいが深くなるかも、な一作
もちろん俳優としてもその実力、名声ともに折り紙付きであるジェシー・アイゼンバーグですが、本作と『リアル・ペイン 心の旅』(2025)を立て続けに監督して、映画監督としての実力も(『リアル・ペイン』では脚本家としても)証明して見せました。
本作では、ジギー(フィン・ウルフハード)とその母親エヴリン(ジュリアン・ムーア)が互いの居場所(世界)に閉じこもって、相手の無理解に苛立ち、衝突を繰り返す姿を描いていましたが、それが翌年公開の『リアル・ペイン』でどう変化したのか、その過程を追うと本作に対する感慨が大きく変わってきそうです。
本作でのジギーは、明らかにアイゼンバーグ自身と重なり合うような人物像である上、十代の野心的で無鉄砲な言動は観ていてハラハラもするし楽しめるんだけど、描写の掘り下げが一層深いのはむしろエヴリンの方。自分の活動の「正しさ」を信じて疑わないが故に、ジギーと衝突してしまう様は、観ているこちら側も思わず自分事のように感じてしまうような生々しさがあります。原題の「When You Finish Saving the World」自体が、まずはエヴリンの言動を連想させるものとなっています。
自分の確信が崩れた時のエヴリンの、というかジュリアン・ムーアの、ほとんど表情を変えないんだけど明らかに自分の世界が崩壊したかのような衝撃を受けていることが伝わってくる瞬間の、こちら側と「世界がつながった」感がすごいです。改めてジュリアン・ムーアの演技力を実感しました。
なお、本作と同様に母と息子の物語である『Mommy マミー』(2014)とも観比べてみると、アイゼンバーグとグザヴィエ・ドランの母親像の違いが理解できて興味深いかも。『Mommy』は美しくもなかなか辛い物語だけど…。
