「わたしは“普通”」そして、優子II uzさんの映画レビュー(感想・評価)
わたしは“普通”
オフビートともまた違う、“フラット”な作品だった。
冒頭のほのぼの(?)草野球から“オシゴト”への切り替えは、普通なら音楽か何かで落差を付ける。
しかしこの作品では徹底してそういった演出をしない。
描かれる内容も、シノギや暴力含めてあくまで日常といった雰囲気で進む。
BGMもほとんど使われないし、登場人物たちも起きることを基本ただそういうものとして受け入れる。
(エンコ詰めの時だけは騒いでたが、当人のみ)
これは“特別”を嫌い“普通”と思い込もうとする優子の視点で、故に最後の小さな揺らぎが引き立っていた。
しかしお世辞にも話として纏まってるとは言えない。
主人公は優子のハズなのに、むしろ組員側のエピソードの方が多く、学校生活の描写はかなり稀薄。
しかも設定から想像されるような、父のせいで忌避されたりいじめられていたような様子もない。
上述の“フラット”な感性も手伝って、「親ガチャ」という印象は受けなかった。
これも、終盤の母親との邂逅で噴出する。
父が殺され(借金オヤジと糞ニートに、というのがより哀しい)、ビターエンドかと思えば…
別れた後の母の行動と本心、優子は多分気付いてる。
パンケーキのシーンでも再度地雷を踏んできた母に笑顔が引き攣ってたし、それ故のバイト探しだろう。
更に、詳細は描かれないものの最後はシングルマザーになって幕を閉じる。
歩道橋で終わればよかったのに、なんて思ってたらキャストクレジットで爆笑&ほっこり。
ダメ押しのアレンジver.(歌唱は瀬戸みちるちゃん?)で乱高下した感情のやり場に困ったまま放り出された。
名作とも秀作とも呼べないし、もっと上手く纏められたとも思うが、何故か嫌いじゃない。
主演のフレッシュな佇まいだけでなく、恐さも優しさも表裏一体として見せた組員たちもとても良かった。
確かにみかじめ料もほとんどないでしょうし、田舎ヤクザが野球ばかりじゃ金持ってないですよねw
母親はまあわかりますが、あまりにも娘に対して冷たくて…と感じてしまいました。