あんのことのレビュー・感想・評価
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あんのこと
感想
この映画の話は実話をもとに制作されている。認識がなくこの事実を知り得ていなかったので、この国で、映画の内容のような事が罷り通ってしまったという事に、まず最初に驚嘆した。
この映画のテーマとなっている問題は人間が社会的に生活する上で本当に厳しく重い意味を持つ。
日本人の家族の形態は歴史的に見ても変化し続けていて、50年前には当たり前であった三親等位までが近所に暮らして居る、大家族形態は都市部を中心に激減。さらに人口の地方から都市部への一極集中化による、近所に知り合いのいないひとり親家庭などの新形態による核家族化が、極端に進行している状況である。
現代の日本と日本人はどうなってしまったのか。人間同士の関わり方や、人としての在り方(家族の在り方、子供との関わり方、親からのアタッチメントを含めた幼児期からの妥当性をもった人間道徳教育、制度、政策から考える現状の偏った社会的行政救済システムの強化や見直しなど。)をこの映画の状況のような事案が今後増えると思われるので、詳細に考え直した方が良いという気持ちになった。
日頃からよく思っているのは、人は身勝手で無責任な生き物であるという事だ。
ある一人の女性を救い続けようとしても、救われることの無かった話の中で、誰が加害者で、誰が被害者になるのであろう。
誰が悪人で罪人なのか。悪い事と知って行動する、あんが悪いのか。ネグレクトとDVの母親が悪いのか。それとも多々羅がどうしようもないヤツなのか。それともマスコミの、この問題に対する人に与える影響を考えなかった桐野が悪いのか。
全員が悪いのだ。無知、無関心、無責任、責任転嫁自己中心主義、特に人の無関心がコロナ禍等の悪かった年の流れと重なり、最悪の結末となってしまった。
妥当性を持ち得た分別ある大人の人間が段々と少なくなってきているのかもしれない。
真当な人として、自身に課せられた、あるいは自ら課している社会的責任をどのように果たしていくべきなのか。また人としてどのように社会と関わっているのか。あるいは、どう関わるべきなのかを今一度、人間一人一人が考え直し、問題と感じる場合は時に行動してみる必要があると感じる話であり、自分自身反省し、考えさせられた。
脚本・演出
事実をありのまま、淡々と表現することが出来ていた。無理に感傷的になっていないつくりどころがリアルさを感じて良かった。◎
俳優
杏役河合さんの演技にまず眼力を感じる。浮つかず焦りもない。諦めに近い押しの弱さで、しかし、生きるために最後の力を振り絞って懸命に踠く姿が健気で本当に素晴らしかった。泣いた。演技に感動した。今、最も関心を持って観ている、期待する大好きな実力派女優である。◎
多々羅役の佐藤さん。流石の演技。福田監督作品とは一味も二味も違うアドリブの効いた抑えるところは抑えた難しい役どころを本当に上手く演じていた。素晴らしい。◎
桐野役の稲垣さんも多々羅と反対象な感じの落ち着いた演技で良かった。
⭐️4
彼女はドン底から這い上がろうと頑張った
あんは今もどこかに
つらい。。
壮絶な家庭環境に茫然自失✖️
不遇で哀れな少女ではなく、
不遇で哀れな少女ではなく、人生を立て直したいと懸命に生きた輝くひとつの人生ととらえました。心に残ったのは、苦しい場面よりも、あんの働き学ぶ日々の姿です。何気ない日常に生きる喜びが込められていました。河合優実さんの演技が素晴らしくファンになりました。
事実に基づくがゆえに
やはり後味悪い系な映画でした。
初動評価が良かったので、勇んで見に来てみましたが、やはりというか。。。
・演技良し
・演出も良し
なのですが、事実ゆえか、ところどころ盛り上がりに欠けたり、月末も「うーん」という感じに。
コロナが影響した悲劇の一つなのかなと思いました。
不適切にもほどがある‼️❓
とても辛く、悲しい物語
脳裏に焼きついてた現実
小学生の頃、友人N君の家にあがると、あんの住んでる様な部屋で驚いた事がある。
まあ私の家も決して裕福な家では無かったんですが、えっ?って当時衝撃な印象があった。
そして数人で部屋で遊んで居ると、父親?みたいな人が帰って来て、「お前ら全員外出ろ」って言われ、空き地みたいな所に連れて行かれ、なんとN君を容赦なく殴り続けた。
私たち他の者は、現実で初めて殴り続けられる光景を目にして、次は自分がやられるんじゃないかと気が動転し、全員逃げてしまった。
帰って母にその事を話すと、なんか険しい表情で話を終わらせた。
今思えば母は何かを飲み込んだんだろね。
次の日N君は顔面を張らせながら、普通に学校に来た。
笑顔で話すN君に、みんな怖くて昨日の事も聞けなくて、何も無かった事にした。
学校の先生も触れなかっと思う。
その後N君は引っ越して行った。
映画を観ながらN君の事を思い出して、今どうしてるんだろ?と感じた。
時代が時代とはいえ、これが私たち、いや社会全体が見て見ぬフリをし、これが現実でN君もこれを受け入れてしまってたんだ。。
あぁ、映画と関係ない事書いてしまいましたが、私がこの作品を観て一番感じた事でした。
河合さんすごい表現力ですね、ますますファンになりました。
素晴らしい力作でした。
ここ2.3年で映画を多く観るようになった私は否が応でも河合優実とい...
ここ2.3年で映画を多く観るようになった私は否が応でも河合優実という俳優から逃れられなくなった。昨年なんか観る映画観る映画みんな河合優実が出ていてそしてそのどれもが印象深い演技だった。
実話をもとにしているということもあるのだろうが演じるではなくそこに確かに居るというような存在感を放つ彼女は本当に素晴らしい俳優だと思う。共演者の佐藤二朗も「彼女は僕が10年かけて手に入れたものをもう持っている」というようなことをインタビューで語っていたけれど同意しかない。
その佐藤二朗演じる刑事がこの映画を私に最後まで見せてくれたように思う。今時こんな刑事がいるのかいきなりあんな行動をする刑事がいるのかと。取調室のシーンは不謹慎にもクスッと笑ってしまった。実在の人物をモデルにしているそうだけどどことなくフィクションじみた存在の彼がなんとかこの目をそらしたくなる物語の終わりを私に見せてくれた。
そんな二人を見守る、監視しているのかもわからないが、稲垣吾郎演じる週刊誌記者の役もハマり役だったように思う。ばるぼらもそうだったのだけれどなんかこう文字を書く役が合うように思う。彼が文豪役の映画とか見てみたい。
とにかく演者の演技が誰も彼も素晴らしかった。どの人物からもこの物語を伝えなければという気概を感じた。
その大本は監督の思いからなのだろうか。コロナ禍で知人が亡くなり何があったのかを残しておきたいというようなことをどこかで見た気がする。あの頃家族がコロナになったのが一番大きな出来事くらいで粛々と日常生活を送っていた私には思い至らない世界を見せてくれたこの映画を、やっぱり見に行ってよかったと思う。楽しくはない。救われない。でも救われるばかりだった杏が誰かを救えるようになっていたことが、私にとってはこの物語における唯一の救いだった。自分の知らない世界をまた一つ知ることができたように思う。
ツラいけれど観るべき
とにかくツラい。見通すのも苦しくなるほどに。
しかしこうした生を送った女性がいたということを我々は知るべきだ。社会の一員として。
この映画には数々の問題が含まれている。ネグレクト、DV、児童虐待、売買春、性的搾取、貧困、麻薬、依存症、セーフティネット、報道、そしてなによりもコロナ禍による断絶。
彼女をあそこまで追い詰めたのはコロナ禍なのか、社会なのか… いや、コロナ禍に押し潰されない強度を持った社会を築けなかった我々の責任だろう。
しかしカメラはそうした残酷な状況を描くだけでなく、時に訪れる幸せもきちんと捉える。
シェルターで一人暮らしを始める時に窓から外を眺める表情。日記を万引きしようか考えた挙げ句にヨガマットをプレゼントとして買う瞬間。漢字ドリル。またシャブに戻ってしまったときに「大丈夫だ」と繰り返してくれる人。ハンバーグ。玩具。公園。
それをほんの少しの台詞とともに微細な表情で感じさせる河合優実の演技はまるで本当にそんな子がそこにいるかのように圧倒的だった。複雑な面を持つ役を演じた佐藤二朗も素晴らしい。
とはいえ、冒頭のシーンが再度映されたときの「この時だったのか」という絶望感は衝撃的…
ツラいけれど、絶対に観るべき映画。
忘れられてしまう人々の悲劇
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