「期待通りではあるのだが。シリーズとしてはやや分岐点に差し掛かった感あり。」ベイビーわるきゅーれ ナイスデイズ あんちゃんさんの映画レビュー(感想・評価)
期待通りではあるのだが。シリーズとしてはやや分岐点に差し掛かった感あり。
3年前の「ベビ」の最初の部分でちさととまひろは高校を卒業し、一緒に住んでアルバイトをしながら殺し屋稼業をすることとなった。「2ベビ」を経て本作ではまひろが20歳を迎えることとなる。協会からの評価もまずまずで宮崎まで出張る運びとなった。演じる女優たちも高石あかりさんは仕事の幅がどんどん広がっているし、伊澤彩織さんは「ジョン・ウイック コンセクエンス」で今をときめく真田広之の娘役のスタントを務めるまでになった(娘役のオーディションは受けたが落ちたようだ)ご同慶の至りである(オヤジだね)
本作ではちさととまひろの大暴れは変わらない。ちさとは相変わらずあたり構わずブチ切れ、まひろは可愛くオロオロする。敵役は池松壮亮で前田敦子も出演し、ということで「ベビ」の頃から思えば格段に豪華な布陣だなとつくづく思う。
ただ虚構世界の作り方が生々しくなくなったな、何か凡庸になったなという感想は正直、抱いてしまった。
ベビとジョン・ウィックの差は言うまでもなくその圧倒的な物量差(ヒト・モノ・カネ)にある。
キアヌ・リーブスと、高石と伊澤の体技にそれほどの差があるわけではない。ただ、あちらさんは物量で「主席連合」だ、「コンチネンタルホテル」だ、と豪華な仮想空間を作り上げ、それらとジョン・ウイックを鋭く対峙させることにより華麗で豪奢な物語性を確立した。
「ベビ」にはそんなものはない。仕掛けとして女子2人のグダグダした生活と、切れ味鋭いアクションを並列させる意表をついた見せ方で虚構空間をキャッチーに突き抜けた。全くリアルではないにも関わらず妙に生々しく説得力があるのはひとえにその仕掛けによる。ただ彼女たちの神通力には限界があって、それほど大きな組織は相手にはできない。だから、「ベビ」の敵役はこじんまりとしたヤクザ一家だったし、「2ベビ」は素人っぽい殺し屋兄弟が相手だった。また戦闘場所も室内か、せいぜい廃車置き場ぐらいの狭い空間にとどめている。ところが、本作では、宮崎ローカルの殺し屋集団とはいえ、「団体さんのお着きだあ」(©カリオストロの城)とウンカのごとく湧いて出る多数を屋外で迎え撃つシーンが続く。ここがまず散漫である印象を受けた。そしてクライマックスのちさ・まひと、かえでの死闘はすばらしいと思いたいのだが「ベビ」の最後のまひろとヤクザの死闘と比べると生ぬるい感じがする。
グダグダの部分についても、せっかく宮崎までいったのに2人にもう少し、名物とか食べさせてグダグダさせてやったら良かったのでは。あれほど宮崎牛、宮崎牛って言っていたのに、最後があの居酒屋ではね。
つまり、映画がある程度あたって、お金も使えるようになったのでテコ入れしたことにより、元々のチープ性から来ていた説得力が薄れることになってしまったという状況かと思う。もちろん主演の2人には全く責任はない。
そう、最後に、ひとつ。冒頭部分と最後の部分に登場するメガネの少年はなんですか?何かの隠喩なのかな。だとすればこのシリーズでは全く必要のないものだと思うけど。