劇場公開日 2024年5月3日

「人はなぜ旅に出るのか。旅愁と若き日の恋への想い。主人公が立ち直って新たに進む姿を輝かしく表現したフィルム」青春18×2 君へと続く道 あんちゃんさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0人はなぜ旅に出るのか。旅愁と若き日の恋への想い。主人公が立ち直って新たに進む姿を輝かしく表現したフィルム

2024年5月4日
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旅の映画である。会社を追われ悄然と故郷に戻った36歳のジミー。自分の部屋で取り出したのは昔、好きだった日本人旅行者アミが送ってきた絵葉書。福島県の只見町の雪景色である。世界を回っているはずのアミが故郷から絵葉書を送ってくることがまず奇妙なのだが。絵葉書にはアミの好きだった香水「時の流れ」(ニナ・リッチですね)の香りが残っていたのかもしれない。旅に出ることをジミーは決意する。
まず東京に来たジミー。でもまっすぐ只見を目指さない。鎌倉から松本へ、そして長岡へと大きく迂回する。ここで我々は、彼の目的は旅をすることそのものにあることを理解し、そしてもう一つ、ジミーがアミに会うことは最早叶わないのを予感する。
映画は、旅先で出会う人たちとの交流を丁寧に丁寧に描く。18年前の恋の様相がカットバックされる。「手は握らなかったのですか?」「どうしてその子と別れちゃったの?」甘く切ない記憶が蘇り、同時にジミーの傷がゆっくりゆっくり癒やされていくことがわかる。
最後にジミーは只見に到着する。そしてアミの視点によるシーンが挿入され、彼女の運命が明らかになる。でもジミーはすでにそのことは知っていた。事実を知るために日本に来ていたわけではない。日本での旅を経て、ジミーはそのことを受け入れ、彼女への思いも胸に刻んで、新たな18年(18✕3)を生きていくことを決意したのだと思う。映画は最後、ジミーが新しい事務所を借りるところで終わる。狭く汚いオフィスだが窓から正面に真っすぐ道が続いていく風景が見え、未来が彼を待っているように輝かしく映る。
一箇所、とめどもなく涙が出たところ。長岡の雪の夜のランタンのシーンである。台湾の十分の18年前のランタンのシーンが交互に現れる。ジミーとアミの願いは叶わなかった。でも人々はそれぞれの願いが天に伝わることを祈ってランタンを空に放つ。その痛切な思いが胸に迫った。

あんちゃん
uzさんのコメント
2024年5月14日

返信ありがとうございます。

原題からタイトルを変えた例はあるので、不可能ではないかと。
青春18切符も分かるのですが、内容に対して軽すぎるように感じたので、もう少し抒情的であってほしかったです。
なんせ、そのせいでスルーしそうになったもので。笑

uz
uzさんのコメント
2024年5月14日

アミがランタンに書いた願い事は、本来“叶う”という終わりがないものでした。
ただ、あの約束は恐らく、「また旅ができる身体になったら会いに来よう」という想いだったように感じます。
映像的にも心情的にも、あのシーンが非常に良かったですね。

uz
humさんのコメント
2024年5月5日

コメントありがとうございます。
あのランタンを飛ばしたときのハグにこめらたアミの複雑な思いが胸に沁みます。背中に手をやるジミーのピュアな気持、愛おしかったですね。そのぶんせつなくなるけれど😢

hum