「自分の中に残っているものを再確認することで、目指したいゴールへと向かえるのだと思う」青春18×2 君へと続く道 Dr.Hawkさんの映画レビュー(感想・評価)
自分の中に残っているものを再確認することで、目指したいゴールへと向かえるのだと思う
2024.5.3 一部字幕 MOVIX京都
2024年の日本&台湾合作の映画(123分、G)
原作は賴吉米の小説『『青春18×2 日本慢車流浪記(2014年)』
台湾で出会った女性を思い起こしながら旅を続ける青年を描いた青春映画
監督&脚本は藤井道人
物語は、ゲーム制作会社の取締役会にて、ジミー(シュー・グァンハン)が解任される様子が描かれて始まる
大学時代の親友アーロン(フィガロ・ツェン)と立ち上げた会社だったが、ジミーのやり方に反発する役員たちは彼を排除する道を選んでしまう
その後、アーロンの東京出張に同行し、業務を引き継いだジミーは、そこからあてのない旅を始める
それは、高校3年生の時に出会ったアミ(清原果耶)の故郷である福島県只見市を目指すものだった
だが、ジミーは直接そこへは向かわずに、長野、新潟と回り道をしながら、彼女との日々を思い出していくことになった
高校3年生の夏、ジミーは地元のカラオケ店で働いていて、店長の島田(北村豊晴)はジミーの遅刻癖に辟易していた
バスケ好きのウェイ(リー・クアンイー)、ムードメーカーのスーイー(ジェーン・リオ)、店長の娘シャオティン(バフィー・チェン)らと一緒に働いていたジミー
ある日、彼の元にバックパッカーをしながら台南を訪れたアミがやってきた
アミは財布をなくしたことで働き場所を探していて、島田は彼女の話を聞いて、快く迎え入れることになった
映画は、なんとなくアミの行末がわかるように描かれていて、おそらくは予想通りの着地点に向かうことになる
だが、アミの物語を読み進めるうちに「ジミーがいつそれを知ったのか」が示されていく
そして、その「タイミング」によって、タイトルの本当の意味がわかってくる
18歳の時の出会い、ある日を境に18年間を走り続けることになったジミーは、その区切りの年に「自分の来た道」を振り返ることになる
それと同時に「アミが歩んできた道」を知ることになり、これまでアミが自分に隠してきたことと、隠してきた理由というものが理解できるようになる
なので、2回目を見ると、ジミーの旅の目的とタイミングを知った上で鑑賞することになるので、初回とは感じ方が違って見えると言えるのではないだろうか
いずれにせよ、旅の目的はたくさんあるけれど、「自分を探す」のではなく、「自分を知る」というのは言い得て妙だと思う
ジミーはこれまでの人生において、色んな人から色んな言葉をかけられるのだが、彼の中にその言葉が残っているからこそ、36歳の旅の途中で出会う人々の言葉に反応していく
映画には、視覚(壁画)、聴覚(音楽)、味覚(台湾料理)、嗅覚(香水)によるアミとの日々が想起され、最後に「触覚としての抱擁」というものが描かれていく
だが、そこにもジミーの知らないアミの想いというものが隠されていて、それらを知ることで、彼の青春というものがきちんと終わりを告げることになった
18年という時間をどのように感じるかは人それぞれだが、人生の晩年でないことが、彼にとっての救いであったようにも思えた