「売れに売れてる美人シンガーの旬を体感」テイラー・スウィフト THE ERAS TOUR クニオさんの映画レビュー(感想・評価)
売れに売れてる美人シンガーの旬を体感
コンサートライブ映画なんぞごくまれにしか観ない。音楽中心のドキュメンタリーならともかく、ライブ・ステージそのまんまをIМAXで鑑賞なんて実は初めて。テイラー・スウィフトのファンでもないけれど、本国アメリカで史上空前の人気ぶりは以前より百も承知。グラミー賞を12回も受賞なんて耳をふさいでも入ってくるニュース。そしてコロナ禍で中止していたコンサート・ツアーが遂に全米各地で開催され、異常な人気ぶりが動画SNSで否応なく流れ、目に入ってきた。その高揚が遂に映画として全米公開が大手スタジオを通さずに映画館チェーンのAMCによって決まり、そのチケット販売に前代未聞の巨大セールスを成し遂げたなんてニュースが映画のテリトリーにも侵入。全米ツアーを終え、これから全世界へのツアーに出ると言う。東京は2024年2月7~10日の東京ドームで即完売とか。で、突然日本でも全米公開と同時に上映が決まったなんてニュースが飛び込んだ。なにしろ美人で妙齢33歳の「今」をこの目で確認と相成った次第。
本年8月上旬ロサンゼルスのSoFiスタジアムでの模様をほぼ完全収録。2028年の夏季オリンピックで開会式と閉会式が開催される予定のマックス10万人収容の巨大施設。ステージ配置の都合からそれでも7万人以上の満員の観客席も画面から良く解る。erasのタイトル通り彼女の10代のころからの時代をアルバムごとに代表曲を歌ってゆく、これまでの集大成と言うべき構成。実際には休憩もあったでしょうし、衣装替えの間もあったでしょうが、映画では余分な間はすべてカットし、効率よく曲をつないでゆく。169分間、ほぼ歌いっぱなしなのです。
なにより驚くのはその豪華なステージセットです。アリーナ中央までせり出した巨大ステージは、床面も含め全面ディスプレーとなっており、しかも複雑なリフトも備えられている。曲のタイミングにあわせテイラーもダンサーもリフトも照明もスモークも、総てが完璧に動くのは信じられないレベル。一瞬遅ければリフトから落下は確実なのですから、凄い。さらにその巨大ステージの全周を取り囲む警備員である屈強な男性達が、ズラリとほぼ1~2m間隔で並び観客席に目を光らせるのが手に取るように判る。この意味は、たった一人のスターのためにとんでもないレベルの裏方が働く巨大プロジェクトだと言うこと。客席も含め光の一大ペイジェントで目も耳もこれでもかの勢いです。
それにしても深紅のリップから発せられる歌唱に一切の揺るぎはなく、後半に入っても疲労の欠片も感じさせない、驚異であり、アメリカのショービズの真剣勝負をひしひしと感じさせる。殆どストッキングを露出した「美脚」スタイルで歌い踊り、観客に笑みをふりまく。ダンサーもメインの8名の力量たるや物凄く、人種的配慮も結果的かも知れませんが非の打ちどころなし。ギターなりピアノの弾き語り辺りは何やら彼女自身も楽しんでいるように感ぜられるのですから。
流石に映画です。空中に配した何台ものカメラが驚異のスピードでテイラーを捉え、彼女の表情も克明に判別出来る。あのスタジアムの最上階の席だったらほんの豆粒にしか見えないでしょうが。ヒートする観客のアップも挿入され、ダンサーもプレイヤーもカットイン、全体の様子も的確で、コンサート映像としてベストでしょう。
しかし、正直言って私の知ってる曲は「Shake It Off」のみ、乗りの良い曲ばかりではあるけれど、IMAXの巨大画面と圧倒的爆音で、疲れたのも本音です。多くのお客さんは立ち上がりはしませんでしたが、手を伸ばし上半身をリズムにあわせ半踊り。なのに皆さんの拍手とともに映画が終わって場内明るくなっての静寂にホッとしたのも確かです、なにしろ歳ですのでやむを得ません。でも本当に観てよかったと心底思ってます。
座ってたので尻が痛く、これならスタンディングの方が楽でした、疲れたら座ればいいので。J系は観た事無いので分かりませんが、国内でここまで完成されたショーは観た事がありません。映画と考えても凄い完成度だったと思いました。