アンゼルム “傷ついた世界”の芸術家

劇場公開日:

アンゼルム “傷ついた世界”の芸術家

解説

ドイツの名匠ヴィム・ヴェンダースが、戦後ドイツを代表する芸術家アンゼルム・キーファーの生涯と現在を追ったドキュメンタリー。

ヴェンダース監督と同じ1945年にドイツに生まれたアンゼルム・キーファーは、ナチスや戦争、神話を題材に、絵画、彫刻、建築など多彩な表現で作品を創造してきた。初期の創作活動では、ナチスの暗い歴史から目を背けようとする世論に反してナチス式の敬礼を揶揄する作品をつくるなどタブーに挑み、美術界から反発を受けながらも注目を集めた。71年からはフランスに拠点を移し、藁や生地を素材に歴史や哲学、詩、聖書の世界を創作。作品を通して戦後ドイツと「死」に向き合い、傷ついたものへの鎮魂を捧げ続けている。

ヴェンダース監督が2年の歳月をかけて完成させた本作は、3D&6Kで撮影を行い、絵画や建築が目の前に存在するかのような奥行きのある映像を表現している。アンゼルム・キーファー本人が出演するほか、再現ドラマとして息子ダニエル・キーファーが父の青年期を演じ、幼少期をヴェンダース監督の孫甥(兄弟姉妹の孫にあたる男性)アントン・ベンダースが演じる。

2023年製作/93分/ドイツ
原題または英題:Anselm
配給:アンプラグド
劇場公開日:2024年6月21日

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(C)2023, Road Movies, All rights reserved.

映画レビュー

3.0ドイツの敗戦が生んだ芸術家

2024年12月1日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

知的

難しい

寝られる

ドイツの戦後世代の芸術家を追ったドキュメンタリー+空想の映画。映像で紹介されるその作品も抽象度が高く、解釈しようと考えているとすぐに眠くなる。目が覚めたところで記憶に残ったのは戦後世代を代表する形でナチ式敬礼の写真を作品として発表したくだり。周りの人間たちがそれをなかったことのようにふるまうことへの問題提起ということだったと思うが、ふと思い出したのは太宰治が日本の敗戦直後に日本人が皇居遥拝をしなくなったことを批判していたこと。どちらも自分たちで熱狂し、しかし祭りから覚めた後はそれがなかったかの如く振る舞う人間の愚かしさを指摘しているように思えた。敗戦という傷ついた世界の芸術家ということか。その他、「存在と無」、「存在の耐えられない軽さ」という西洋哲学の単語が頭に残った。ただのドキュメンタリーではなく映画的な映像の美しさがあるところはさすが。

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FormosaMyu

知らぬ所に巨人は佇む

2024年8月25日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 戦後ドイツを代表する芸術家とされるアンゼルム・キーファーの作品と人物をヴィム・ヴェンダースが記録したドキュメンタリーです。
 美術に全く不案内な僕はこんな芸術家が居た事を全く知らなかったし、この映画で描かれるドキュメンタリーとドラマパートの境が分からなくなる事もあったし、これはアンゼルムの作品なのかヴェンダースの演出なのかが混乱もしたし、読み上げられる詩の意味も把握できなかったのですが、彼のどこか荒々しくも強い意志が感じられる巨大作品群の実物を無性に観たくなりました。不思議な魅力です。

 調べてみると、来春、京都二条城で展覧会があるのだとか。行ってみようかな。

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La Strada

3.5キーファーという名は耳にしたことがあった

2024年8月24日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

アンゼルムという名前は知らなかったが、キーファーならば、何度か耳にしたことがあった。戦後のドイツを代表する芸術家で、その作品は、長大・重厚。テーマは深遠、ナチと戦争、神話、生と死。比較的よく知られた作品は、占領ー英雄的シンボル(1969)、マルガレーテ(1981)、内景(1981)、無名の画家へ(1983)、オシリスとイシス(1986-87)他、多数。

キーファーは、1982年、フランスのバルジャックに拠点をおいたが、2008年パリの郊外、クロワシー・ボーブールに移り住んだ。そこは、セーヌ河畔にあったラ・サマリテーヌ百貨店のかつての倉庫で、とてつもなく広く(3,300平米とか)、天井も高い。彼は、少なくとも3 メートルx4メートル以上ある巨大な作品の間を自転車で移動するが、そこは創作の現場であると同時に、彼の作品や素材の保管場所にもなっているようだった。

彼の青年時代は、息子のダニエル・キーファーが演じ、さらに幼少期は、何とヴェンダース監督のてっそん(甥孫)アントン・ヴェンダースだった。特に、アントン坊やは、キーファーと交錯する。ヴェンダース監督が作ったキーファー自身が出てくるドキュメンタリーだが、映画的な要素もあるわけ。

彼の人となりは、20世紀最大の芸術家である(と私が信じる)ピカソと比較すると良いかもしれない。二人とも身体が強く、ピカソは小柄だが、キーファーは(少なくとも79歳の今は)長身痩躯で、健康に恵まれている。キーファーが狭い何もない部屋のベッドに横たわり、幼い時を回想する場面では、毛布が似つかわしくないほどだ。ただ、ピカソの背後には、いつも女性の姿があったが、キーファーの日常に女性の影はない。ピカソは女性と出会う度に、そのスタイルを変えた(change)が、キーファーは変容する(transformation)。つまり、彼の作品には、変わらず、引き継がれてゆくものがある。倉庫の中はその象徴か。テーマは、それだけ重い。

二人とも、ありとあらゆる素材を試しているが、特にキーファーは、鉛と藁を好み、後者の時は、リフトに乗って、バーナーで焼き、助手が放水する。近年は、金箔も用いるようだ(来年、二条城で展覧会を行う背景か)。

ただ、彼は恐ろしいほどの勉強家で、倉庫には、よく整理された図書館がある。今、思い出しても、冒頭出てきた頭部の欠けた白いドレスは、モネの「緑衣の女性」を、ホワイト・キュービックの建築物は黒川紀章のカプセルタワーを、何度も出てくる向日葵はゴッホのそればかりでなく、映画の「ひまわり」で出てきた広大なウクライナのひまわり畑や墓地を思い出させる。何と言っても、映画の最後で出てくる構図は、キーファーとヴェンダースの心の中に、ドイツ人の故郷とも言えるC.D.フリードリヒが住み着いていることを思わせる。

私が一番見たいのは、10歳代のキーファーが奨学金をもらって、ゴッホの歩みの跡を辿った時に描いたと言われる300枚の絵。そこには彼の全てがあると思うから。来年の展覧会では、観ることは叶わぬだろうけれど。

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詠み人知らず

4.0さっぱり理解できない作品

Mさん
2024年8月15日
Androidアプリから投稿

に対して、「なんだこの映画!」とか、ひどい時には、それを撮った監督に嫌悪感を感じてしまうこともある。
さっぱり理解できない作品なのに、嫌いになれないこともある。
この作品は後者。
とはいえ、「5」はつけられませんでした。
ただ、とんでもなく大きなアトリエ(工場?)や展示場(巨大な公園??)は圧巻でした。

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M

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