「学校の全体主義を我々は普通だと思っている」小学校 それは小さな社会 abukumさんの映画レビュー(感想・評価)
学校の全体主義を我々は普通だと思っている
とても丁寧なドキュメンタリーでした。落ち着いてじっくり撮っているし、努力して信頼を勝ち得て子どもの生活に入り込み撮影してきたことがわかります。教師たちの振る舞いも自然です。ナレーションは少なく意図的に演出されたものではないと感じました。
それだけに、良くも悪くも「日本人の作り方(原題)」が見事に映し出されたドキュメントとなっています。日本の公教育の実像です。これは監督の勝利でしょう。
我々日本人は「当たり前」のことと捉えがちな子ども達の規律ある生活ぶりですが、欧米人の観客等が見たら驚異かもしれない。フィンランド教育界で話題になり、視察の話が出たとNHKニュースが誇らしげに報じていたのです。しかし、日本の教育はこのままで良いのだろうか?良い面はあるけれど、このままではいけないのでは?と気づかされた作品でもあります。
日本の学校現場は、教師の方向づけに対して、子どもたちが素直に(楽な子もいれば、かなりしんどい子もいるはず)努力するよう、上手く条件づけられていることがわかります。
「誰かが遅れたとき、先生は気持ちが一つになっていないなあというふうに思う」これは映画の中で聞いた先生のセリフだけど、よく考えると異常な精神構造です。
小さな時から全体の顔色を伺う。「いじめ」は減らないように仕組まれている。
全体主義の社会を作るうえでは、とても上手い条件づけですが、これほど多様化し情報が氾濫した現代社会では、やはり少し異常です。そして、我々はまだほとんど、その異常さを自覚していなかったのだと、気づかされた映画でした。
よく撮れたドキュメンタリー映画だと思います。山崎監督の意図に悪意はなく、素直に「これが日本の教育の現状なんです」と差し出してくれたのです。ありがとう。