「【”規律と責任を教える小さな社会。”今作は、コロナ禍の中で学ぶ小学生達と、彼らに真摯な姿勢で様々な事を教える教師達の姿から学ぶこと多き、且つ涙腺が緩むドキュメンタリー映画の逸品である。】」小学校 それは小さな社会 NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【”規律と責任を教える小さな社会。”今作は、コロナ禍の中で学ぶ小学生達と、彼らに真摯な姿勢で様々な事を教える教師達の姿から学ぶこと多き、且つ涙腺が緩むドキュメンタリー映画の逸品である。】
ー 今作はコロナ禍の中、ある小学校の一年生と六年生と彼らを教える教師たちの一年間を追った一切ナレーション無き、ドキュメンタリー作品である。-
■今作では、一年生では小さな可愛い男の子と女の子、六年生では放送係の男の子と教師たちに焦点が当てられているが、基本的には小学校の行事を含めた全体が映されている。
そして、個人的には一切ナレーションが入っていない事が、奏功していると思った作品でもある。
◆感想
・4月。初々しい小学一年生が入学して来る。希望と不安をないまぜにした表情で教室で、初めて先生に名前を呼ばれ、”ハイ!”と元気よく返事する男の子や、小さな声で恥ずかしそうに答える子もいる。
だが、彼らを新六年生が、しっかりと面倒を見て上げるのである。
・今作では授業風景よりも”特別活動”に焦点を当てている。
1.教室内の清掃
2.給食の配膳
3.各係を決めるシーン
4.下駄箱への靴の入れ方のチェック
5.校内放送
6.運動会の予行演習
7.新一年生を迎えるための演奏隊のメンバー決めからの演奏シーン etc.
・2.給食の配膳
一年生が配膳をする中で、後ろを男の子が走ったためにおかずの入ったお皿を割ってしまうシーン。ここでも、しょげる生徒達に女の先生は優しく”配膳をしている時は気を付けようね。”と告げるのである。声は、決して荒げない。
・3.各係を決めるシーン
男の子が図書係を希望するも、級友達の投票で成れずにべそをかいている所に、選ばれた優しき女の子が来て係を譲ってあげるシーン。
女の先生は男の子に優しく”しっかりやろうね。”と声を掛けて上げるのである。彼はこの出来事で人の優しさと、”自分に与えられた責任を果たさなければ。”と思ったことだろう。
・4.下駄箱への靴の入れ方のチェック
風紀委員らしい子供達が、靴の入れ方をチェックする。このシーンは個人的には余り好きではない。そして校長先生が先生方に言う言葉。”任せるという事は、両刃の刃です・・。”
・5.校内放送
六年生の放送係の男の子と女の子が二人だけで、朝の放送をするシーン。とてもしっかりしているし、二人とも相手を信頼している。先生は一切映らない。全てを任されている事が分かる。
・6.運動会の予行演習
六年生の放送係の男の子が団体演技の練習中に、何度も縄跳びが引っかかってしまう。すると彼は自宅で縄跳びの練習を頑張って独りでするのである。
そして、本番では彼はミスなく演技を終えるのである。責任感の強い男の子なんだなあ。
■沁みたシーン幾つか
1.新一年生を迎えるための演奏隊のメンバー決めから演奏シーン
一人の女の子が大太鼓を希望するも、先生に指名されずにべそをかくがシンバルに選ばれて大喜び。だが、彼女は練習の時に何度も叩くタイミングを間違えて、男の先生からキビシク注意される。”選ばれて終わりではないよ。練習はしましたか?”彼女は何も答えられずにボロボロと服が濡れる程に涙を流すのである。観ていて”もう、許してあげて”と思うが、男の先生の叱り方は、感情的ではなく言葉遣いも丁寧である。
基本的に、この学校の先生たちは厳しいが、言葉遣いは丁寧であり、決して感情的にはならない。とても大切な事である。子供は先生のそういう部分には、敏感だろうし女の子も先生の指摘が合っているから、黙って大粒の涙を流すのだろう。
だが、そんな女の子には、女の先生が”間違えたら、先生も一緒に叱られてあげるから・・。”と言って、尻込みしていた女の子を練習場に出して上げるのである。
そして、本番。女の子はミスなく演奏を終えると、男の先生はキチンとそれを観ていて、優しい言葉で褒めてあげるのである。女の子の誇らしげで嬉しそうな顔。彼女も又、成長したんだよね。
2.男性教師二人の姿
1)一人の坊主頭の先生は、厳しい。けれども劇中で彼自身も”厳しいのは分かっているけれども、あの子たちの事を考えると、厳しく言ってしまうんですよ。”と言いながら何か悩んでいる様子である。因みにこの先生はいつも朝早く一番に学校に来て、職員室で朝ご飯を食べている。真面目な先生なんだろうなあ。
そして、彼は六年生の卒業式の時の挨拶で”中学校に行ったら、もっと色んな事が有るだろうけれども、ブレないで下さい。”と立派な挨拶をするのである。だが、全てが終わって皆がいる職員室で、皆の前で”悩んでいたんです。もう辞めようかな、と・・。けれども辞めなくて良かったです。”と涙を流すのである。このシーンは沁みたなあ。矢張り良い先生である。そして、この先生は新学期に三年生の担任として紹介されるのだが、その顔は自信に満ちているのである。
ー 先生自身も生徒達と真剣に向き合い、一年間教え切った事で、成長するんだなあ。-
2)もう一人のイケメン先生。卒業式の練習の時に生徒達が喋っていた時に、真剣に怒るのである。だが、この先生は卒業式の生徒への挨拶の時に、涙が込み上げて、最初は声が出ないのである。だが、涙を堪えて言った”先生は、皆が好きだから怒ったんだよ・・。”と言う言葉も沁みたなあ。
当然、生徒達は誰一人無駄口を叩くことなく、先生の顔をしっかりと見ているのである。
■そして、季節は巡って、桜咲く四月。
新一年生だった男の子の表情は、あどけなさを残すも、一年前の幼さはない。しっかりとしたお兄さんの顔をしているのである。
それは、他の新2年生も同じなのである。
<今作はコロナ禍の中で学ぶ小学生達と、彼らに真摯な姿勢で様々な事を教える教師達の姿から学ぶこと多き、且つ数々のシーンで涙腺が緩むドキュメンタリー映画の逸品なのである。>