「日本との差異については触れて欲しかったところ。本作品だけを見ても理解は難しい」ダム・マネー ウォール街を狙え! yukispicaさんの映画レビュー(感想・評価)
日本との差異については触れて欲しかったところ。本作品だけを見ても理解は難しい
今年50本目(合計1,142本目/今月(2024年2月度)3本目)。
(ひとつ前の作品「ジャンヌ・デュ・バリー 国王最期の愛人」、次の作品「ザ・ガーディアン 守護者」)
かなり本格的な作品という印象です。
おそらく、普段から投資投機やFX、オプション取引等に触れている方はわかりやすいのだろうと思いますが、日本ではコロナ事情のこの映画の時期においてもそれらは常識扱いではなかったし(今でもない)、日本とは根本的な差異があります。
映画自体は実話ものなのでそれを変えるような描写はできずかなり淡々と進んでいくタイプです。ドキュメンタリー映画というに等しく殴り合いだのと言ったシーンはまず見られないところです。
ただその分、当該アメリカの投資事情というような特殊な知識がないと何が何だかよくわからなくなる上、投資の考え方それ自体は日本にも存在しますが、法規制ほかが根本的に異なるため、日本の知識をそのまま当てはめると理解自体が逆に混乱する部分もあり、ある程度字幕は丁寧にして欲しかった…というところです。
何の知識もなく見ても「何とか理解できるかな」程度で、おそらく求められている知識は投資投機、FX、デリバティブ取引といった高度な金融商品知識で、これらまで求めるのはさすがに酷じゃなかろうか…という気がします(字幕側で何らか対応が欲しかったです)。
ただ、「数字を追いかける」という範囲であるなら見やすい映画だし、ドキュメンタリー映画に分類「されうる」以上はダミー描写ほかもないので見やすい映画です。
評価は以下まで考慮しています。
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(減点0.3/字幕が不親切、日本との差異について触れて欲しかった)
・ この手の映画でもあまりに語彙レベルが高くなると補助字幕がつくこともありますが本映画では見当たらず。普段から投資やFXほかに触れていれば可能なのでしょうが、一般的な理解では数値を追いかけてみる程度しかできず、法律系資格持ちでもこの映画の述べるところは「アメリカの」商法会社法ほかといった事項なので類推するのも無理で、(理解の観点で)力尽きる方が多いのではなかろうか…という気がします。
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(減点なし/参考/この映画の述べるところと日本との差異)
この映画で描かれている「株」のように、(匿名)掲示板やSNSほかで情報のやり取りが行われ売買もそれがメインになるような株を「ミーム株」といいます。本作品で描かれている事象がもとにつけられた名称ですが、アメリカでは2024年時点でもそれに該当しうるとされる株はいくつかあります(超ドマイナーな会社の株でお買い得なものが該当する)。
この観点では日本でも同じような理解が成り立ちそうな気がしますが、日本においては、
・ 株の売買が(匿名)掲示板、SNSほかで主にされるという株がおよそ存在しない(日本にはそのような文化が存在しない)
・ 100株単位での売買が普通なので(つみたてNISAほかで生じる端数株除く)、映画のような売買はしにくい
・ また、アメリカでは日々の株の値動きに制限がないが、日本には存在する(ストップ高・ストップ安)
・ そのうえで、一般的に株を買うようなサイトでは手数料を取られるので、映画のように儲けること自体が(これら諸事情のもとでは)難しい
・ また、売買アプリ自体についても日本では射幸心をあおるようなものは規制されうる
…という根本的な差異が存在するため、「日本では」およそ発生しない類型であるところ、これらの知識は全て中学社会(公民)の範囲ではあるものの、この差は触れておいて欲しかったです(日本では戦後の混乱期を除けばこういったことは見られない)。
※ なお、映画内で描かれる売買アプリで購入売却時に「お祝い」のように描写されるものは、本国アメリカにおいても「売買そのものに射幸心をあおるような描写はどうなのか」という議論が付随的に問題になり、これらの「無関係な」射幸心をあおる描写は自粛されるようになっています。