「リアリティラインの引き方」ロボット・ドリームズ 蛇足軒妖瀬布さんの映画レビュー(感想・評価)
リアリティラインの引き方
実に巧みな技術によって観客を魅了するアニメーション作品である。
その巧みさの要因のひとつは、
リアリティラインの引き方にある。
サッカーのオフサイドラインが、
状況に応じてチームで上げ下げするように、
本作では、それぞれのシーンにおいて、
リアリティのラインが緻密に調整されている。
どういうことか。
キャラクターの芝居、表情、動き、
そして美術、小道具、音楽に至るまで、
あらゆる要素がリアリティラインを形成する。
例えば、
ドッグや他の動物の眉骨や、
ロボットの眼球の細やかな表現、
隣人のハト、ボーリングの玉、
ガードマンのキャラ、スクラップ屋のボスの葉巻、
ビーチ監視員の笛の音、
フィリップ・ベイリーとモーリス・ホワイトの澄んだ声、
など、具体的な描写は書ききれない。
これらの要素は、単に現実世界を模倣するのではなく、
物語の状況やキャラクターの感情に合わせて、
絶妙なバランスで配置されている。
例えば、コミカルなシーンでは、
やや誇張されたダンスなどの表現を用いて笑いを誘い、
切ないシーンでは、抑制された表現で観客心に深く訴えかける。
このような緻密な調整の結果、
観客はいつの間にか物語の世界に引き込まれ、
キャラクターの感情に共感する。
まるで、
ボーヴォワールの、
孤独からパートナーサルトルとの回想録のような誘いがあり、
ハンナ・バーベラ作品のような、
どこか懐かしく、
しなやかな笑いをも誘う巧みな技術。
それはリアリティの魅せ方によるところが大きい。
本作のリアリティラインは、
決して最初から完成されたものではないような気がする。
ツインタワーをみせるかどうか、
みせるなら、
解像度はどれくらいが妥当か、
様々な要素のバランスを何度もチームで試行錯誤し、
観客の心に最も響く表現を探求した結果、生まれたものではないだろうか。
単に技術的な完成度が高いからだけではなく、
観客の感情に寄り添い、
共感を得ようとするこのチームの真摯な姿勢が伝わってくるのも要因のひとつだろう。
【蛇足】
domo arigato、MR.ROBOT、
コニーアイランドで、ロボットといえばミスターロボット。
「MR.ROBOT」はシーズン1、2共に、高い期待度にも関わらず、
ラミ・マレックとクリスチャン・スレーターが父子なのか、
ロボットなのか、データなのか、、、
だんだんと興味は薄れていった。
観覧車、ビーチ、遊技場の出店、
同じコニーアイランドで懐かしいロケーションだった。