「想像しながら観ると楽しい傑作」ロボット・ドリームズ コージィ日本犬さんの映画レビュー(感想・評価)
想像しながら観ると楽しい傑作
アニメーションとして傑作の類。
動き、表情、音楽で全て伝わってきた。
前半は犬[ドック]のダメさ加減へのいらだちが強く。
後半は、泣けるというよりは、ほろ苦い青春の一頁だよね、みたいなしんみりした気持ちになりました。
動物やロボットは「誰か」の代替表現かなと。
犬の自己肯定感のない孤独な青年という風体。
あまりのコミュニケーション能力のなさ、交渉力のなさ、いじめられやすい性格など…
勝手な想像だが、犬は若い頃の監督(か叉は原作者)自身かもしれない。
そしてその主人公の犬とロボットの関係性が、友達というよりは依存先であり、友人以上恋人未満の異性とに似ていて。
自分のせいで別れた恋人同然に付き合ってた友人との思い出を、キャラに託していたような。
海で錆びて動けなくなったロボットと離ればなれになるというのは、犬(男)の行動が原因で、ロボ(彼女)となんらかのディスコミュニケーションとなり、疎遠になってしまったことの比喩なんじゃないかと。
「きっとこの日まで待てば、ぎくしゃくが解消するはず」という希望的観測をしている間に、彼女は他の人と生きる道を選んでしまい、捨てられたようになってしまった…
そんな切なさに似てたんですよね。
また、たびたび画面に現れる、のちに失われたツインタワービルの姿。
何かが失われるたびにかかる曲が「September」で、911を想起させ、「失われた在りし日のニューヨーク」への鎮魂という意味合いも重ねていたかもしれません。
セリフが一切ないので、的外れかもしれないけれども、そんな風に想像しながら観るのが楽しかったです。
逆に言えば、こんな風に観ながらフルに想像力の翼を広げ、脳を活性化する必要があり、表層を撫でるように見ただけではよくわからない作品なんじゃないかと思いました。