「もしも友達が難病になってしまったら」ロボット・ドリームズ おきらくさんの映画レビュー(感想・評価)
もしも友達が難病になってしまったら
冒頭、部屋で一人、黙々と死んだ目でゲームをプレイするドッグ。
腹が減ったら、わびしく孤食。
チラッと目にしたカップルに対して、羨望の眼差し。
まるでいつもの自分を見ているようで、映画が始まって数分で胸が苦しくなった。
世界観は『ズートピア』+『デトロイト ビカム ヒューマン』。
ロボットは持ち主によって「親友」になることもあれば、「奴隷」として扱われることもありそう。
横を通る車の中で虐待されているロボットの、訴えかけてくる表情が心に残った。
ロボットと友達になり、幸せを手に入れたドッグ。
ところが、遊びに行った海水浴場でロボットが故障。
重すぎて運べず、泣く泣くロボットを海水浴場に放置したまま帰宅するドッグ。
そのまま海水浴場は閉鎖。
会えなくなる二人。
この後、『ロボット・ドリームズ』の意味を理解して戦慄。
夢の中では自由の身、夢から覚めたら残酷な現実。
最近でいえば『ジョーカー フォリ・ア・ドゥ』、昔でいえば『ダンサー・イン・ザ・ダーク』みたいな演出。
こういうのに弱い人間なので、ここら辺から話に一気に引き込まれてしまった。
ロボットが故障する場面を見て、昔、入院中に感染症になり、全身麻痺みたいになった時のことを思い出した。
首から上しか動かせないロボットの姿が、あの頃の自分そっくり。
「周りからされるがまま」な感じも、身に覚えがありすぎる。
お見舞いに来る人間がいなくて(友達がゼロだから仕方ないけど)、毎日孤独との戦い。
世間話する相手がいないまま数ヶ月が経った結果、だんだんとノイローゼ気味になり、病室に一人でいると勝手に涙が溢れ出てしまう体質になり、ずっとひっそりとメソメソ泣いていた、そんな日々だった。
海水浴場でずっと一人ぼっちのロボットを見ていて、闘病で辛かった時期の記憶が蘇ってしまい、映画を観ながら目からオイルが止まらなくなってしまった。
こんな中盤の場面で号泣している人間は、たぶん世界中で自分だけかも。
一方その頃、ドッグの方はロボットがいなくてもわりと平気なようで、活発にアウトドアに励む姿に困惑。
一人でスキーに行くなんて、ソロ活としては上級者。
ハロウィンで頑張って子供たちを驚かせようと奮闘するドッグ、それに対し「そういうのいいから早く出すもの出して」と言いたげな表情の子供たちの冷め切った表情が印象的。
冷蔵庫に貼られたロボットに関するメモが、存在感を失っていく演出が切ない。
後半のロボットを見て、「移植」のことを思い出した。
終盤は音楽の雰囲気も相まって、『ラ・ラ・ランド』のラストみたいで苦かった。
しょうもない余談。
映画を観終わった帰り道。
回想しながら田舎道を歩いていたら、感情がぶり返してきて、涙が溢れ出す始末。
そんな中、普段は来ない映画館だったため、途中で道に迷ってしまいあたふたしていたところ、畑にいたおじさんから突然「あんた大丈夫?本当に大丈夫?」と声をかけられてしまった。
全力で「大丈夫です!」と言って、一目散にその場を立ち去る。
道に迷って泣いている人に見えたのかな?
今思うと恥ずかしい。