若き見知らぬ者たちのレビュー・感想・評価
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生と死の境界
主人公と周辺の人間の執拗な対称性の提示によって
生と死の境界がいかに薄いもの(常に頭に銃口を向けられている状態)であること、
また、ときに軽い気持ち、ときに正義のつもりの行為が、
見知らぬ他人のその境界を意図せずに簡単に超えさせてしまうことがある
恐ろしさを描いているようだ。
後半の圧巻の長尺の格闘シーンは、
命を燃やす生の象徴と同時に生きぬくことの困難さを表しているようでもある。
最後まで前半の理不尽さや辛さを解消するための、後悔の念の吐露や復讐もなく、
さらに全般に演者の感情表現が抑制され、
なぜ主張しないのかと、ときに憤懣やるかたない気持ちになり、
結果、ただ目の前の事を受けとめ、想いをはせることから
この故人の転生、遺志を継承する物語に一縷の希望を見出そうとするのはやっぱり辛いが、
それが容赦のない多くの現実なのかもしれない。
カタルシスを得ることができず、
心に打ち込まれた黒い釘が抜けないまま劇場を去らなければならないが、
その楔が鑑賞後もいろいろ考えさせられる余韻になっているし、
本当に挑戦的な(おそらく不満や批判も覚悟している)すばらしい映画だと思った。
花火
脳に障害を抱えて認知症状態の母親の介護をしつつ、昼夜働き両親の借金を返す青年と、世界がみえてきた格闘家の弟の話。
父親は亡くなり母親は何をするかわからないという状況にありながら、昼は土方のバイトをし夜は両親の経営していたカラオケスナックで働く兄貴。
超献身的な彼女や友人には恵まれているけれど、弟もあてにならないし…。
そんな主人公に起きるめんどくさいことの連続で、方法はあるだろうにと感じつつも、やり切れなさと胸糞悪さが堪らない。
警察のそんなアホな判断あるか?からの成り行きとか、目撃者もいるだろうにそんな下っ端がそんなことできる訳?とか、足取り追って店にも行かない?and more…今の時代警察があてにならなくてもいくらでもやり方はありますよね。
そんな感じで雲行きが怪しくなって、終盤は弟メインだけれど、すいません今更何も感じないんだが。
もうちょい蛮行を控えめにしたり、弟を早くから掘り下げたりしていれば、もっともっと面白くなりそうなのにともったいなさを感じた。
24-106
見過ごされた人たち、見過ごされてる人たち
父親の借金を返済しながら難病の母親を自宅で介護する男性が閉塞感や理不尽な暴力に晒される様を描いている作品。
展開に憤りや疑問を感じる場面もあるし、咀嚼するのに時間がかかる作品でもあると思います。
絶望を生きる彩人の生活はとても閉塞的で苦しいです。なので彼女である日向の存在は希望のようで、親友である大和も心強い存在でした。
「あらゆる暴力から自分の範囲を守る」という亡き父親の言葉を胸に格闘技を続ける弟・壮平も人生に屈せず前を向いていて、救われました。
公開記念舞台挨拶有りの回だったのですが、内山監督ご自身もヤングケアラーで体験や感じたことを今作に反映させたそうです。「この映画に出会ってくれてありがとうございます」と話して、会場を去る際は深々と少し長めにお辞儀をしてました。
「佐々木〜」も好きな作品なので、次回作も楽しみにしています✊!
不器用
彼が生きられたのはなぜか
「悲しい」というのが最初に出た感想です。どう感想を伝えればいいのか、なかなか言葉が見つからず、見終えた後しばらく主人公である彩人に思いを馳せていました。
「何が彼を殺したのか」と作品のキャッチコピーにある通り、不条理や無念さが激しく胸に迫ってきます。しかし、こんな息をするだけで苦しいような日々の中で、それでも彼が生きられたのはなぜかとも思いました。
その答えかはわかりませんが、夢を追う弟である壮平が勝利し、母も亡き父も、恋人である日向も喜んでくれる。それでしか埋められないものがあり、そのために彼は生きて、生きながら自分を殺していたのかもしれないと感じました。また、終盤にある日向と母とのシーンには微かな希望を感じられました。
磯村勇斗さん、メッセージ性が強い作品への出演が多いですね。この作品でも演じる中にすごく優しさ、強さ、人間性を感じました。また、岸井さん、福山さん、染谷さん、霧島さんはじめキャストの皆さん、素晴らしかったです。
男性の生きづらさ?
【前半の救いのない展開が、観ていて辛いです。後半の展開にやや救われた気がするが、気になるシーンも幾つかあるし、心理的にキツカッタ作品です。】
■死んだ父(豊原功補)の300万の借金を抱え、脳の病気のために行動がオカシイ母(霧島レイカ)の面倒を見るアヤト(磯村勇斗)。
一方、弟のソウヘイ(福山翔太)は、総合格闘技の世界チャンピオンを狙う日々。
アヤトは睡眠一時間で工場勤めをしながら、父の遺したスナックを守ろうとし、恋人(岸井ゆきの)や親友(染谷将太)が手助けするも、警察の杜撰すぎる職務質問により、命を落とす。
◆感想
・今作の前半が、観ていて心理的に辛すぎる。又、夢想なのだろうが、前半と後半に一回づつ描かれる拳銃発砲シーンの意図も分かるようで、分かりにくい。
・今作は内山拓也監督のオリジナル脚本のようだ。それは尊重するが、余りにも息苦しい展開が続くと、観ていて疲弊する。
<所謂、兄弟の間の悲惨さと栄光を描こうとしたのだろうが、ソウヘイの栄光も短カットで終わるし、その後の希望ある展開が見えない、と言うか無理がある気がする。
私は、映画製作者の方々の大変さを想い、出来るだけ見た映画の良い点にフォーカスし、レビューするように心掛けているが、今作は上手く書けなかった。
何だか、申し訳ない。>
内山拓也監督と俳優陣•スタッフの皆様、良かったです!
レビューで、暗いという投稿を見て、見に行くかどうか迷ったのですが、見に行って本当に良かったです。
重い部分はありましたが、見た後まで、どんよりとするなんてことは、ありませんでした。
2時間、飽くことなく、見応えのある映画でした。
まさに名もなき若者、借金、病んだ親の世話•介護を背負い、理不尽な世間の仕打ちに巻き込まれた若者の話ですね。
可視化されない人々の苦しみ、重荷、問題解決能力を持たない、持つ気力さえ失った人間を描いたものと思いました。
限界に達したなかでも、主人公の彩人の母への愛、それを受け継いだ恋人の日向には、人としての素晴らしさを感じました。
しごく勝手な解釈ですが、彩人がなぜ、お母さんを病院に入院させず家で世話していたのか。それは、今の日本の精神科医療が貧困で監獄に送るようなもの、そんな場所に母を入れられないという、深い愛情からだったのではと想像していました。
表面化されない苦しみにあえぐ人たちを救うための対策を行政がもっと立てて、相談できる場所作りをしなければならないし、我々の意識変革、温かい目を持つことも重要と思いました。
見終わった後、重さで鬱々することなどなく、むしろ、こういう映画を制作できる内山監督が存在することに嬉しくなってしまいました。今後も頑張っていただきたいです!
日本の俳優陣の質の高さも感じることもできました。各役者さんの思いのこもった演技も見応えがありました。
なお、私は女性ですが、問題なく見れましたよ。暴力シーンもありましたが、えぐさで見るに耐えないとは感じませんでした。
注意: べた褒めになってしまいましたが、私は映画関係者でも、インフルエンサーでもありません。
初めてレビュー投稿するので、皆さんみたいに気の利いたレビューは書けませんが、映画素人の素直な感想です。
製作意図…
警察官の悲しき終末
かなり複座で難しい
不可解、不愉快なことばかり
不可解な殺人に、不可解な殺害幻想が警告なのか?
何故背後から拳銃や自動車で、何度も何度も何人も繰り返し殺害映像を幻影を映し出すのか?
殺人がそんなに日常的にあるとは思えないのだけれど、どうだろう。
そんなことより、このストーリーが不可解だらけだ。それを手段にしては困るのだけれど…
どの様に父親は死んだのか
父親の退職金は何故何時受領したのか
父親は元警察官なのか、犯罪者なのか
障害年金とは誰の何の障碍なのか
父親の借金は何時、何に使ったのか
父親は何故そんなに暴力を嫌い身を守るためにK1を息子に教えるのか
母親の難病の原因はなのか
母親の難病はいつから発病したのか
母親はなぜそれなりの施設に収容されないのか
母親は公的福祉をなぜ給付を受けていないのか
母親は何歳なのか
母親は車の運転が出来るのか
彩人は父親の死亡現場で何を見たのか。
これ以上は省略するが、その他いくらでも説明不足がある。
不明確な不可解なことばかりが噴出する。
それがこの映画の主旨なのかも知れない。
状況省略劇か?
最後にご時世で、あれだけの暴力事件が街頭カメラに収まっていない訳がないし、
目撃者や騒音を聞いていない人がない訳がない。
自然死で終わる訳がない。
そして、2台のパトカーが出れば、ケガ人のために救急車を出動要請するのが常套なので、これまあり得ない場面だらけ。
なんだか不自然で、結論や感想を抽出するにはこれでは至らないなぁ
ましてや、出したらダメでしょう…
そう、無関心社会に蔓延る不条理放置社会の警句か?
困ったものだ。
( ̄∀ ̄)
若き見知らぬ者たち
劇場公開日:2024年10月11日 119分
「佐々木、イン、マイマイン」が評判を集めた内山拓也監督が日本、フランス、韓国、香港合作で手がけた商業長編デビュー作。
亡くなった父の借金を返済し、難病を患う母の介護をしながら、昼は工事現場、夜は両親が開いたカラオケバーで働く風間彩人。
父の背を追って始めた総合格闘技の選手となった弟の壮平も、借金返済と介護を担いながら、練習に明け暮れる日々を送っている。
そんな息の詰まるような日常のなかでも、恋人である日向との小さな幸せを掴みたいという思いが、彩人のかすかな希望だった。
しかし、彩人の親友である大和の結婚を祝う幸せな宴会が開かれた夜、思いもよらない暴力によって、彼らのささやかな日常がもろくも奪われてしまう。
彩人役を磯村勇斗、日向役を岸井ゆきの、壮平役を福山翔大、大和役を染谷将太がそれぞれ演じるほか、霧島れいか、滝藤賢一、豊原功補らが脇を固める。
若き見知らぬ者たち
字幕メガネマーク 音声ガイドマーク
劇場公開日:2024年10月11日 119分
絶望の中にも一筋の光
こんなに絶望的な映画はなかなか類を見ないと感じました。
前半と後半で主人公が変わります。
前半:彩人
後半:壮平
とにかく前半はもう絶望しか感じられず、気持ちもヘビーになり落ち込みました。
一方、後半は一筋の光が見えるような展開、ラストです。
生きるということを真摯に描いた作品であると同時に、
死についても真摯に描いていると思います。
また、彩人の病気になった母親への深い愛情には心を打たれましたし、
自分はあそこまで家族を愛せるか?を突きつけられたような気持ちになりました。
本作を観て何を思うか・感じるかは人それぞれだと思いますが、
私にとって、物語をなぞるというよりは、死生観を考えさせられる作品でした。
それにしても俳優陣の演技が素晴らしいですね。
主役の磯村勇斗をはじめ、岸井ゆきの、福山翔大、染谷将太、桐島れいか、という
錚々たる面子の圧倒的な演技に感動しました。
思っていた以上にヘビーで憂鬱になりながらも、やはり一筋の光を感じられるところが
救いですし、本作を観て良かったと思わせてくれたラストでした。
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