「悲しみとの向き合い方」君の忘れ方 おじゃるさんの映画レビュー(感想・評価)
悲しみとの向き合い方
公開週は他に観たい作品が多くて、手が回らなかった本作。スルーしようかとも思ったのですが、やはりちょっと気になって公開から1週間遅れで鑑賞してきました。
ストーリーは、結婚を間近に控えた婚約者・柏原美紀を突然の事故で亡くし、気力をなくしてしまった青年・森下昴が、心配する母に実家の飛騨に呼び戻され、そこで喪失の悲嘆から立ち直る「グリーフケア」というものに出会い、「つきあかりの会」に参加し、その主催者や他の参加者との交流を通して、亡くなった人との向き合い方を考えていくというもの。
本作で「グリーフケア」という言葉を初めて聞きました。確かに身近な人を突然亡くした悲しみは、言葉で言い表すことはできないし、簡単に癒えることもないでしょう。そして、それをどう受け入れ、どう乗り越えていくのかも、人それぞれです。
本作を通して、死や悲しみとの向き合い方はさまざまあり、忘れなくてもいいんだ、忘れてもいいんだ、そこに立ち止まっていてもいいんだと教えられた気がします。でも、一つだけ、後を追うようなことだけはしてはいけないと強く思います。
亡くなった人が何を考え、どう感じているかなんて、誰にもわからないから想像するしかありません。でも、その想像には、きっと自分の気持ちが少なからず反映されているでしょう。そう思うと、「天国のあの人が○○と言うはず」なんて、亡くなった人を言い訳にして、自分の思いを代弁させているだけのような気もします。結局、残された者は、自分の生きたいように生きる姿を、亡くなった人に見せ続けるだけでいいのではないかと思います。
とはいえ、ストーリー的には大きな起伏もなく、平坦で物静かな流れは、心地よくもあり、眠気を誘われもして、込められたメッセージを必ずしもきちんと受け止められていない気がします。あと、逆に不穏なBGMはなんだか気になってしかたなかったです。ホラー感を演出したかったのでしょうか。だとしたら目ざす方向性が間違ってないでしょうか。そんな話ではなかった気がするのですが…。他の方のレビューを読んで補完したいと思います。
主演は、坂東龍汰さんで、抑制の効いた演技が本作にマッチしています。脇を固めるのは、西野七瀬さん、南果歩さん、津田寛治さん、岡田義徳さん、風間杜夫さんら。西野さんは出番もセリフも予想外に少なくてちょっと残念でした。