「心を打たれるヒューマンドラマ」隣人X 疑惑の彼女 R41さんの映画レビュー(感想・評価)
心を打たれるヒューマンドラマ
冒頭の設定を字幕にして物語の前提を提示する手法。
それが「人を傷つけない宇宙人「X」 アメリカの発表で少なからずの数の宇宙移民が地球に住み着いている…」という強烈な設定表示から作品が始まる。
この発表によって、Xは本当に人を傷つけないのか、彼らはどこにいる、彼らを特定せよ。
このような国民の疑心暗鬼に答えるべく、出版社は我先にとXを探し出すことに躍起になっていた。
主人公は卯建の上がらない記者で、たった一人の肉親である祖母の施設費用を滞納し続けていた。
会社の命令でXと思しき2名の人物になんとか接近し、彼らの素性を探るが、同時に彼女を好きになってしまう。
この二人のターゲット女性は同じコンビニでバイトしていて、群像的にお互いとお互いのパートナーとの物語を描いている。
やがて主人公は度々夢の中に現れる人物の顔をしっかりと記憶するが、彼こそがXだと信じ込む。そしてそれが彼女の父だということが判明、スクープのお金欲しさに彼女の父を訪問して彼女の父をXに仕立て上げた…
この背景に見えるのが、移民政策だ。そして異人だから何をするかわからないというかつての、いまでもそんなふうなアメリカ社会を思い起こさせる。
心で見ることが大切という作品の主題に、お金と引き換えてしまう主人公の心の苦しみを「X」たちはよく知っているのだろう。
主人公が犯してしまったことは、普通に考えれば決して許されないことだ。押し付けがましい謝罪の仕方もまた共感できないものの、彼は自分がXだと言及することで、視線のターゲットを自分したことで世間のバッシングを背負った。そして金儲けがすべての会社とケリをつけたことは良かったと思う。
彼女は、彼がどれだけお金を必要としていたのかを、彼の祖母へ指環を返しに行くシーンで表現していることも見事だった。
そして彼女自身が父との確執を乗り越えられたことが、自分自身もう一歩先へ希望を求めてブックカフェをオープンさせたことで表現している。
しかし彼女は、彼を許すのだ。この許しこそ、この作品が最も伝えたかったことなのだろう。
しかし上野樹里くんは、素晴らしい女優だと思った。作品の中では36際という設定だが、20代でも全く違和感なしだ。