「スーパースターを堪能し、初心を思い出す」ジェイラー つとみさんの映画レビュー(感想・評価)
スーパースターを堪能し、初心を思い出す
君は覚えているだろうか。「ロボット」を初めて観た時のあの衝撃を。「わけわからんが面白い!」のキャッチコピー通り、超絶面白かった。そして超絶わけわからんかった。
それでも一つ確かなこととして存在していたのは、スーパースター・ラジニカーントの圧倒的なスターっぷりである。あの時私は確かに彼のスターぶりに慄き、目を奪われ、めくるめくインド映画の扉へと誘われたのだ。もう本当感謝しかない。
マサラ香る素晴らしい映画の世界を教えてくださった精神的指導者、それがラジニカーントなのだ!
そして「ジェイラー」だ。あらすじは行方不明になった息子を探す為、犯罪組織に立ち向かうというリーアム・ニーソン的な…アレ?これ「ダルバール復讐人」のレビューに書いたような?
まぁとにかく、主人公ムトゥがめちゃくちゃスゴイということが導入パートでサラッと描かれる。こんなスゴイおっさんが息子を探すために組織とバチバチにバトっていくのか…、という期待でいっぱい。
冷静に観ると、今年で75歳になるラジニカーント様に「WAR ウォー!!」でタイガー・シュロフが披露したような激しいアクションは到底無理。そして髪型的事情からシャー・ルク・カーンほど髪を風になびかせることも難しい。
では、ラジニカーントのカッコ良さとは何なのかというと、「決めポーズ」「決めアクション」なのですよ。それも誰でも真似出来ちゃいそうな、むしろ真似したくなっちゃうような、それでいて日常そんなことしないでしょ、ってヤツが良い。
今回は「メガネ(グラサン含む)ビシッ!」です!
きっと今回も全タミル人がこぞって真似したことでしょう。少しでもラジニにあやかりたい。
そんなんじゃ「スゲー!」ってならないから面白くない?でもあるんですよねぇ、例え体が動かなくても観ていて「スゲー!」ってなるような演出っていうのは。
詳しくはネタバレになるので省きますが、悠々と歩いていくラジニの前で前転するトラック(スローモーション)、あれは本当インド映画らしい決めシーンですわ。むしろ悠々と歩いてるラジニがカッコ良いよ。歩いてるだけなのに。
どんな時でも超余裕だよ。ピンチかな?と思っても何やられてもラジニの掌の上だよ。もう神だよ。きっとそうなんだ、ラジニは獅子で虎で神。
スーパースターを堪能する映画、それがラジニカーントの映画で、スーパースターとはラジニカーント以外にあり得ない。それを再確認する映画だ。
よく思い出してみたら、今回ラジニ歌ってなかったな…。ちゃっかり何の関係もないところで軽く踊ってはいたけど。
こんなこと言うのはアレだが、いつ神々の前でそのスターぶりを見せつけることになってもおかしくない御歳。庶民派でありながら圧倒的スーパースターでもあるラジニカーントを是非堪能してもらいたい一本だ。