52ヘルツのクジラたちのレビュー・感想・評価
全67件中、61~67件目を表示
泣ける映画?
原作を読んだ時は「重すぎて読むのが辛かった」という感想だった。
児童虐待、DV、性別違和に苦しむ人達の物語。
映画になると聞いても『観た後に辛い気持ちが残りそう』と思い、観るつもりはなかったのだが、TVCMなどで『泣けた』 『号泣した』という宣伝をしていた。
『どうやって、あの原作を泣けるように仕上げたのだろう?』という興味が湧いて観に行ってみた。
ほぼ、原作に忠実なストーリー。
母親に『虫』と呼ばれ、児童虐待により喋れなくなったアザだらけの愛。
彼氏に殴られるとわかっていても同棲している部屋に帰ることしか出来ないキナコ。
性別違和に苦しみ自殺する杏。
ひたすら重い…
ラストで愛がちょっとだけ救われるが、実際問題、愛とキナコが一緒に住み続けることは不可能に近く、愛の施設入りは避けられないし、万が一、気の変わった母親が愛を取り戻しに来たらキナコたちには何も出来ない。
結局、誰も救われていないんだよね。
この内容で『泣ける映画』と宣伝するのはいくらなんでもあり得ないと思う。
映画自体は丁寧に作られていて、2時間超えでも中弛みはなく、役者たちも頑張っている。
倍賞美津子はさすが大女優の存在感。
ただ、重い話が大丈夫な人なら良いが、宣伝を見ただけで『あの花が咲く丘』みたいな泣ける映画を期待して観に行くと後悔することになるかもしれない。
【"二つの魂の番い。”今作は児童虐待やトランスジェンダーの悩みと言う重いテーマを絡めながら、その中で孤独な心を持ちながら必死に生きようとする人達や、彼らを支える人を描いた作品である。】
ー 序盤から中盤にかけては、観ていて可なりキツイ作品である。-
■キコ(杉咲花)は、母(真飛聖)から義理の祖父の介護を命じられ、毎朝4時に起きて3年間も面倒を見ている。だが、祖父は誤嚥性肺炎を起こし、キコは、母親から酷く殴られ、”アンタが代わりに死ねば良かったのよ!”と罵声を浴び、フラフラと歩く中、安吾(志尊淳)に助けられる。脇には高校時代からの親友ミハル(小野花梨)もいる。
二人は、キコから事情を聴き、余りの過酷な状況に絶句する。
そして、ある日安吾から”52ヘルツのクジラ”の鳴き声が録音されたテープをプレゼントされる。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
何とか立ち直ったキコが働く会社で、キコはある切っ掛けでその会社のボンボン専務、チカラ(宮沢氷魚)と恋仲になり、一緒に高級マンションで住み始めるが、安吾はキコに”あの男といては駄目だ。アイツは君を不幸にする。”と説得するが、キコは且つて自分が愛していた安吾にその思いを伝えていたのに、”君の幸せを祈っている。”と言われた事で関係を続けるが、チカラは安吾が言っていたように、DV男の本性を表す。
そして、自ら命を絶った安吾がチカラに読ませるために残した遺書を読みもしないで、コンロで燃やす姿を見た時に、キコは包丁で自らの腹部を刺す。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
キコは、一人で海辺の近くの家に住み始める。
そんな中、雨の中、腹部の傷のために倒れ込んでいたキコに傘を差し出してくれた少年。彼は身体中に、且つての自分の様に痣がある。そして、彼の母親コトミ(西野七瀬)は、彼の事を”ムシ”と呼び、男と街を去る。
◆感想
・今作で”52ヘルツのクジラ”であるのは、キコと安吾と“ムシ”と母に呼ばれた”愛”である事は観れば分かる。
そして、”キコと安吾”、”キコと愛”こそが”魂の番い”で結ばれた人たちなのである。
・安吾が実はトランスジェンダーであると分かるホルモン剤を打つシーンが、前半一瞬映されるが、あのシーンから安吾がキコを深く思いながら、キコの想いに対し、”君の幸せを・・。”と言うシーンは、彼の辛さを語っている。
・キコの高校時代の友人ミハルの存在は、観ていて心が潤う。彼女は突如消えたキコを職を辞してまでして、探しに来るのである。
・キコとミハルが少年の”家族”を探しに、長崎に行った時に明らかになった少年の名前”愛”。彼を愛していた祖母が既に亡くなっていたが、はす向かいの家のオバサン(池谷のぶえ)の家で分かった事実。そして、渡された笑顔で祖母と観覧車の前で映された写真。
<家に戻り、キコとミハルと愛が川の字で寝ていた時に、キコは愛が居ない事に気付き、写真に書かれた”サヨナラ”の言葉を見て、心当たりのある少年がキコに傘を差し出してくれた桟橋に駆けて行く。
少年は、海に飛び込もうとしていたのだろうか。ぼんやりと早暁の中に立つ少年に向かいキコは”死んでは駄目!”と言って少年を抱きしめる。
そして、二人の未来の幸せを願うかのように、離れクジラが海の名から現れ、大ジャンプをするのである。
今作は、児童虐待やトランスジェンダーの悩みと言う思いテーマを絡めながら、その中で孤独な心を持ちながら必死に生きようとする人達や、彼らを支える人を描いた作品なのである。>
聴こえない癒しと幸せの声。
東京から大分の海が見える高台に越した三島貴瑚の現在と過去の話。
雨の中、古傷が痛み道で倒れる貴瑚、そこへ傘をさしてくれた言葉を話さない髪の長い少年…濡れた為、自宅にてシャワーを浴び様とその少年の着ていた服を脱がすと虐待の傷跡が、自分の子供の頃とリンクした貴瑚はその少年を放っておけなくなる…。
原作未読
序盤の脱衣場で少年の身体の傷跡から涙が出てしまって。作品とはいえ子供が親の事情でこんな思いをするのは悲しい、子供の頃の貴瑚も親から虐待、懸命に義父の介護と…、疲れきった彼女の心の声に気づき手を差しのべてくれた安吾と学生時代のともだち美晴との出会いと再会。
「52ヘルツ…」という文字から自分の名を52とした少年、52の世話になった場所を訪れて愛と書いて「いとし」という本名が分かる。
過酷な現在と過去の描写が流れるなか時折流れる安吾と美晴と過ごす癒しの雰囲気と優しい時間、何で安吾は露骨に分かるアゴ髭?何て思ってたけど彼、いや彼女の苦悩と気持ちが分かった時には涙。
自分から安吾にキナコと呼んでと言っておいて安吾に「私は貴瑚」と訂正したのは悲しかった。
察して出ていった愛の「キ・ナ・コ」と呼ぶ声と、髪を切ってもらってる時の愛の笑顔には泣けた。ちょっと悲しい話ではあったけど悲しさの中に優しさもありで楽しめました。
2時間半には収まらない
俳優陣の演技が素晴らしかった。
杉咲花ちゃん目当てに行ったけど、専務、宮沢氷魚君のモラハラの見え隠れする「アーン」のシーンとか絶妙に気持ち悪かった。志尊淳君の諦めた瞬間の光を失った目の演技。もちろん花ちゃんの絶望とか自分を取り戻していく感じも素晴らしい表情だった。先述のアーンや杏吾の似合わない髭も良い演出だと思う。
気になったのは2点。
CM見てる時から思ってたけど、テーマの割りに主題歌明るすぎないかな?終わり方見たら希望を持って終わるからあれで良いのか。微妙にしっくりきてない。
あと詰め込みすぎ。誰にも聞こえない心の叫びがテーマだし、気付くのは同じような痛みを抱えているから。だから、それぞれに背景がある。ありすぎて表面をサラッとと言うか、駆け足で通りすぎた感じが勿体ない。
きなこの母とぶつかりながらも完全に決別までで映画1本。
立ち直って恋心を感じる余裕も出来たのに失恋でクズ男につかまってから決別までで1本。
再出発して自分と似た境遇の子を救うで1本。
一つ一つ丁寧に3本の映画、もしくは1クールのドラマとしてじっくり見たいくらいぎゅーっと詰め込まれた映画。
うまくまとめたなぁ
現代社会の問題 家庭内暴力 家族介護 育児放棄 ジェンダーレス をこれだけ扱えばかなり暗いしんどい内容になると思うのですが、しんどいのはしんどいが希望の持てる所へ最終的に持っていくのは凄いですね。
確かに自殺等苦しい場面はありましたが、
とてもよかったです😄
気になる点もあるが、それ以上に前半とラストが素晴らしい
原作未読です。気になる点から書きます。
・宮沢の演技が一辺倒。大声で叫ぶか、暴力でしか感情の表現がない
・志尊淳の過去写真がアイコラ感がすごい
・志尊淳から宮沢への行為は、そこまでするか?と感じてしまった。確かに自意識が高い嫌味な感じはあるが、社会的地位も、金銭的にも充分すぎる、外面もいい。その彼の全てを蹴落とすようなことは必要だったのだろうか、もう少し手順はあったのではないかと思う。過去を知らない宮沢からすれば、志尊に対する嫉妬は当たり前だし、多少牽制してしまう気持ちも分かる。結局、杉咲を精神的にも肉体的にも傷付ける男にはなるが、どう見ても志尊の行為が引き金である。杉咲も幸せだと志尊に伝えていて、今後も仲良く友人として付き合っていきたいと伝えている以上、余計なことをしている、むしろ志尊が宮沢に嫉妬している部分もあるように見えてしまう。
そのことがあり、どうしても志尊の結末には、純粋に涙することができなかった。宮沢から志尊への仕打ちも、やられたことを考えると仕方なく見えてしまった。
気になったのはそれぐらいで、あとは皆さんのコメントにもあるように、杉咲花の演技がちょっと引くぐらいすごかったです。杉咲さんの涙につられて泣いてしまいそうになる程でした。
脇役も皆さんいい味を出されている方ばかりで、魅力的なキャラが沢山いました。
何より素晴らしいのは、子役の演技でした。前半の虐待シーンでは胸が詰まりそうになりますし、ラストの愛君の笑顔や、楽しそうに皆と接する姿には、涙を流さずにはいれませんでした。
気になる点もありましたが、色々と考えさせられる点もあり、感情も動かされる、素晴らしい映画でした。あまり観ている方が初日から多くなかったので、是非沢山の方に観ていただきたい映画です。
誰かに聴かれたくなくて、52ヘルツを選んでいる人の方が多いように思える
2024.3.1 イオンシネマ京都桂川
2024年の日本映画(135分、G)
原作は町田そのこの同盟小説(中央公論新社)
虐待経験のある女性が虐待児を保護する中で過去を想起し、前向きに生きることを決意する様子を描いたヒューマンドラマ
監督は成島出
脚本は龍居由佳里
物語は、東京から海辺の町(ロケ地は大分県大分市他)に移住する三島貴瑚(杉咲花、幼少期:酒井杏寿)が描かれて始まる
旧友の土建屋・村中(金子大地)に住居の手入れをしてもらっていたが、町で噂されている内容を聞かされて困惑してしまう
貴瑚の祖母がこの家に男を連れ込んだなどの噂話が高齢者の間で広がっているというもので、貴瑚はそれを否定することもなく、あまり気にはしなかった
ある日、防波堤から海を眺めていた貴瑚は、かつて自分を助けてくれたアンさんこと岡田安吾(志尊淳)のことに想いを馳せる
彼から教えてもらった「52ヘルツのクジラの歌声」を聴いていたが、徐々に雲行きが怪しくなり、突然の大雨に見舞われてしまう
帰途に着こうと急ぐ貴瑚だったが、突然、腹部に激痛を感じて、その場に倒れ込んでしまう
そんな彼女を助けたのが、地元の少年(桑名桃李)だったが、彼はある理由で言葉を発することができなかったのである
村中から少年のことを聞いた貴瑚は、彼の母・琴美(西野七瀬)が働いている定食屋へと向かう
仕事終わりの琴美を捕まえた貴瑚だったが、琴美は「産みたくて産んだんじゃない」と言い放ち、「あの男がつけた名前なんか忘れた」という
そして、彼女が少年のことを「ムシ」と呼んでいたこともわかった
貴瑚は少年を保護することに決めたが、それは半ば誘拐に近いもので、その道が正しいかどうかは何とも言えなかったのである
物語は、そんな彼女の元に東京で再会した高校時代の友人・美晴(小野花梨)がやってくるところから動き出す
彼女は東京に恋人・鈴木匠(井上想良)を残して、仕事を辞めてこの地に来たという
そして彼女は、「アンさんと何があったの?」と貴瑚がこの場所に来た理由についてふれていくのである
映画は、美晴の言葉を起点した回想録になっているが、最終的に美晴はアンさんがどうなったかを知らずに終わる
アンさんとの出会い、美晴との再会、そして、その後に出会う新名主税(宮沢氷魚)との生活というものがメインになっていて、それらの想起の果てに、貴瑚の新しい生活が始まるという感じになっている
アンさんの手助けで父(奥瀬繁)の介護生活から抜け出すことができた貴瑚は、母・由紀(真飛聖)と離れて暮らすことになるものの、アンさんに感じた愛情を彼は受け入れることができずにいた
それによって、新しい職場の上司・新名との出会いと生活というものが始まるのだが、貴瑚の話に出てくるアンさんに興味を持った新名は会いたいと言って場を設けることになる
新名はアンさんが女性だと思っていたが、男性だったことから感情に火がつき、それによって険悪な雰囲気になってしまう
アンさんは新名が貴瑚を幸せにできると思えず、そして「ある行動」へと至ってしまうのである
映画は、52ヘルツのクジラに例えられるように、声をあげても届かないジレンマというものを描いていく
その声をどのように受け取るかという感度の問題になっているが、クジラが聞かれたくない歌なので52ヘルツで歌っているかもしれないという可能性には言及しない
これは、少年を助けたことによって、さらに状況が悪化している現実とリンクしていて、そこに関わるには相当な覚悟と配慮が必要であることを伝えてくれる
とは言うものの、声なき声に耳を傾けるにはどうしたら良いかと言う話ではなく、発信者がどうしたいかを決めなければ前には進めないと言う感じに描かれていた
少年の保護は母親の遺棄があるからできるのだが、少年を持つことで得られるような社会保障に目をつけて搾取すると言う親もいるので、今回の場合は知恵が回らない母親だったから問題にならなかった、と言う感じに結ばれていたように思えた
いずれにせよ、かなり重たい話で、アンさんのトランスジェンダー設定は映画からは意外とわかりにくい
生物学的女性がホルモン治療をして男性っぽくなっているのか、その逆なのかがわかりづらく、これが物語の展開におけるミステリー要素になっている部分もバランスが悪い
公式HPではトランスジェンダーであることを隠さずに公表しているが、映画内ではミステリー要素となっているので、この辺りが一貫していないように思えた
また、アンさんの苦悩は理解できても行動までは擁護しようがないので、アンさんが貴瑚を救いたいのならば、自分の全てを曝け出すだけの覚悟が必要だったのかな、と感じた
結局のところ、アンさんは貴瑚に自分のことは言えず、それは「言えば関係が壊れると思っているから」で、それは裏を返せば心から貴瑚を信用していないように見えてしまう
それゆえに、アンさんの52ヘルツが独りよがりに見えてしまうのが難点だったのだが、あの生活を受け入れている貴瑚がそれに気づけるとも思えないので、新名と会う前のあの瞬間が最後のチャンスだったのだろう
全67件中、61~67件目を表示