劇場公開日 2023年10月6日

「寅さん」イコライザー THE FINAL とぽとぽさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5寅さん

2023年10月7日
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今回のマッコールさんは、寅さんだった。大枠のプロットとしてはよく見る"風来坊もの"に、マドンナまでいて?寅さん✕ブギーマン!!
スキンヘッドでなく髪の毛があった前作では髪型同様、マッコールさんのキャラクターとしての人間性やバックグラウンドにスポットライトを当て掘り下げ、親近感を持たせるように描いていた。それに対して本作は、すべての始まり1作目へと原点回帰。どころか、引くほど容赦なくて怖い…もはやホラー感すらある恐怖の対象=これぞ本家本元"ブギーマン"。OPシーン始まり方からして、観客によるマッコールさんへの安易な共感を拒むようだ。そして、後光カット(→終盤の像?で繰り返される)。
ヴァイオレンス残酷描写増し増し!!! そんな残虐性の一方で --- 名優デンゼルはその人柄同様人情深い役が多く本作も御多分に漏れずなわけだけど --- マッコールさんが時折見せる光のない目=(勝手に)通称"マッコール・アイ"は今回は鳴りを潜めていた気がする。
もちろんマッコールさんらしいチャーミングさも見て取れて、名優デンゼルさんの細かい一挙手一投足がキャラクターに深みを与える。地元民たちとの親睦を深めるイチャイチャモンタージュ。杖を「ちょっと絞めてやるか〜」といった具合に、肩にかけてチャップリン持ちするのが良かった。
考えすぎかもしれないけどウクライナ情勢による仮想ロシアか。テログループと見せかけて実は…な今回の敵の正体には、個人的にはプーチンを少し重ねてしまった。現地の人からすると、もしかすると「今までどうにか共生してやってきたのに、煽って要らんことしてくれて…」という、"世界の警察"アメリカへの独り善がりだという気持ちも途中あったかもしれない。ただ、庶民の力。と同時に、そうやって頑張って世界に惨状を発信しても、誰も無関心で助けてくれないというリアル。
あと、やはり本作について書かなければいけないことといえば、トニー・スコット監督作『マイ・ボディガード』で共演したダコタ・ファニングとの再共演!なのだけど、彼女の役はマッコールさんに言われたことをそのまま素直に右から左へと流すキャラだった?
またしても日本配給の愚行…見る前から分かっちゃいたけど、どこが"FINAL"だ!むしろマッコールさんの世直し(と『ヴァチクソ』ラッセル・クロウのエクソシスト活動)はまだまだこれからだろ!! と言いたくなるような作品で、全くいわゆる3作目らしい"最後"感はなかった。なんなら"本作が一番余裕だったのでは?"感すらある。ただ、見方を変えれば誰か他人のために転々としてきたであろうマッコールさんが今後の人生を腰を下ろして過ごす"第二の故郷"安住の地を見つけたとも言えなくないラスト。だけど、やっぱり早く4作目が見たい。
最後に明らかになる渡伊虐殺の背景にあった今回の"(世の中に蔓延る)不正を正す"理由には、正直少し驚いた。

とぽとぽ