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アカデミー賞作品賞「グリーンブック」監督、差別表現を逃げずに描いた“信念”

2019年3月5日 11:00

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信念を語ったピーター・ファレリー監督
信念を語ったピーター・ファレリー監督

[映画.com ニュース] 「最も予想が難しい」と称されるほど大混戦だった第91回アカデミー賞を制したのは、実話を基に“互いの違いを尊重する”という思いで描かれた「グリーンブック」だった。作品賞、助演男優賞、脚本賞を受賞し、日本でも3月1日から全国180館で封切られている。来日中のピーター・ファレリー監督が映画.comのインタビューに応じ、オスカー獲得の喜びと、差別的表現をあえて削らなかった理由、そして多様性に開かれつつある社会への見解を語った。

製作・脚本を手がけたニック・バレロンガの父が経験した実話が基になっており、人種差別が色濃く残る1960年代のアメリカ南部が舞台。粗野で無教養な用心棒トニー・リップと、インテリな黒人天才ピアニスト、ドクター・シャーリーが、前途多難なコンサートツアーを通じ深い友情で結ばれていくさまを描く。ビゴ・モーテンセンの人間味あふれる言動はいつまでも見ていられるほど魅力たっぷりで、マハーシャラ・アリは迷路のように複雑な黒人ピアニストの内面を緩急自在に表現してみせた。

またファレリー監督は、「メリーに首ったけ」などを手がけたコメディ界の巨匠だ。“ファレリー兄弟”としてコメディ作品を世に放ち続けてきたが、今作で「まったく縁がなかった」というアカデミー賞を手中に収めた。作風同様、極めてお茶目でユーモラスな語り口で、インタビュアーのみならず通訳、宣伝スタッフら室内の全員を大いに笑わせてくれた。

――まずはアカデミー賞受賞、おめでとうございます。受賞から今日まで、周囲の反響はいかがでしょうか。

ファレリー監督:ありがとう。スティーブン・スピルバーグがプロデューサーでもあったわけで、彼がアカデミー賞授賞式のアフターパーティーに来てくれたんだ。本当に喜んでくれていて、ユニバーサル映画としても18年ぶりの作品賞ということに加え、「グリーンブック」がとにかく大好きだと褒めまくってくれた。どのくらい嬉しいか、この作品が好きかをずっと話してくれて、僕は『人生でこんなに幸せなことがあるのか、なんでこうなった?』と面食らったよ(笑)。

――3月3日の来日舞台挨拶で、アカデミー賞受賞は「サプライズの連続で、この作品がどこまでいくか想像もつかない」とおっしゃっていましたね。

ファレリー監督:そもそもアカデミー賞なんて念頭になかったからね。しかし、撮影中のビゴとマハーシャラの演技があまりにも素晴らしかったので、「もしかしたら2人はオスカーに絡むかも」と思っていた。でも、まさか自分が……。うっぷ。失礼、コーラのせいでゲップが……。

――(笑)。撮影中のモーテンセンは、監督にかなり提案をしていたそうですね。イタリア系アメリカ人を演じるため20キロ増量したり、守り石を拾ってきて「劇中で使おう」と言ったり。

ファレリー監督:(ポケットから石をスッと取り出して)これのこと?

――えっ。実際の石ですか!?

ファレリー監督:撮影で使ったものではなく、スタントダブルだけれども(笑)。ビゴが選んでくれたもので、(登場した守り石は)なくなってしまう可能性があるから、その時はこれを使う予定だったんだ。

ビゴだけでなく、マハーシャラもすごく意見を言ってくれた。本当に細かいところまでね。監督によってはそれを嫌う人もいるけど、僕はみんなの意見を聞きたい。コラボレーションが密になるからね。役者の意見は特に重要で、もし彼らの言うことを聞かなければ、面白みのあるジョークは生まれなかった。たとえば「ジム・キャリーはMr.ダマー」の「So you're telling me there's a chance.」というセリフは、ジム・キャリーのアドリブだったんだ。そのとき、それを見て思わず吹き出してしまった。だから、役者の意見に耳を傾け、良いと思えば積極的に取り入れることにしているよ。

劇中に登場した守り石(のスタントダブル)
劇中に登場した守り石(のスタントダブル)
――この物語はシリアスに運ぶことも可能だったと思いますが、ハートウォーミングに描こうと決めた理由はなんでしょうか。

ファレリー監督:真逆の2人が旅をする。1人は少々差別主義的で、もうひとりは黒人のピアニスト。2カ月間の旅路で、友情が芽生えていく。その話を聞いた時、『監督したい』と強く思ったんだ。2人がぶつかり合って終わってしまう話なら、興味はなかった。僕は希望のある映画が見たかったんだ。だから、最初から希望を持てる作品にしようと考えていた。

またある時、映画のラストに関してこんなことを話し合った。「ドクターが自分の家に戻ったところで終わるか?」。そうすることも可能だったが、観客にとってはほろ苦い終わり方だ。評論家のなかには、そちらの方を好む人もいるだろう。しかし、僕は逆のことをしたかった。2人は友だちになった。それを描きたいと思ったんだ。

――差別表現をあえて削らなかったところにも、監督の信念がにじんでいるように思えます。そして、それこそがアカデミー賞に届いた理由なのではないでしょうか。

ファレリー監督:差別表現については、興味深いことがあった。MPAA(レイティングを審査するアメリカ映画協会)が、Nワード(人種差別表現)やスラングを使わせてくれたんだ。一方で“Fワード”には厳しかった。「許されるのは劇中で2つまでだ。3つ以上だとレーティングを変えざるを得ない」と言われたよ(笑)。

だから、劇中には2つのFワードを入れた。1つはトニー・リップが手紙を書いていて、「Fuckin' romantic.(すげえロマンチック)」と言うところ。しかしそれは「なんかかわいいから」とおとがめなしで、Fワードにはカウントされなかった(笑)。もうひとつは、トニーがクリスマスのレストランで「Let's get the fuck out of here.(こんなところ出ていこうぜ)」と言うところ。

Fワードには厳しいのに、差別表現は「なんでも大丈夫」と言われたことは意外だった。MPAAは、それが「見る人にとって重要な学びを与えるツールになる」と考えたんだ。僕はそれを聞いて嬉しかった。(無自覚なトニーがドクターに投げかけるような)差別表現が映画において大きな意味を持っていないならば、もちろん削る。しかしこの映画のなかでは、その表現でなければいけない理由があった。だから、差別表現をあえて削らなかったんだ。

――ファレリー兄弟の作品は、一貫して「あらゆるハンディキャップは個性である」と説いているように感じます。「グリーンブック」にもそれは核にありました。ファレリー監督から見て、現在の社会の“多様性”はどのように映るでしょうか。

ファレリー監督:映画界において、多様性は少し前進していると思う。特にここ数年、大きく一歩一歩、進められている。しかし世界的にはまだまだ。向上しているところもあれば、そうでないところもある。特に人種関係は、アメリカでは政治的リーダーの影響か、下り坂になってしまった。まだまだ道のりは長い。けれども、人生の様々な場面でポジティブな変化がもちろんある。アメリカ社会の人種差別に対する怒りの声も大きく、一般の人々の日常生活にも、それをきっかけとした変化が起こっているからね。

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