コラム:佐藤嘉風の観々楽々 - 第6回
2008年6月13日更新
第6回:「西の魔女が死んだ」
“おばあちゃんの知恵袋”もふんだん。深呼吸して味わって
今月は、新緑の季節にぴったりの映画をご紹介します。その映画とは、今月21日から全国ロードショーとなる「西の魔女が死んだ」。原作は100万部を超える梨木香歩の同名ロングセラー小説で、監督は「ナースコール」(93)、「死国」(99)といった話題作で注目を集めた長崎俊一が務めています。
主演となる英国人のおばあちゃん役は、女優シャーリー・マクレーンの娘であるサチ・パーカー。孫の少女まいを演じる今作で映画デビューの高橋真悠は、フレッシュな演技の中で、時折グッと心を揺さぶるような表情を見せてくれました。
映画は、不登校になった中学生の女の子と、その祖母である英国人のおばあちゃんとが1カ月間、おばあちゃんの家で生活を共にしながらコミュニケーションをとっていくというのが、主軸となっています。
おばあちゃんは、静かな森の中で沢山のハーブや花に囲まれながら生活をしています。女性が観たら、うっとりしてしまうような穏やかでオーガニックな生活環境の中で、自分と向き合っていく少女に、何故か男の僕ですら懐かしさを憶えてしまう作品でした。ロケ地が、山梨県の清里だったりして、色合いがとても綺麗で心が和みましたよ。家やガーデニングだけでなく、小道具ひとつひとつまでにこだわっていて、「これ欲しいな~」なんて何度も思ってしまいました。
さて、今という時代においては、核家族で生活しているのが当たり前になりました。子供達にしてみれば、おじいちゃんおばあちゃんの存在というものは、昔の子供達が感じていたものよりも、はるかに特別な存在となっているではないでしょうか。それについては、良い面も悪い面もあると思いますが、子供が抱えているストレスで、親子間では解決出来ない様な問題を、おじいちゃんおばあちゃんの、ふとした助言や手助けで解決してあげられる可能性も増えたのではないかと、この映画を観ていて思いました。決して近すぎない距離感で接する事が出来るというのは、意外と良い事かもしれない、と。
だからそう、この作品を沢山のおじいちゃんおばあちゃんにも観て頂きたいなと思いました。孫の世代に、すてきなメッセージを届けられるチャンスの時代ですから。
また、この映画の中には、おばあちゃんの知恵袋的な要素が多く含まれており、「お~、なるほどな~」などと、感心してしまうシーンがいくつかありました。それはハーブの使い方であったり、料理方法であったり、その他生活の中で役立つような粋な知恵をおばあちゃんが教えてくれます。
深呼吸するような感覚で、この作品を味わってみるのも良いかもしれません。
筆者紹介
佐藤嘉風(さとう・よしのり)。81年生まれ。神奈川県逗子市在住のシンガーソングライター。 地元、湘南を中心として積極的にライブ活動を展開中。07年4月ミニアルバム「SUGAR」、10月フルアルバム「流々淡々」リリース。 好きな映画は「スタンド・バイ・ミー」「ニライカナイからの手紙」など。公式サイトはこちら。