コラム:FROM HOLLYWOOD CAFE - 第79回
2006年7月4日更新
ロサンゼルスで行われた「パイレーツ・オブ・カリビアン/デッドマンズ・チェスト」のジャンケットに参加した。同シリーズはすでに来年公開の第3作「アット・ワールズ・エンド」の撮影もほぼ終了しており、あとは9月からの追加撮影を残すのみとなっているところだが(キース・リチャーズの出番もこのときに撮影するそうだ)、プロデューサーのジェリー・ブラッカイマーは、なんと4作目の準備を進めていることを明らかにした。普通は、映画の公開前に続編製作の話をするのは縁起が悪いといって、避ける人が多いのだが、よっぽど自信があるのだろう。昨年、「パイレーツ3」の撮影現場を見学したときは、新3部作を作る、と意気込んでいたけれど、今度は一気に3作を作るのではなく、「パイレーツ4」をとりあえず作り、その反応が良ければ「パイレーツ5・6」を同時に製作するつもりだとか。ジョニー・デップも、「まだジャック・スパロウというキャラクターにさよならを言う心の準備ができてない」と言っているから、まだまだ続いていくことになりそうだ。
大ヒットしたダン・ブラウン原作の「ダ・ヴィンチ・コード」も、その前章にあたる「天使と悪魔」の映画化準備が進んでいるというし、ブライアン・シンガー監督のもとで復活した「スーパーマン・リターンズ」も好調なオープニング成績を見るかぎり、契約通り、残り2作が作られるのも確実だろう。
続編ものは、映画スタジオの運営を支える安定した収入源だから、ハリウッドでは“tent pole(テントの支柱)映画”とも呼ばれている。スタジオが潤えば、多様な作品を生産する余裕が生まれるわけだから、各スタジオがこぞって続編大作映画ばかりを作ることについては文句ない。ただ、できることなら、独創性に欠けるぶんだけ、質の高いものを作って欲しいと思う。この手の映画は、公開日が先に決定し、その締め切りに間に合わせるために、大急ぎで作られることが非常に多い。
たとえば、「パイレーツ・オブ・カリビアン2・3」などは、脚本もないのに、クランクインに突入せざるを得なかった(もっとも、1作目のときも、脚本家チームが現場で脚本をせっせと書いていたけれど)。「スーパーマン・リターンズ」にしても、降板したMcG監督のあとを継いだブライアン・シンガー監督は、脚本を完全に書き換えたにもかかわらず、McG監督と同じ期限までに映画を完成させなければならなかったと言っている。時間をかければそれだけ良いものができるとは限らないけれど、映画の公開日がすべてに優先される映画製作は、間違っているような気がする。
筆者紹介
小西未来(こにし・みらい)。1971年生まれ。ゴールデングローブ賞を運営するゴールデングローブ協会に所属する、米LA在住のフィルムメイカー/映画ジャーナリスト。「ガール・クレイジー」(ジェン・バンブリィ著)、「ウォールフラワー」(スティーブン・チョボウスキー著)、「ピクサー流マネジメント術 天才集団はいかにしてヒットを生み出してきたのか」(エド・キャットマル著)などの翻訳を担当。2015年に日本酒ドキュメンタリー「カンパイ!世界が恋する日本酒」を監督、16年7月に日本公開された。ブログ「STOLEN MOMENTS」では、最新のハリウッド映画やお気に入りの海外ドラマ、取材の裏話などを紹介。
Twitter:@miraikonishi