コラム:FROM HOLLYWOOD CAFE - 第75回
2006年3月7日更新
「ダ・ヴィンチ・コード」と「ミッション・インポッシブル3」といえば、言わずと知れた期待の超大作だが、なんとその極秘映像を特別に鑑賞させてもらえることになった。夏の公開に先駆けてそれぞれ先行取材が行われることになったためで、偶然にも上映日も上映会場も同じ。そんなわけで、2月27日、ロサンゼルスには珍しい大雨のなか、ソニー・スタジオ内のバックステージ・シアターに向かった。
午後4時から、「M:I-3」のフッテージ上映。日本向けの最新予告編を上映したあと、隣のスタジオでオーケストラ録音をしていたJ・J・エイブラムス監督が登場し、映画のなかから3つのシーンを披露した。ネタばれになるといけないから具体的な内容については触れないけれど、傑作の予感を感じさせるには十分な内容だった。
ぼく自身、「エイリアス」や「LOST」などのテレビシリーズを生み出したJ・J・エイブラムスの大ファンで、いまのハリウッドで最高のストーリーテラーの1人だと信じている。そんな彼が「M:I-3」で映画監督デビューを果たすと聞いたとき、トム・クルーズの憎らしいほど確かな鑑識眼に感心するとともに、プロデューサーでスターでもあるクルーズの下で、新人監督のJ・Jが力を発揮できるのかどうか疑問だった。しかし、フッテージを見て、そんな心配は吹き飛んだ。イーサン・ハントが共感できる等身大の人間として描かれており、彼のラブストーリーを中心にアクションやミステリーやツイストが加えられているから、面白くならないはずがない。前2作にあって、「M:I-3」に欠けているものがひとつあるとすれば強烈な映像スタイルだが、デ・パルマやジョン・ウーなどアクの強い個性派監督と比較してはかわいそうだ。
午後7時からは、同じ試写室で「ダ・ヴィンチ・コード」の上映。「M:I-3」がほんの10分にも満たなかったのに、こちらはなんと36分間ものフッテージを大放出。ソニエール館長が殺される冒頭シーンからエンディング間際まで、重要なシーンをストーリーに沿ってつないだダイジェスト版となっていた。芸達者な役者たちと手堅い演出、ルーブル美術館など豪華なロケーションと、すべてがしっかりと仕上がっていた。ただ、あまりにも原作に忠実すぎて、正直、驚きがなかったのも事実だ。原作の肝である宗教史や絵画のうんちくなどの部分では、映画版ならではの工夫がなかったわけではないけれど、どうせならもっと大胆に映像化しても良かったのではないかと感じたりもした。まあ、ぼくが観たのは映画のほんの4分の1程度だから、もしかしたら、本編はもっと違った感じになっているのかもしれない。
いまは映画の完成を楽しみに待ちたい。
筆者紹介
小西未来(こにし・みらい)。1971年生まれ。ゴールデングローブ賞を運営するゴールデングローブ協会に所属する、米LA在住のフィルムメイカー/映画ジャーナリスト。「ガール・クレイジー」(ジェン・バンブリィ著)、「ウォールフラワー」(スティーブン・チョボウスキー著)、「ピクサー流マネジメント術 天才集団はいかにしてヒットを生み出してきたのか」(エド・キャットマル著)などの翻訳を担当。2015年に日本酒ドキュメンタリー「カンパイ!世界が恋する日本酒」を監督、16年7月に日本公開された。ブログ「STOLEN MOMENTS」では、最新のハリウッド映画やお気に入りの海外ドラマ、取材の裏話などを紹介。
Twitter:@miraikonishi